第33話 冒険者ギルド
シバス辺境伯領都シバス冒険者ギルド。
辺境伯領の冒険者たちを束ねるこのギルドに一人の少女と一人の少年が姿を現した。
少女は緊張気味に、少年は何やら興味津々という感じで受付窓口に向かっていく。
「いらっしゃいませ。冒険者ギルドにようこそ。ご用件を伺います」
年若い受付嬢によるマニュアルどおりの問いかけに、少女が緊張気味のままこう答えた。
「冒険者登録をお願いします」と。
「冒険者登録ね。え~と、ご両親は---」
「いません」食い気味に答える少女。さらにぽつんとつぶやくよう「死にました」と続けた。
「あら、そうなの。ごめんなさいね」
受付嬢は大して悪びれた様子もなく言う。辺境領都シバス冒険者ギルドでは死は日常である。
「それでは、と。あなた、年はいくつなの」
見た目10代前半。正式に冒険者として登録できる15歳にはなっていないと思われる。
「15歳です」
「15歳ね。ふ~ん---」
服装から判断するに、おそらくは貴族の子弟。庶民語で話しているが、どこか貴族語のなまりがある。
「(貴族案件か---あまり関わりたくないな)」
受付嬢は上司に判断を仰ごうかと考えたが、それも面倒だなあ、と思った。
後でアリバイ作りの報告書を上げておけばいいか。
「じゃあ、名前は?クレア?クレアね。年は15歳っと。出身は?アゼル伯領?また随分と遠いとこだねえ。領都出身?え、違う?開拓村?村の名前は?ない?ないの。へえ~」
受付嬢は、帳面に聞き取った内容を記載し、木の札をクレアに手渡した。
そこには「151」と番号のみ記載されている。
「はい、これがあなたの冒険者証。なくさないでね。依頼はそこのボードに張り出しているから。好きな依頼を受けてね」
はい、これで終了。といった様子の受付嬢。
「あの---この子なんですけど」
「あら、そんな小さな子は冒険者登録はできないわ」
「冒険者補助者の登録ができると聞いているんですが」
と少年。なぜかニコニコしながら受付嬢に問いかける。
「補助者?ああ、補助者登録ね。わかったわ。名前と年齢を教えて」
「トール、10歳です」
「トール、10歳ね。はい、冒険者証。補助者で登録しているからね」
受付嬢は木の札をトールに渡した。番号は152番。
「これで手続きはおしまいよ。じゃあ、次の方どうぞ---」
「随分とご丁寧な対応じゃないか、アンナ」
トールたちのやりとりを聞いていたと思われる冒険者然とした女性が受付嬢に話しかける。
長身、年の頃は20代前半か。薄く微笑んでいるが目は全く笑っていない。
受付嬢は一瞬しまったという表情をしたが、すぐにその表情を笑顔で隠す。
「いらっしゃい、ドロシーさん。ご用件は」
「ご用件は、じゃないだろう。新人に対する冒険者ギルドの説明は全く無しかい?そもそも、この娘の年で---」
「あ、お姉さん、えーとドロシーさん。大丈夫です。僕の母親がここの冒険者をやっていたので大体のことはわかっていますから。受付のお姉さん、アンナさんもお忙しいでしょうから、お手を煩わせることはないですよ。じゃあ。これで失礼します」
姉上、あちらの依頼票を確認してみましょう、と言いながらその場を離れようとするトール。
「ちょっと待ちな」とドロシー。
「あんた、クレアっていったっけ。クレアは冒険者の仕事をするのは初めてかい?」
「はい」
「お試しでうちらのパーティ『百合の乙女』に参加してみないか」
あちゃ~、とドロシーの後ろから声がした。
そこには三人の女性冒険者。三人ともドロシーよりも一回り小柄。年も少し若い感じか。
「やっぱり、ドロシーの悪い癖がでたよ」
「アンナさんに~文句を言った時から~こうなるとわかっていたよ~」
「その娘をパーティに入れるのは反対です!今だって稼ぎがぎりぎりなのに、そんな足手まといを---」
三人の中で最年少とおぼしき娘が激しく主張する。
「あのなあ、エリー」と三人の中で最年長とおぼしき娘が言う。
「おまえさんも足手まといだったんだ、まあ、今でも足手まといだけどな」
「そうね~。足手まといの娘をパーティに入れるのがドロシーのデフォだよね~」と残る一人がほんわかと言う。
「パーティに参加するとは言っていないのですが---」とクレア。
反対するメンバーがいるのであれば、参加しないほうがいいのではないか。
「いや、姉上、ここは是非とも参加させてもらいましょう」
とトール。母上から冒険者について聞いてはいるものの実際に経験するのは初めてのこと。
ベテランの方々について経験をするのが安心ですから。それにドロシーさんと
後のお二人は親切そうな方だし。
「そういうことなら---。では、弟も一緒であれば参加させていただきたいのですが」
「そんな小さい子を連れて行けるわけないでしょう!」と最年少のエリー。
「では縁がなかったということで---」
「待ちな」とドロシー。
「弟さんの面倒はおまえさんが見ること。あと、取り分は人数割だが弟さんの取り分はなし。それでいいかい?」
「はい、大丈夫です」とトールが答える。
「よろしくお願いします。ドロシーお姉様。あと---」
「お姉様---っていう柄じゃないけどな。こっちはミリアムとスザンナ。そしてエリー。女だけの4人パーティだ」
「ミリアムお姉様とスザンナお姉様ですね。よろしくお願いします。あと、エリーさんもよろしくお願いします」
「---なぜ、私だけお姉様ではないの---私だって君より年上だよ」
トールはにこにこしながらエリーの言葉をスルーする。
「じゃあ、明日、日の出前に北門集合。北門の場所はわかるね。薬草の採取をする。途中一泊するからそのつもりで準備すること。いいね」
「はい、わかりました」とクレア。
「宿は決まっているのかい、決まっていなければ紹介するよ」
「宿の名前だけ教えてください。少し寄るところがあるので---それ次第で」
「寄るとこ---どこだい?」
「孤児院---シバス孤児院です」




