第95話 第一次アフラ会戦
帝国歴1191年(王歴29年)6月20日 8:00
帝国軍本営
「敵軍をアフラ平原から北東2kmの地点で確認。アフラ平原に向けて進軍中。その数、およそ4,000」
進軍中のロマ帝国パトキン将軍の下に斥候からの情報が届いた。
「どうやら辺境伯軍は参戦しないようですな」と参謀。
「うむ、しかも動きが遅いな。こちら側のアフラ平原入り口狭隘地に展開すると予想したのだが」
「おそらくは援軍の到着を待って進軍しようとしたのでしょう。何らかの理由により援軍が到着せず、やむなくイスタン・イスファ軍のみで進軍、といったところでしょうか。これは勝ちましたな」
「油断は禁物だ。我が軍は大軍だけに展開に時間がかかる。先ずはアフラ平原での展開を急げ。
当初計画どおり左翼ならびに右翼に歩兵各3,000、中央に魔術兵100を含む歩兵3,000、騎兵1,000の配置だ」
「了解いたしました」
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同日11:00 帝国軍本営
「我が軍は布陣を終了。なお、イスタン・イスファ軍も布陣を終了し我が軍と対峙中。
敵陣は左翼・右翼に各1,000、中央に2,000、すべて歩兵」
その報告を受けたパトキン将軍は大きく頷き、次のとおり指示を出した。
「全てが想定どおりだ。これより当初計画に則り戦闘を開始する。中央軍、騎兵にて敵中央を突貫。
歩兵はそれに続き敵中央を粉砕せよ。右翼軍・左翼軍は中央軍戦闘開始と同時に相対する敵両翼を攻撃せよ」
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同時刻 帝国左翼軍
「我が左翼軍3,000に対して敵軍1,000ですか。将軍、これは楽な戦になりますな」
副官の発言に左翼軍指揮官は応じた。
「油断するな、といってもまあ無理だな。まあ、今回も楽に勝たせてもらおう。パトキンのオヤジの下にいると楽で助かるぜ」
「パトキン将軍は軍首脳からの評判はあまり芳しくありませんが」苦笑しながら副官。
ちなみに左翼軍指揮官に対する軍首脳の評判も芳しくない。要因は粗野な言動にあるようだ。
「なに、勝てば良いんだよ勝てば。評判を良くしたところで負け戦になったら、俺たち下っ端がたまったもんじゃない」
「少将を下っ端とはいいませんがね」
「細けえことはいいんだよ。おっと、そろそろ中央軍が動き出すか。
野郎ども!そろそろおっぱじめるぞ!!」
指揮官の声に応じて喊声が起こる。この指揮官は上の評判は良くないが下からは好かれているようだ。
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11:05 帝国中央軍
「騎兵は全員騎乗の上、突撃開始線まで前進、いったんその場で待機せよ。歩兵・魔術兵はそれを援護」
重武装騎兵隊が敵中央の一点に突撃、ここで開けた綻びに軽騎兵が突っ込み綻びを広げる。さらに歩兵が突入。
それと同時に、両翼の歩兵が前進、敵を包囲する。
これがパトキン将軍の、いや、帝国軍の野戦における必勝パターンだ。
中央軍指揮官は騎兵突撃を行うべく命令を下したが---
「敵歩兵部隊急速接近!数は約500、速い!!」
両軍が対峙する距離は約300m。そのおよそ半分の距離を10秒ほどで走破した敵軍がそこで停止し、隊列を組む。
「魔術隊前進!敵歩兵を---」
不穏な気配を覚えた中央軍指揮官が魔術隊に発しようとした命令は、敵から発せられた轟音に遮られた。
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同時刻 帝国左翼軍
「中央軍騎兵隊、敵攻撃により混乱中!敵の攻撃種別は不明だがおそらくは魔術攻撃!!」
「了解!左翼部隊全軍、密集隊形のまま前進!」
兵数はこちらが圧倒している。今は敵の奇襲攻撃により騎兵が混乱しているが
直に中央軍は立ち直るだろう。
そして、左翼における彼我戦力比は3対1。攻め込むには十分な数。それに我が軍は、神の軍隊。
「これは聖戦である!神はご照覧されているぞ!!」
左翼軍指揮官の言葉に全軍は喊声で応えた。
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11:10 帝国軍中央軍
「魔術隊、魔術射程距離外から敵攻撃を受けています」
「敵中央主力部隊、我が軍に対して攻撃を開始!魔術攻撃です!!」
「先ずは騎兵を立て直す!騎兵隊!!本営付近まで下がりそこで立て直しの上、突撃態勢を取れ!
歩兵隊はその場を死守!騎兵隊立て直しの時間を稼げ!」
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同時刻 帝国軍左翼軍
「敵は槍か?」
左翼軍指揮官が副官に問う。彼我の距離約200m。
「槍にしてはかなり短いのですが---まさか魔道具?」
「敵全軍が魔術部隊であるわけが---」
轟音、そして前衛の兵がバタバタと倒れる!
「いかん」左翼軍指揮官は小さくつぶやいた後、
「敵の攻撃は石魔術、ストーンバレットだ!全軍身を屈めよ!地べたに這いつくばれ!ストーンバレットは真っ直ぐにしか飛ばない!!」
敵の攻撃が散発的になったのを見極めた指揮官は次の命令を下す。
「味方の亡骸を積み重ねて盾とせよ!彼らは既に天国で美女と美酒を楽しんでいる!後に、天国で会った時に、彼らは笑って許してくれるぞ!」
全軍から歓声。
さらに命令を重ねる。
「各小隊長、分隊長!地形をよく見て窪地を探せ!少しでもかまわん、敵との距離を縮めろ!!」
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11:20 帝国軍本営
「左翼軍 敵と交戦中、敵魔術攻撃による被害はあるが前進中」
「右翼軍 待機中。敵も前進せず、未だ戦闘に至らず」
「中央軍、騎兵隊の後退に成功。騎兵残存部隊はおおよそ2/3の600~700程度。歩兵部隊は戦線を維持しているものの被害大、苦戦中」
「敵と近すぎるな、騎兵の立て直し場所が」パトキン将軍はそうつぶやくと新たな命令を下した。
「中央軍騎兵隊、現本営地点の1,000m後方にて立て直しを行え。本営はそれにあわせて1,000m後退する」
「左翼軍と右翼軍には?」
「両翼も後退、中央軍歩兵隊が抜かれた際に騎兵隊を援護できる態勢を取る」
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11:30 帝国左翼軍
「大佐、本営からの伝令!左翼軍は後退し中央軍の援護に当たれ!」
「馬鹿な!ここで後退したならば、一気に崩れるぞ!!」
「しかし!」
「副官!責任は全て俺が取る!本営からの伝令は到着していない!いいな!!」
「くっ---了解!!」
「あと少しだ!あと50m前進できれば、そこから突撃に移れる!!
全軍!!進めば天国、退けば地獄だぞ!!」
全軍はそれに歓声で応えた。




