第47話 調査隊5
ベースキャンプでの作戦会議。
出席者は中隊長ロト、小隊長サムエル、小隊副官、各分隊長4名。それにトール・クレア・ティナ。
司会進行はサムエル。
「中隊長殿のご意向により、第一分隊の報告は最後に行う。まずは第二分隊、報告せよ」
「はい。北東の山には魔物を確認できず。以上」
「次、第三分隊」
「はっ。こちらも同様に異常なし。以上」
「監視ポイントまでの道中で、魔物の動きに変化はあったか」
「第二分隊、会敵回数3回。特に魔物の活性化は認められず」
「第三分隊、会敵回数5回。通常時より心持ち会敵回数が多いが、魔物の活性化とは断定できません」
「了解。では第一分隊、報告せよ」
「中隊長殿、お願いできますか」と第一分隊長。
「結論から言う。スタンピート発生だ」
「北の山に魔物の大量発生が確認できた、ということですか」
「そのとおり。ただし、だ。俺も分隊長も確認していない。確認したのはトールだ。トール、報告してくれ」
「はい。北の山の裏側斜面に大量の魔物を確認。その数は視認できた範囲で500から600程度。
確認できた魔物の種類はゴブリン。これが大半を占める。その他に魔狼、あ と二足歩行の豚と、豚と類似しているが一回り大きいと二足歩行の魔物。なお、集団は蠢いている状態で特定方向への進行はしていません。以上」
「オークとオーガか---過去のスタンピート時と同様の構成だが---トール、裏側の斜面と言ったな。どうやって確認したんだ」
「空中から視認しました」
「は?」
「こいつ、空を飛びやがった。土魔法の重力反転だそうだ。ああ、空を飛んで山頂の向こう側まで行ったことは俺が視認している」とロトが補足。
「---で、どうします?」
「そこなんだよなあ、問題は。俺は確認していないけど冒険者見習いが空を飛んで確認しました、って報告したらどうなると思う」
「信用されないどころか、頭がおかしくなったと思われるでしょうね」
「だよなあ。どうすりゃいいんだ」
「ちょっと教えてほしいのですが」とトール。
「スタンピートが確認されたときのマニュアルはどうなっているのですか」
「マニュアル?」
「え~と、手順書というか、次に何をするのかの取り決めというか---」
「ああ、それはだな」とサムエルが対応マニュアルの要旨をトールに説明した。
・シバス周辺住民の避難
シバス周辺に点在する村の住民をシバスの町に収容する。
なお、避難にあたっては軍が援護を行う。これはスタンピート発生にともない活性化している魔物の襲撃から避難民を守るため。
・寄子貴族ならびに王家への援軍要請・援軍受け入れ
寄子貴族ならびに王家への援軍要請を行い、援軍を受け入れる。
なお、とある事情により寄子以外の貴族からの援軍は受け入れず、また、王家からは魔術親衛隊1個中隊(3個小隊編成)のみの受け入れを行う。
・シバスでの籠城
避難民収容ならびに援軍受け入れ後、シバスに籠城する。
シバスの街は、スタンピートの進路上にあり(正確にはシバスの街は、スタンピートの進路上に作られており)、理由は不明であるが魔物がこの町を迂回することは今までにない。このため、シバスの城壁によるスタンピート勢力撃滅を行う。
なお、食糧を含めた籠城のための物資は常備されていることから、スタンピート発覚時点での手配は不要。
「まあ、ざっとこんなところだ」
「よくわかりました。それでは当面は周辺住民の避難が課題になるということですね」
「そうだな。現時点で援軍要請をするのは早かろう。そう考えると住民避難が優先課題になる。ただなあ、今ある情報で避難命令を出すのは難しいぞ」
「避難命令を出すまでのプロセスを教えてください」
「プロセス?」
「誰にスタンピート発生の情報を伝え、誰が避難命令を決定し、誰が周辺住民に伝えるか、ということを教えてください。可能な限り詳細に」
「おいおい、なかなか難しいことを聞くんだな」
・スタンピート発見者(まあ、俺たちのことだ)が、その上位組織の長(第一大隊長経由で軍団長だな)に報告。
・上位組織の長から辺境伯に報告。
・辺境伯が関係者と協議の上、避難命令を決定。なお同時に援軍要請を実施。
・軍団長から大隊に対して避難支援実施を指示。
なお、この避難支援は第一大隊が受け持つことが通例となっている。
・第一大隊の各中隊、各小隊から周辺村の村長に対して避難命令を伝達。護衛戦力が到着次第、住民の避難を開始する。
「ざっくり言えば、こんなもんだ」
「そうすると、中隊ができることは、第一大隊長への報告を迅速に行うことと避難命令が出た後に避難支援を行うことですね」
「とはいえ、通常のスタンピート確認、つまり山の表斜面での魔物集結が確認されるまではスタンピート発生を正式に報告することは難しいぞ」
「承知しています」
「まあ、お前さんのいうプロセス---だったか。そのプロセスごとに所要時間を短縮する方法を考えていくか」
「はい、それがよろしいかと、それと---」
「何だ」
「なるべく金のかからない方法で。副官のアンナさんが怖いので」
「---同意」




