第57話 スタンピート7
4月11日 14時
避難民ならびにそれを護衛する第三中隊および第一中隊(除く第一小隊)、シバスの町に到着。
同日 16:00
第一大隊本部会議室
「大隊長、入室します!一同、起立!」
「ご苦労。本日17:30から、辺境伯出席の作戦会議が行われる。それに先立ち、これより第一大隊の事前会議を行い、情報共有を図る。時間は少ないが、意見等があれば忌憚なく述べよ」と大隊長。
「まず、騎兵小隊。偵察結果を報告せよ」
大隊副官が議事を進行する。
「はい。15:00時点、北方30kmの地点でスタンピート前哨隊と思われる魔物集団を確認。前哨隊のシバス来襲予想時刻は本日20:00前後。スタンピート本隊は早ければ明朝には来襲すると考えられる。
なお、本情報は軍団本部ならびに第二・第三大隊に共有済。以上」
「了解。第一中隊第一小隊は?」
「確認できませんでした。本日早朝から北方40km地点で遅延戦闘を実施するとのことでしたので、おそらくは---」
「まだ希望はあります!今夕中に帰還すれば---」と第一中隊副官のアンナ。
「わかった。では次だ」
「各隊、現時点までの被害状況を報告せよ。先ずは第一中隊」
「第一中隊、第一小隊を除く被害状況を報告します。死者ゼロ、重傷者10、軽傷者21。軽傷者は衛生隊の治療を受け既に原隊復帰済。重傷者は治療のため離脱中。以上」
「第二中隊、死者ゼロ、重傷者7、軽傷者20。軽傷者は原隊復帰済。以上」
「第三中隊、死者5、重傷者20、軽傷者30。軽傷者は原隊復帰済。以上」
「第四中隊、死者ゼロ、重傷者3、軽傷者12。軽傷者は原隊復帰済、以上」
「やはり避難民を直接護衛した第三中隊の被害が大きいか。各隊、ご苦労であった。次」
「衛生隊、状況を報告せよ」
「はい。衛生隊は第二大隊ならびに第三大隊の衛生隊の全面協力を受け負傷者治療中。先の報告通り軽傷者治療を優先し既に原隊復帰済。重傷者は治療中であるが、重篤者なし。大半が明朝までに原隊復帰可能と思われる」
「ご苦労、次」
「大隊長、お待ちください。意見具申です。先の報告のとおり衛生隊に若干の余力が生じています。衛生隊の一部を避難民の治療に充てたく考えます」
「却下だ。戦は明日からが本番だ。衛生隊に余力などない」
「ですが!」
「気持ちはわかるが、マリアンメ、ここはこらえてくれ」
「---」
「衛生隊に命令!衛生隊は重傷者治療後ただちに休息に入り魔力回復に努めること!復唱!」
「くっ---衛生隊は重傷者治療後ただちに休息、魔力回復に努める!以上!」
「では次---おい、何だ?」
会議室の入り口付近で何やらもめ事が起きている模様。
「時間がない!何かあったのか!?」
「はっ、報告します。未確認ですが、避難民の治療が全て終了したとの一報が入りました」
「馬鹿な!?」とマリアンメ衛生隊長。
「あれだけの数の負傷者がいて、治療終了だと!?」
「本当ですぜ」会議室にのっそりと入ってくる大柄な初老の兵士。
「衛生隊長殿、避難民の治療は終了。これに伴いダニエル班長は原隊に復帰します。っと---隊長のことだ、衛生隊に避難民を治療させろとか言い出すんじゃねえかと思ったんで、至急報告来たのですが---まずかったですかね」
「いや、適切な報告だ」と大隊長が苦笑しながら言った。
「お前さんの隊長、命令違反覚悟で飛び出して行きそうな様子だったからな」
「そんなことは---それより、どうやってあれだけの怪我人を」
「ユメって嬢ちゃんです。トリアジ?をしろって言った娘。覚えてますか?」
「ああ、シバス孤児院の」
「あの嬢ちゃん、負傷者をまとめて一気に治療しやがった。なんでも『エリア・ヒール』とか言ってたな」
「馬鹿な!?上級治癒魔術エリア・ヒールだと?王国宮廷魔術士でも数人しか使えないのに、どうやって」
「なんでも嬢ちゃんの兄貴から習ったんだとか、確かトールとか言っていたな」
「トールだと!?」と第一中隊長副官。皆の視線が第一中隊長副官に注がれる。
「失礼しました!トールは第一小隊に随行している冒険者見習いです」
「ああ、『指揮官殿』のことか」と騎兵小隊長。
「土魔法の使い手だそうだ。それも、相当腕利きの。うちの隊員が惚れ込んでいたぞ」
「話がそれた」と大隊長。
「避難民の治療終了について、確定情報として取り扱う。それと衛生隊!」
「はっ」
「ユメっていうお嬢ちゃん、うちで抱え込むぞ。他の大隊にとられるな」
「了解です」
「では次---おい、今度は何だ?」
「報告!第一中隊第一小隊を北方の丘、北門から約4kmの地点に確認!第一中隊第二・第三・第四小隊は、援護のため緊急出動中!以上」
「会議中断!大隊長は北門に向かう!」
「本会議の時間が迫っていますが---」
「待たせろ!30分、いや一時間延期させろ」




