第36話 冒険者活動2
「これが薬草だ」ドロシーが高さ10㎝ほどの草を指さす。
「よく形を覚えておけ。こうやってまばらに生えているが、群生することもある」
群生しているのを見つけられたらば楽なんだがな、そう簡単にはみつからないんだ、とドロシー。
「あと、やっかいなのが根ごと取らないといけないことだ。まあ、楽して稼ぐことはできないということさ」
ミリアムがスコップのようなものを取り出し、薬草の周りの土を掘り返す。
スザンナとエリーもスコップ(のようなもの)を取り出し収穫を応援。
「なるべく根を傷つけないでね~。根はそれほど張っていないけど~、少し時間がかかるよ~」
とミリアム。
おおよそ10分後、薬草を掘り出すことに成功。
「ほら、おまえたちの道具だ」
ドロシーがスコップをクレアとトールに一つずつ手渡した。
「いつもは3人で掘り出す。私は害獣や魔獣が出ないか見張りをしている」とドロシー。
「おまえたちは二人で掘り出せ。見張りは引き受けた。掘り出すことに集中しろ」
「ありがとうございます」クレアとトールはスコップを受け取る。
「ちょっと、その薬草、見せてもらっていいですか」
「いいよ~」ミリアムが薬草をトールに手渡す。
「(これ、魔草だな。わずかながら魔力を感じる)」トールが心の中でつぶやいた後、ミリアムに尋ねる。
「この薬草で薬を作るのですか」
「ポーションだよ~」とミリアムが短く応じる。
「なるほど」とトールはミリアムに薬草を返す。
「じゃあ、探してみます。姉上、行きましょう」
「あまり離れるなよ」とドロシー。まあ、そんな簡単に見つかるものではないがな、と内心で付け加える。
「(魔力探知---。う~ん、魔力量が少ないから引っかからないか。範囲を絞ってっと、お、発見)」
姉上、こっちですよとトールが歩き出す。クレアも薬草を視認する。
「姉上、ちょっと待ってください」
スコップで土を掘り起こそうとしたクレアをトールは押しとどめ、
「(穴掘り!)」初級土魔法の「穴掘り」を無詠唱で発動。
薬草の周りの土を掘り、30秒ほどで薬草を収穫する。
「おい、根ごと掘り出せと言ったはず---根ごと取ってるな」
あまりにも早い時間で収穫したクレアとトールを見て、根をつけずに収穫したと勘違いしたドロシー。
「---どうやった?」
「僕、穴を掘ることだけは得意なんです」
「---掘ることだけ、か?」
「はい!じゃあ、姉上、次にいきましょう。え~と、あ、あの辺にあります」
収穫した薬草を収納し、次の薬草を探すトール。クレアとドロシーは後をついて行く。
「はい、発見。穴掘りっと、2本目ゲット。次行きましょう」
コツがわかったのか、今度の収穫に要した時間は10秒程度。
「---」あまりのことに、呆然とするドロシー。
「あの~」そんなドロシーにクレアが話しかける。
「わたし、トール様の後ろを歩いているだけなんですけど---」
「---知るか!」
1本目の薬草を収穫してからおおよそ30分後、ミリアムたち3人は3本目の薬草を収穫した。
「今日は調子がいいね!」
「うん、次に行こうか~」
次の薬草を探そうとしたミリアムたちにトールが声をかける。
「ミリアムお姉様、もうこのあたりには薬草はありませんよ」
「何言ってんの、この子は」とエリー。
「いや」とドロシー。
「おまえさんがそう言うのなら、もうないんだろう」
「え?」
「こいつら、取り尽くしやがった」
「何本?」
「30本、くらいか?」
「30!?」
一泊二日の活動で採取できる薬草は、調子が良い時で30本程度。
「32本です!」にこにこしながら言うトール。
「さあ、ショバかえましょう」
「今日はこれで終了だ」とドロシー。
「ちょっと、気持ちの整理がつかない」
宿泊の場所に帰り着いた一行。
「いや~。今日は勉強になりました。ありがとうございました!」とトール。
「お礼、というわけではないんですが、今日の晩ご飯、僕たちが用意します」
「お礼をするのはこっちのほうだが---荷物を持ってもらったりとか。え?人数分用意している?じゃ、せっかくだからごちそうになるか」
「はい!姉上、準備しましょう」
小屋の中に入っていくトールとクレア。
「本当に32本なの~?」ミリアムがドロシーに問いかける
「どうやったの~?」
「魔力探知、というらしい。薬草に含まれている魔力を探知して薬草を見つけるらしい」
「そんな魔法知らないな~」
「ああ、私も初めて聞いた。で、見つけた薬草を土魔術の『穴掘り』で掘り返す。あっという間だ」
「トールちゃんが?クレアちゃんが?」
「トールだ。クレアはトールの後を歩いているだけ、と本人も言っていた」
「準備できました!ちょっと早いけど夕食にしましょう」
小屋の中からクレアが呼ぶ声。
4人が小屋の中に入るとそこには---
「じゃあ、皆さんお座りください」
テーブルと椅子。椅子はちょうど6個。テーブルの上にはシチューの入ったスープ皿とパンがちょうど人数分。シチューは暖められたようで湯気がたっている。
「---」またもや固まる4人。
「おい、これって---」とドロシー。
「私が作ったんです。孤児院の厨房を借りて。お口にあうといいんですけど---」とクレア。
「姉上は料理が上手なんですよ」とトール。さあ、さめないうちに食べましょう。
「いや、そうじゃない。そういうことを聞いているじゃないが---まあ、いい。ごちそうになろう」
どこか吹っ切れた感のあるドロシーが席につく。
「いただきます」
「あ、おいしい」
「よかった---」
なごやかな夕食風景になった。




