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20/22

第20話 受賞者の名前は、星灯座

祭りの最終日、私たちは白鳥座の客席へ座った。


作品賞は、海の出てくる白鳥座の芝居へ贈られた。

ベルナルドさんは、いつもの大きな声ではなく、落ち着いた声で役者と技師の名を読み上げた。


私は拍手した。

トビ君は、壇上の灯石技師を、尊敬する人を見る目で追っている。


それから、演出賞の発表になった。


「星灯座、『靴屋と星の王子』」


私は、すぐには立てなかった。

隣のエダさんが、私の袖を引く。

ハルさんが背中を押した。


審査員の一人が、短い講評を読んだ。

小さな空間に合わせて、役者の視線と光を丁寧に組んだこと。

台詞の意味を客へ渡す、間の取り方。

配役が変わっても、物語の核が揺らがなかったこと。


公演中の騒ぎは、理由に含まれていなかった。

私たちの作った芝居を、見てくれていた。


賞状を持つと、紙が思ったより軽かった。

もっと重いものを、毎日運んでいた。

木箱や、机や、濡れた布を。


私は、皆の名前を言った。

ミナさんは舞台へ出なかったけれど、その役を作った。

ロゼッタさんは受け取り、別の息で生きさせた。

男優の代役は袖で待ち、トビ君とガロさんとエダさんは、誰も見ていない時間を支えた。


舞台から下りると、ベルナルドさんが近づいてきた。


「靴屋の机を見せる光が、良かった」

「ありがとうございます」

「ただ、最初の暗転は長い。歌い終わった娘の着替えを待っていただろう」


私は、思わず笑った。


「はい。次には、衣装を直します」

「次を作るなら、そうしなさい」


彼は握手を求めた。

私は、その手をしっかり握った。


翌日、ライズ伯爵が劇場へ来た。

セドリック様のお父様だった。


息子の公演妨害を謝り、所有権の移転を覆す意図はないと、改めて伝えた。

昔の広間での安全上の指摘についても、職人に確かめたという。

私が嫉妬で中止させたという話は、伯爵家の集まりで訂正すると約束してくれた。


私はその約束を受け取り、今後の訪問には事前の連絡をお願いした。

セドリック様は、公演中に声をかけないと約束しない限り、入場を断る。

爵位にかかわらず、舞台を続けるための条件だった。


ロゼッタさんからは、その晩に手紙が届いた。


両家で婚約を解消する話を進めている。

理由は、公演中のことだけではない。

自分が何をしたいか話しても、彼は最後まで聞かなかった。


『彼に選ばれるために、歌っていたわけではなかったのだと、やっと言えました』


私は返事を書いた。

次の公演でも歌を頼みたいこと。

仕事の条件は、また話し合いたいこと。


その二つで十分だった。

彼女のこれからまで、私が決める必要はない。


ミナさんはしばらく休み、医師の許可を得てから、少しずつ稽古へ戻った。

復帰の日、舞台へ上がると、まず机を撫でた。


「ただいま」


誰に言ったのかわからない台詞に、ロゼッタさんが笑う。


「おかえりなさい」


二人の靴屋が、同じ舞台で台本を開いた。


賞状は、受付の壁へ掛けた。

私の部屋でも、公爵の屋敷でもない。

全員が出入りし、客が最初に見るところへ。


エダさんは埃を払うたびに、一度だけ文字を読んだ。

星灯座。

八年前に閉まった場所の名前が、もう、過去形ではなくなっていた。

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