第29話 ナオさん独白3
戦闘結果
・敵勢力全滅
・当方勢力 重症2名
魔法使いアリスの状態は、僧侶カヤパとリーダーアベルの回復魔法により重篤→重体→重症まで持ち直した。
僧侶カヤパの魔力は完全に枯渇、リーダーアベルの魔力も残り少なく、私の膝にはヒールを1回かけることしかできなかった。
何とか辺境都市までたどり着き、改めて回復魔法を受けるが---
アリスの片肺には深い傷が残ってしまった。今後のパーティ活動は予後次第であるが---
S級パーティを目指すパーティメンバーとしてやっていけるかというと、かなり難しいのではないかとのこと。
そして---
私の左膝は完全に壊れてしまった。
当面の間、絶対安静としてベットに寝ているアリスのところに私は足を引きずって歩み寄った。
「ああ、ナオか」
すまなかった、と私はアリスに言った。あなたのことを守るのが戦闘時の私の役割。この役割を果たすことができなかった。
「うん、まあ、しゃーない。あんたも体を張ってあたしのことを守ろうとしたんだ」
少しだけにやっと笑いアリスは続けて言った。
「ちょっと火力不足ではあったけどな」
ああ、本当にそのとおりだ。
「ところでナオ、あんた、恨んでないのかい」
恨む?誰を?何を?
「あたしと僧侶カヤパ。回復魔法あたしに優先したこと。だからあんたの膝が治らなかった」
そんなもん、命を優先するに決まっているだろう。まあ、カヤパのカバーが遅れたことについてはちょっと文句をいいたいところだが。
「あの時にカヤパと対峙していたのは手練れの---軍で言えば隊長クラスの傭兵くずれだったらしい。
カバーに入ろうとしたがそれを防がれてしまったんだとさ。あと---」
アリスが続けて言う。
「事務方はカヤパの能力を疑っている。S級パーティのヒーラーとしては魔力不足だと」
アリスを回復させるだけで、それも完全に回復させる前に魔力不足となったことが問題視されているらしい。
「カヤパはどうするんだろうなあ、二軍落ちを受け入れるのか、それともクランを離れるのか---冒険者稼業をやめて街のヒーラーになるかもしれないな。元A級パーティのヒーラーとなれば客には困らんだろう」
そういうあなたはどうするつもりだい。
「『暁の星』には居れないだろうな。二軍落ちか、クランを離れて別のパーティで冒険者を続けるか。いっそ足を洗ってどっかの貴族に嫁入りでもするか」
貴族に嫁入り?まあ、冗談としては面白いが。
「冗談じゃないぞ。私くらい魔力量があれば嫁入り先には困らないぞ」
魔力量は遺伝すると考えられている。魔力を持った女性が貴族の妾になるというのが聞かないわけではない。
「妾じゃない、嫁だ。私は、一応は貴族の娘だからな」
え?アリスはお貴族様だったのか?それにしては言葉使いが---
「わざとだよ。わけあって家を飛び出したからな。貴族の娘だってばれないようにしてたんだ」
私は貴族語を使うことはできますわよ、とアリスは流暢な貴族語で話す。
「私のことはさておいて、ナオ、あなたはこれからどうするおつもりですの」
何故かアリスは、引き続き貴族語を使って私に問いかける。
冒険者活動はもうできない。スカウトにとって足の不具合は致命的だ。
かといって、アリスのいない、そしてカヤパもいないパーティのために事務方の仕事を行うつもりもない。
いったん実家に帰るか---嫌だけど。
「そうですの、まあ、それがよろしいかと存じますわ。これから寂しくなりますわね、お互いに」
どうでもいいが、アリス、いつまで貴族語で話続けるんだ。違和感がありすぎてちょっと気持ち悪くなってきたぞ。
こうして私は冒険者稼業から足を洗った。
故郷に帰ったが---実家の商店は人手に渡っていた。
経営につまずき、たちの悪い筋から借金をしてしまったらしい。その後は---まあ、よくある話だ。
母親は開拓村で、追放された貴族子弟の世話をしているとのこと。
しかたなく私は開拓村に行った。
足を悪くした私を見た母親は何も言わずに私を受け入れてくれた。
そして---そこで、あの不思議な少年、トールの母となった。
第一章はこれで終了です。




