第37話 冒険者活動3
「さて、これからのことだが」
食事を終えたドロシーが話を始める。
「まず、明日について。私たちはいつもどおりに薬草採取。クレアとトールは薬草採取禁止」
「どうしてですか」
「今日の勢いで採取したらどうなると思う」
「取り過ぎる、のかな」
「かな、じゃない。取り過ぎるんだよ。下手すると買い取り価格が下落するぞ」
「そこまでのことは---」
「ない、言い切れるのかい、トール。明日、3時間ほど採取したら何本くらいになる?」
「え~と、30分ほどで32本だから---1時間で64本。3時間で192本か。昨日は慣れていないところもあったから、200ちょいはいけるかも---」
「それ、暴落しちゃうよ~」とミリアム。
「そうですか~」
「そうですよ~」
「じゃあ、僕たち二人は自由行動ということで」
「ああ、そうしろ。あと、クレアとトールのパーティ参加は、今回で終了な」
「---冒険者活動初日でパーティから追放された件について」
トールがぼそりと言った。
「どうして! トールちゃん、こんなに活躍したのに!! おねえさん、ずっとトールちゃんと一緒にいたい!」エリーが叫ぶ。
「楽すぎるんだよ、トールと一緒にいると。荷物は持たなくていい。水場を探さなくていい。野宿のテントを立てる必要もない。薬草は簡単に採る。挙げ句の果てにこの食事だ。下手な飯屋よりよほど美味い」
「あら---」ちょっとうれしそうなクレア。
「褒めてない!いや、料理は褒めているが、そうじゃない。このままトールたちとパーティを組んでいたら、トールに依存してしまう」
「いいじゃない!依存しても。せっかくの金づ---せっかく仲間になったんだから!」とエリー。
こいつ、いま金蔓って言いかけたな。
「いつまでもトールと一緒にいられるわけじゃない。トールと一緒のパーティ活動に慣れてしまった後、トールがメンバーから外れたら---どうなると思う?」
「---」さすがにエリーも黙り込む。
「ちょっと待って」めずらしくスザンナが口を出す。
「毎回、じゃなければいいんじゃない。2回、いや、3回に1回だけトールたちとパーティを組む。確かに、そのときには楽をさせてもらうけど---トールたちも冒険者活動は初めて。薬草採取以外の冒険者としてのノウハウを教える対価と考えれば、一方的な依存とは言えないと思う。それに---」
とスザンナは続ける。
「この冬が越せるかどうか、不安だった。トールたちが加われば---」
「いざとなったら、うちに来ればいいじゃないか。去年もそうしていたし---」
「そう、去年の冬は私たちみんながドロシーの家にお世話になった。でも、それってドロシーに依存しているってことでしょ」
「---」
「だったら---」
「ドロシーさん、3回に1回でかまいません。パーティに参加させてください」とクレア。
「ドロシーお姉様に冒険者のこと、教えてほしい」
トールはちょっと上目づかい気味にドロシーを見上げた。
ドロシーは少しどぎまぎした。これが保護欲をかきたてられるというやつか。
「---わかった」とドロシー。
「よっし!トールちゃん、これからもおねえちゃんたちと一緒だよ!」
「エリーさんは僕のお姉様ではありません」
日没後。
小用を足すために小屋を出たクレアにドロシーが追いかけるように近づき話しかける。
「おまえの弟、何者なんだ?」
「---」
「いつからあんな感じなんだ?」
「---」
「本当に弟なのか?そういえば、おまえはトールのことをトール様って言ってたな」
「本当は、はとこです。本家筋の。小さいころから私のことを姉と慕ってくれていたので---」
「まあ、訳ありなのはわかっている。これ以上追求するつもりはない。
ただ、クレア、おまえはこれからもトールと一緒にすごすのかい?あいつと一緒だとどうしても依存してしまうと思うが---」
「---もう遅いです」
昨晩、孤児院で宿泊したとき。
トールは孤児たちの部屋で、クレアは修道女たちの部屋で寝ることとなった。
眠れなかった。クレアは一睡もできなかった。トールが隣にいない。その事実が、これほど不安に感じるとは思ってもいなかった。
「私はトール様とともに歩みます。あとは少しでもトール様のお役に立てるよう、がんばるだけです」
言葉の内容とはうらはらに、不安そうな表情をうかべるクレアであった




