第5話 開拓村2
「(身体強化)」
サブローは、無属性魔術「身体強化」を無詠唱で発動、自らの身体能力を強化する。
「(重力軽減)」
土属性の中級魔術、「重力軽減」により、自らにかかる重力を軽減する。
辺りに人影がないことを確認し、大きくジャンプ。身体強化と重力軽減の複合効果により、村の境界柵を飛び越え、10mほどの高さの木の枝に飛び乗る。
さらに枝から枝へとジャンプを繰り返し、2分程度で約1000mの移動を行った。
「(魔力感知)」
無属性魔術「魔力感知」を発動。
「お、結構いるな、魔獣が。予定どおり弱いやつからいくか」
サブローは、微弱な魔力を検知した方向に大きくジャンプ。
「(ストーンバレット)」
着地前に土属性初級の攻撃魔術であるストーンバレットを発動し、魔力検知先へ放つ。
着地直前にウサギ型魔獣が倒れていることを視認。大きさはオリジナル世界の兎とほぼ同一。
「一角兎か?それにしては小型だな。2転世界ではこれが標準なのか?それとも子供の一角兎か?」
着地後倒れた獲物に近づくと、やや大きめの魔力が高速でこちらに向かってくることを感知。
「(ストーンバレット)」
感知直後にストーンパレットを無詠唱で発動。接近する魔力に向けて放つ。
向かってきた魔力が停止したことを感知。そちらに近づくと、同じウサギ型魔獣が倒れていることを視認。
「うん、一角兎の大人だな。ということは、さっきのは一角兎の子供だ」
さらに近づき、一角兎に手を伸ばす。
「(収納)」
無属性魔術「収納」を発動。一角兎(大人)はその場から消える。
さらに一角兎(子供)を収納。
「よし、狩りは計画どおり。問題はこれからだな。母さんがどういう
反応をするか---」
サブローはそうつぶやくと、帰宅すべく再び枝から枝へのジャンプを
繰り返した。
・・・・・・・・・・・・・・
「母さん、ウサギ捕まえた。料理して」
「サブロー、おまえ、一体どこでどうやって捕まえたんだい」
差し出された一角兎(子供)を見て、母親が驚きのあまり目を見開く。
「あっちのほうにちょっと行った先で。石をぶつけた」
ウソはついていない。「ちょっと」の感覚が一般的なものではないし、ストーンバレットを「石をぶつけた」とは一般的には言わないが---
まあ、ウソではなかろう。
「石をぶつけたって---まあいいか、あんまり危ないことをするんじゃないよ。夕食に出すから待ってな」
早速、台所に向かう母親。
「(よし、第一段階クリア---それにしてもちょっとは疑えよ。4歳児が石投げて一角兎が倒せるわけないだろうが---)」
夕食時
サブローは自分の皿に盛られた食事内容を見てそっとため息をついた。
「(やはり---か)」
父・母・長兄の皿には、そこそこの量の肉が盛られているが、自分と次兄の皿にはわずかな量の肉しか盛られていない。
「母さん、僕の肉少ない。僕が捕ってきた肉なのに---」
ダメ元というか、確認のために母親にクレームをつけるサブロー。
「村の掟なのさ」
母親は一言つぶやくと、顔をそむけるようにして食事をはじめた。
「文句を言うならば食うな」
父親がサブローを威圧するように言う。
「ジローと同じ量を食わせてやってんだ。母さんに感謝しろ」
しかたなく食事をはじめるサブロー。
「もっと獲物を捕ってこい。そうしたらば腹いっぱい食わせてやる」
「(いや、食わせてやるって---まあ、こいつらに文句言ってもしょうがないか)」
食事をすすめながらサブローは考察を始める。
「(村の掟と言ったな---想定したとおり、いや、想定以上にまずい状況だ。村の人口が急激に増加し、そこに不作・凶作が起これば村が全滅する可能性がある。このため、次男・三男には嫁を取らせず人口抑制をすることはよくある話だ。
この村は潜在的な食糧事情が良くないため、凶作となった場合の食料配賦方法をあらかじめ村の掟として決めているのだろう。
つまりは---凶作になったらば、私には食料は供給されない。
このことは事実として認識せざるを得ないだろう)」
食事を終えたサブローが母親に向けて話かける。
「母さん、文句を言ってごめん。肉おいしかったよ。」
さらに父親に向けて話しかける。
「父さん、たくさん獲物を捕ってくるようにするよ。
家の手伝いが終わったら、獲物を狩りに行っていいかな」
「---いや、家の手伝いはいい。いっぱい獲物を取ってこい」
「(よし、自由時間ゲット!明日からプランFを実施しよう)」
サブローは満面の笑みで父親に謝意を伝えた後、こう言った。
「僕、がんばるよ(自分が生き残るために---)」




