第74話 王歴11年9月次 月次報告 + 商会との打ち合わせ
バルト王歴11年9月次 月次報告
1.報告日
バルト王歴11年10月5日
2.報告要旨
(1)開拓の進捗状況
ア.塩の生産について
塩の生産は順調であり、鮭の保存加工用については既に必要量を生産済である。
余剰在庫が1tを超えたため、現在は生産を中断している。
イ.鮭の漁獲ならびに保存加工
9月15日から鮭の漁獲を開始した。9月末までに約1000匹を漁獲しており、10月半ばに終了する予定である。
ウ.農地の造成
約30㏊の耕起は終了している。
このうち300㎡程度を葉物野菜栽培とし、残りは来春からの作付けに向けて土壌改良を行うこととする。
エ.越冬用燃料の確保
2~3年分の屋敷での使用量を確保済みである。
なお、塩生産のための薪も1年分は確保済みである。
(2)イスタン村の状況
鮭の漁獲ならびに保存加工については、前述のとおりである。
その他、特記事項はない。
(3)今後の取り組み事項
・鮭の漁獲、保存加工(継続)
・農地土壌改良
・葉物野菜の作付け
・塩の売却
・労働人口の増加
・羊牧業の試験試行
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ブルック商会イスファ支店応接室
「トール様、それでは本日お持ち込みいただいた一角兎30、魔狼30の魔石にについて、大金貨1枚で買い取らせていただきます。スタンピートの後は魔石の価値が下がってしまい、申し訳ないのですが」
「いえ、支店長。値段について格別なご配慮をいただいていることは承知しています」
「そうおっしゃっていただけると助かります。金貨でお持ち帰りになりますか」
「いえ、この前にお願いしました羊の代金もありますので」
「雌10頭、雄2頭ですね。1ケ月後には手配できます。金貨4枚になります」
「では、残りの金貨6枚は貨幣で受け取らせていただきます」
「あと、お願いがあります。奴隷を手配できますか」
「奴隷---ですか」
「はい、急ぎではないのですが、春以降に労働力不足になるのが間違いないので。冒険者ギルトにも農作業要員手配の依頼しているのですが、全く応募がない状況でして」
「なるほど。どれくらいの人数をお考えですか」
「とりあえずは農業経験者の男性10名、女性もその程度。子供については多め---そうですね、20名を上限で。乳児でもかまいません」
「かしこまりました。相場としては男性が大金貨1枚と金貨5枚。女性が大金貨1枚。子供が10歳で金貨5枚。それ以下の年齢であればもう少し安くなります。全て3年後には解放する必要がありますが、よろしいですか」
「はい、大丈夫です」
「大変失礼ながら資金のほうは?」
「まだ余裕があります。必要でしたらば前払いとしますが」
「いえ、それにはおよびません。大変失礼なことを伺いました。申し訳ありません」
「次のお願いですが」トールは支店長の後ろに控えている事務員をちらっと見る。
「この者は私の懐刀。信頼については私が保証します」
「失礼致しました。それでは、他言無用でお願いしたいのですが、塩を売りたい」
トールは瓶を取り出す。
「サンプルです。1kgあります」
「中身をあらためさせていただいても」
「どうぞ」
「---ほう、これは上質な海塩ですな。にがりがしっかりとなくなっている。
この品質でしたらば1kgあたり銀貨1枚で引き取りできます。それで、如何ほどお持ち込みいただけるので」
「年間18t」
「は?」
「イスファ領で慢性的に不足している塩の量は、最低でも年間20t程度だと見積もりました。少々控えめに考えて、18t/年の塩を用意します。なお、塩の増産は可能ですので、貴商会のご希望数値があれば、それについて相談いたしたく」
「う~ん、ありがたいお話ですが、それほどの量の塩をさばくとなると---」
「イスファ子爵様の動きが気になりますか」
「はい。イスファ領において、塩は専売とまではなっておりません。しかしながら、戦略物質であることは間違いなく、子爵様がどのような反応をするかが読めないところです。この件につきましては少々お時間をいただいて検討をさせていただきたく」
「承知しました。参考までですが、当家はイスファ子爵家から関税免除の許可を受けております。このことを含めてご検討いただきたくお願いします」
「関税免除ですか。契約を締結されたのですか」
「契約書にはなっていません。しかしながらこの文書をお読みとりいただければ」
トールは支店長に四通の文書を提示する。
・一通目
代官であるクレアから、子爵に対するお礼の手紙の写し。
お礼の内容は、①関税を免除していただいたこと②イスファ山脈南側に宿泊地建設を認めてくれたこと。
・二通目
上記文書に対し、子爵からクレアに対する返礼の手紙
関税免除ならびに宿泊地建設について、わずかながらでも力になれたことについて、悦びとする旨が記載されている。
・三通目
子爵夫人からクレアに対する手紙
人員手配について、冒険者ギルドに対する口添えができなかったことに対する謝罪が記載されている。
・四通目
クレアから子爵夫人に対する返礼の手紙
冒険者ギルド案件はご指摘のとおり、当家とギルドの案件であり、子爵家が関与するものではなく、これについての関与を求めたことについての謝罪が記載されている。
支店長は後ろに立つ事務員にもこれら文書を読ませた後、トールに対して話しかける。
「大変恐縮ですが、この文書について、写しを取らせていただいてもよろしいでしょうか」
「構いません。当家が貴商会に提示した内容である旨の裏書きをいたしましょうか」
「ありがたく存じます。それでは代官であるクレア様の裏書きをいただければ」
「承知しました。姉上、よろしいですね」
「はい」
事務員が写しを作成している間、しばしの雑談。クレアが裏書きを行った後、1ケ月後に再訪するので回答をいただきたい旨を告げた後、トールとクレアは辞去。
トールとクレアが辞去した後、支店長が事務員に話しかける。
「さて、カポ様。本件、如何お考えになりますか」
事務員はブルック商会三男のカポ。修行としてイスファ支店で事務員を行っている。
「はい、支店長。本件について、受けるべきと考えます」
「ほう、その理由は?」
「イスファ領の塩は不足状態。これを供給することはイスファ子爵にとって悪い話ではないはず。
また、万一、関税等のことでとがめられたとしても、先ほどの文書があります。少なくとも本店にまで影響が出るような話にはならないはず。で、あればここは話を受けるべきかと」
「なるほど。して量は年間18t全てを引き受けるということですか」
「いえ、少なくとも今後1年間は5t程度に抑え、希少価値をアピールします。その後は年間20tから漸次拡大していくことが望ましいかと考えます。トール様はイスファ領の塩不足数値を20tと見込んでおりますが、30t、いや40tくらいの需要はあるかと考えます」
「よろしい。ではその方向で話しを進めましょう。あと、カポ様に宿題をひとつ」
「なんでしょうか」
「辺境伯領への塩の売り方をお考えください。ご承知のとおり辺境伯領も塩が慢性的に不足しております。
この需要に対してイスタン領で生産された塩を供給するには、どのような方法があるか。
政治的な問題を含めてご検討をいただきたく。なお、期限は1ケ月。良い案が出来ましたらばトール様にプレゼンをしていただきたく。あくまでも将来構想としてですが」
「承知しました。がんばります」




