第84話 第三次中期経営計画
トール19歳です
第三次中期経営計画(王歴19年度~21年度計画)
(王歴19年5月15日作成)
1.計画の趣旨
第一次中期経営計画に続き、第二次中期経営計画の諸目標も悉く達成され、これにより、人口・産業・治安の各分野において、安定した発展基盤を確立した。
ここに、今後三カ年の施政方針を「第三次中期経営計画」として布告する。
本計画は、 領民の安寧と産業の持続的繁栄を旨とし、都市としての均衡ある発展を図るための指針として策定するものである。
2.主要項目最終年度目標値(カッコ内は19年3月末数値との増減を示す)
(1)人口
12,000人(+6,000人)
(2)農業・食糧
ア.耕作地 4,000㏊(+1,000㏊)
イ.羊 1,200頭(+ 500頭)
ウ.コカトリス 600羽(+300羽)
エ.年間生産目標
1)小麦・大麦 4,000t(+1,000t)
2)ジャガイモ 1,000t(+ 200t)
3)羊関係
・羊肉 4t(+ 2t)
・羊乳 50t(+26t)
・チーズ 5t(+ 3t)
4)コカトリス関係
・肉 100t(+50t)
・卵 40t(+20t)
5)塩 80t(+30t)
6)砂糖 50t(+20t)
7)漁獲 20t(±0t)
(3)毛織物産業
ア.紡績工房 6棟(+3棟)
イ.織布工房 10棟(+5棟)
ウ.年間生産目標
1)羊毛 4t(+ 2t)
2)毛織物 30t(+15t)
(4)粗鋼
年間生産量 150t(+50t)
(5)治安
ア.常備兵 250名(+130名)
イ.予備兵 1,000名(+500名)
3.特記事項
・食料備蓄体制を強化し、災害・不作に備える (備蓄用倉庫の建設)
・領内需要を満たす鉄製品の生産、供給を目指す
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さて、この第三次中期経営計画については、看過しがたい違和感があることをここで指摘しておきたい。
この違和感は、主として三点に集約される。第一は、既存設備の能力に比して粗鋼生産量の目標値が低すぎる点である。第二は、魔石動力による生産設備の高度化が毛織物産業の目標値に十分反映されていない点である。第三は、計画全体が外部に対して意図的に穏当な印象を与えるよう設計されている可能性である。
まず、粗鋼生産量について。
各種資料により、イスタン領において王歴17年度末には、高炉ならびにコークス炉が稼働しており、この高炉の粗鋼生産能力は控えめに見ても200t/年程度であることが明らかになっている。
それにもかかわらず、18年度粗鋼生産実績100t/年、21年度目標150t/年にとどまっていることは、既存設備の能力から見てはあまりにも低い水準である。
次に毛織物産業の目標値について。
魔石魔力を動力源とした自動紡績機ならびに自動織機は、王歴17年度にはプロトタイプが完成し、18年度には実機投入されている。これらの生産設備の高度化により、毛織物生産量は実際に飛躍的に増加している。それにもかかわらず、第三次中期経営計画の目標値は単純な生産量倍増にとどまっており、生産設備の高度化を十分に織り込んだ数値目標とは言いがたい。さらに、第二次中期経営計画で定性的事項として述べられていた「魔石動力による工業機械の開発を行う」という項目について全く触れられていない点にも、大きな違和感がある。
最後に、本計画全体から感じる違和感について。
本計画は、人口を倍増させる等、一見すればチャレンジャブルな計画と考えられるが、「自然で無理のない成長曲線」が描かれているものであり、あたかも、「外部公表用として作成された無難な計画」であるかのような印象があることが拭いきれない。
そして、先に述べた粗鋼生産量・毛織物生産量の違和感についても、本計画が「外部公表用の無難な計画」であったとするならば、外部に脅威を感じさせないよう、この項目についてあえて低い数値目標としたものと考えることができる。
さて、仮に本計画が「外部公表用計画」であったとした場合、それを作成・公表した意図はどこにあると考えるべきなのか。
それについては次章「トールによるイスファ領の実質的併合について」で考察を進めていきたい。
文学部史学科論文集より抜粋




