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2度目の転生に関する報告書  作者: トール
第四章 ロマ帝国との戦い

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第93話 論文集(ロマ帝国について)

ロマ帝国について


王歴29年(帝国歴1191年)に行われた三度にわたる会戦について述べる前に、まずロマ帝国の成立と統治の特徴について概観する。


1.統治形態について

 ロマ帝国は、一神教であるロマ教による宗教国家である。

 すなわち、ロマ教の宗教組織(以下「教会」という)が帝国の統治機関を兼ね、ロマ帝国皇帝はその最高権威者として教会の頂点にも立っていた。


皇帝は、当初ロマ教法学者による互選で選帝されていたが、後に世襲化した。

 また、それに伴い支配者層も世襲化し貴族階級が構成されたが、元々はロマ教法学者による支配であったことから、王歴30年前後においても、階級流動性は他国と比べて高いものであった。


 当時のロマ教は聖俗一致の宗教であり、民衆の社会規範も聖典に基づくロマ教の規範を中心としていた。そのため、教会を統治機関とする支配体制は、政治的にも社会的にも極めて強固なものであった。


2.ロマ帝国の拡大について

 ロマ帝国は他国を侵略することによりその勢力を拡大していったが、その侵略方法は以下のとおりである。


 第一段階:ロマ教の布教および教会の設立

 第二段階:ロマ商人の経済的進出

 第三段階:武力によるロマ帝国への吸収


 征服された国家の支配は「準間接統治」と称されるものであった。

 すなわち、被征服国の支配者層を教会組織に組み入れ、彼らに引き続き統治を担わせた。一方で、ロマ教に改宗した民衆については「神の名の下に平等」とされ、ロマ帝国の市民権が与えられた。

 なお、ロマ帝国において非ロマ教徒の存在についても許されたものの、非ロマ教徒に対しては重税を課したことから、ほとんどの民衆はロマ教徒に改宗するのが常であった。


3.ロマ帝国の軍事力について

 ロマ帝国の軍事力で特徴的なものとしては騎兵部隊の存在が挙げられる。

 これは、ロマ帝国がまだ都市国家であった時代に、潜在的な敵対勢力であった周辺の遊牧民を取り込むことに成功し、騎兵部隊の運用を可能にしたことに由来している。

 次に特徴的なこととして挙げるべきは「宗教的情熱による強固な軍隊」であることである。

 ロマ教には「聖戦」という概念があり、この聖戦により死亡した者は死後天国に招かれるという教義がある。

 ロマ教は先に述べたとおり聖俗一致の宗教であったことから、ロマ教徒はこの教義を純粋に信じており、ロマ教徒であるロマ軍兵士は、まさに死を恐れることのない兵士であった。

 このため、当時の「戦争において精神的要素は物質的要素よりもはるかに重要である(克劳塞维茨)」時代において、ロマ帝国の軍隊は極めて精強な軍隊であった。


文学部史学科論文集より


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「---以上のとおり、カタゴ戦線においては引き続き膠着状態が続いております」


ロマ帝国皇帝会議室では、軍事官僚による報告が行われていた。


「想定どおりとは言え、なかなか時間がかかるな。やはり騎兵が使用できないのが大きいか」と宰相。

カタゴ諸国は山岳地帯にある国家群。対カタゴ戦線において騎兵の運用は限られている。

「はっ、誠に申し訳ありません」と軍務卿。

「かまわぬ。宰相が言ったとおり想定どおりだ。あと5年も圧力をかけ続ければカタゴ諸国は干上がる」

 皇帝の言葉に軍務卿は深々と頭を下げた。

「それでは次の議題だ。外務卿」と宰相。

「はい。バルト王国のタブリ伯爵から軍の派兵要請があります。内戦に手を貸して欲しいとのことです」

「内戦の相手は?」

「イスタン子爵です。もともとタブリ伯爵の寄子であったイスファ領をイスタン子爵が統治するようになり、タブリ伯爵領はイスタン・イスファ領からの経済的侵略を受けているとのことで」


「それについては私からも一言」と商務卿。

「近年、イスタン領の毛織物製品について、生産量が著しく増加しています。現時点ではタブリ伯爵領の関税政策により正規品についての流入はないものの、密輸品についてはタブリ伯爵領はもちろんのこと我が帝国にも出回りはじめている次第です」


「イスタンの毛織物製品については聞き及んでいる。ただ、その製品は高級品ではなく廉価品。もっと言ってしまえば粗悪品と聞いているが」

「高級品ではないことは確かですが、粗悪品ではありません。イスタンは安価な毛織物製品を大量に生産している。

 つまり、一般庶民をターゲットにした製品です。これをこのまま放置すると、我が帝国にも流入する恐れがあります。

 そしてひとたび流入してしまうと---我が帝国の綿織物産業に重大な影響を与える可能性があります」

「それほどまでか」

「はい。自動紡績機と自動織機という機械を使用することにより、生産効率を飛躍的に高めたとのこと。また、イスタン領は毛織物製品のみならず他の産業も著しく伸びております。一例では蒸気機関車」

「あの『鉄の馬』のことか」

「はい。既にイスタン・イスファ領間に鉄道が開通しており、馬車で1日かかるところが2時間に短縮され、さらには輸送量も格段に増加しているとのこと。また、この鉄道については、イスファから辺境伯都であるシバスまで延長する計画があるとのこと」


「仮にそれが実現すれば、辺境伯軍が容易にイスファまで、ひいてはタブリまで移動できるということか」

「軍事的観点からはそうなります。しかしながら、それ以上に脅威なのは経済効果です。物が動くと富を生みます。この鉄道が敷設されれば辺境伯領の産業は驚異的な発展を遂げる可能性があります」

「鉄道の開通はいつごろになると考えられる?」

「辺境伯都シバスまで開通するのは5年から10年はかかると考えられます。しかしながら鉄道は順次延長するはず。先に述べた毛織物産業をあわせて考えるに、現時点においてもイスタン・イスファ領は十分な脅威であると考えられます」


「それでは今のうちにイスタン・イスファを叩いておくべきということか」

「商務卿としては、そのとおりです」

「軍務卿の意見は?」

「商務卿の言うとおり、今のうちに叩いておくべきでしょう。ただし、兵と将の工面に少々時間をいただきたく存じます」


「陛下、以上のとおり、臣一同としてはイスタン・イスファを叩くべきと考えます」

「承知した。軍務卿、半月以内に作戦要綱を作成せよ。そうだな、パトキン将軍を使ってはどうか。今、パトキン卿は手空きのはずだ」

「御意」


パトキン将軍の姓名 ノワール・パトキン

ノワール = 黒

黒パトキン → クロパトキン

すなわち、アレクセイ・ニコラエヴィチ・クロパトキンさんがモデルです

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