第48話 報告書(小隊副官の備忘録)
王歴11年3月26日
・スタンピート予兆を確認。北山裏斜面に魔物集結中とのこと。
・中隊本部に対して以下の伝令を実施。
1)スタンピートの可能性あり。確認が取れるまでの間、第一小隊は現地点にとどまる。
2)上記情報を大隊本部へ連絡するとともに、伝令騎兵をベースキャンプまで派遣するよう要請すること。
3)念のため、第一中隊は避難民保護のための出動準備を行うこと。
3月27日
・トール、北東山の裏斜面を確認。魔物の集結なしとのこと。
・北西山に異常は認められず。
・北山の情勢変化なし。
3月28日
・トール、北西山の裏斜面を確認。こちらにも魔物の集結なし。
・北東山に異常は認められず。
・北山の情勢変化なし。
・今後、監視対象を北山のみに限定することを決定。
監視体制は以下のとおり。
1)A班 中隊長+第一・第四分隊
2)B班 小隊長+第二・第三分隊
とし、隔日で交代する。
なお、トール・クレア・ティナの3名は常に監視を実施。3名、特にティナの疲労が懸念される。
3月29日
・状況変化なし。
3月30日
・状況変化なし。
3月31日
・状況変化なし。
・残存食糧、4~5日分。
4月1日
・北山の状況変化なし。
・伝令騎兵到着、想定よりも1~2日早い到着。
・クレアが疲労している模様。なお、トール・ティナは問題ないとのこと。
4月2日
・北山の状況変化なし。
・ベースキャンプ~監視所間往復の際の魔物会敵の頻度が上昇しているとのこと。魔物活性化か?
・トールから監視ポイントでの常駐(含む夜営)提案あり。中隊長は夜間の安全確保に問題ありとしてこれを却下。
・中隊本部に通常伝令を出す。内容は、未だスタンピート発生の確証はないものの、その可能性は高まっているため小隊は引き続き現地点での監視を継続すること。
・クレアの疲労度著しく本日はベースキャンプにて待機。
4月3日
・北山の状況変化無し。
・クレアは前日に引き続きベースキャンプで待機。
・ベースキャンプの状況
1)小隊要員の士気旺盛。隔日活動であることと『百合の乙女』による生活支援の好影響によるもの。なお、風紀に乱れなし。
2)小隊長とドロシー嬢がお互いに好意を抱いているのではないかとの噂が流れる。その噂を聞きつけた中隊長が小隊長を詰問する。
中隊長が小隊長を詰問した旨を聞きつけたドロシー嬢が中隊長に激しく反発。結果として中隊長の精神的落ち込みが激しい。指揮への影響が懸念される。
正直、いい加減にしてほしい。
3)残存食糧、心許なし。2~3日中に撤収必要。
4月4日
・北山の状況に変化あり。
裏斜面に集結していた魔物が尾根に向かい移動を開始、明朝には尾根に到着する模様。
・これを受け、監視隊は本日、監視ポイントでの夜営を行い明日朝一からの監視を実施する。
・ベースキャンプ撤収の準備を始める
4月5日
・8:00前後
北山表斜面に魔物集団出現を確認。
・10:00前後
当該魔物集団は監視ポイントに向けて進行中であることが確認された。
第一小隊として、正式にスタンピート発生と認定する。
・14:00前後
監視隊、ベースキャンプに帰還。途中、魔物との会敵が多く帰路に時間を要したとのこと。
・14:30前後
伝令騎兵、出発。なお、小隊本体は監視隊の疲労度を考慮し、本日はべースキャンプに宿泊、明朝払暁に撤収を開始する。
4月6日
・6:00前後
撤退行進を開始。負傷者なく、『百合の乙女』を含めて疲労度低。
早期のスタンピート確認をという目的を完全に達成。トールたち達の殊勲甲。
注釈
本文書は正式文書ではないものの王歴11年のスタンピートに関する第1級資料としての価値が高いと考えられる。なお、本文書については筆者である小隊副官の名前がナグであることからナグ文書と称されることがある。
文学部史学科論文集から抜粋




