第41話 調査隊1
バルト王歴11年3月20日夜明け前、シバスの町北門。
バルト辺境伯軍第一大隊第一中隊第一小隊のメンバーがそこに集合していた。
さらに『百合の乙女』メンバー4名にトール・クレア・幼女1名が加わっていた。
「本当に連れて行くのか」
中隊長のロトが娘のドロシーに尋ねた。
「ああ、言ったろう。もれなくちびっ子がついてくるって」
「いや、それはわかっている。確かティナとかいったな。魔術師の卵だとか。
そうじゃなくて、お前のところの娘っ子たちも連れて行くのか」
「ああ、すまないな。それが『百合の乙女』の条件だ」
ドロシーがミリアムたち3人に対し、2~3週間ドロシー・トール・クレア、そしてティナがパーティから離脱することを告げたとき、ミリアムたちから強硬な申し入れがあった。
「私たちも連れていけ」と。
「ドロシーとトールちゃんたちがいないとパーティ活動ができないよ!」
「そうね~。ちょっと長い間いないわね~。困っちゃうわ~」
「ドロシー、ティナも連れて行くんだろう。だったらそれほどの危険はないはずだし、私たちも炊事とかの雑用で役に立つはずだ。それにドロシー、私たちはパーティだろう」
ドロシーは結局、3人の説得をあきらめ、『百合の乙女』として依頼を受けることにしたのだ。
「危険がない、というわけではないがな。まあ、決まったことだ。しょうがない」
「それよりも父さん、父さんも同行するって本当か?」
「ああ、おまえだけならまだしも、娘っ子たちもつれていくからな。
色々と危なっかしくてしょうがない。おい、野郎ども!娘っ子たちに手を出すんじゃねーぞ!」
「中隊長の娘さんたちに手を出すほどの勇者はいませんよ」
苦笑しながら応じたのは20代半ばの兵士。
「ねえ、ドロシー。あの人、独身?独身だったら紹介して」とエリー。
「ああ、小隊長のサムエルさんだ。確か独身だったぞ。ちょうどいい機会だな。
父さん、うちのメンバーを兵士の皆さんに紹介させてくれ」
「ああ、わかった。わかったが、これからは軍と『百合の乙女』の合同作戦になる。俺のことは中隊長と呼べ」
「承知しました、中隊長殿」
『百合の乙女』の紹介が終わった後、小隊長のサムエルから簡単なブリーフィング。
「これから5日後にベースキャンプに到着予定!その後、約一週間をかけて周辺状況の調査を実施!事前に通達した予定からの変更なし!では、出発するが---ティナ!お前は荷馬車に乗れ!」
「小隊長殿!意見具申!」トールが右手をピッと挙げ、小隊長のサムエルに正対する。
「何だ!」
「ティナの荷馬車乗車は当面の間、不要!徒歩移動で問題なし!!」
サムエルは困惑する。見た目10歳になっていない少女を、長時間、軍の移動速度で歩かせろというのか?
「サムエルさん---いや、小隊長殿」苦笑しつつドロシーが言う。
「ティナは私たち---いや、私よりよほど健脚です」
「魔術師の卵---身体強化か?」ロトがドロシーに小声で尋ねる。
「おそらくは---」とドロシー。
その会話を聞き及んだのか、サムエルは大きくうなずいた。
「具申内容を承認する!ティナは別命あるまでは徒歩で『百合の乙女』と同一行動!では、出発!!」
「トールお兄様、ありがとうございます」と、ティナ。
「ティナ、なぜトールに礼を言う」とドロシー。
「荷馬車に乗ったほうが楽だろう。トール、ティナをわざわざ歩かせなくても---」
「いいえ、ドロシー様」とティナ。
「あの荷馬車に乗ると---間違いなく酔います」
「ほう、荷馬車で旅をしたことがあるのか」
「いえ、荷馬車ではないのですが---」
「普通の馬車でも酔う。まして、あの荷馬車だと---ということか」
ティナはうなずき、続けて言った。
「それに、トールお兄様のおそばにいられるのがティナはうれしいのです」
そういいつつ、ティナはトールの腕にひしりと抱きつく。
「ティナ、ちょっと甘えすぎだぞ。トール様が迷惑している」とクレア。
「トールお兄様、ご迷惑ですか?」ティナは不安そうにトールを見上げる。
「そんなことはないよ、一緒に歩こう」とトール。
「はい!トールお兄様」満面の笑みでトールを見上げるティナ。よしよし、とティナの頭をなでるトール。
次の瞬間、ドロシーは見てしまった。
してやったり、とばかりにクレアへにやりと笑いかけるティナと、不満げにてティナをにらむクレアを。
「怖っわ」思わずつぶやいてしまうドロシーであった。




