第24話 旅路3、そして初めての戦闘
それから2日後の朝、トールとナオさんはカバラの町の北門にいた。
「ローズ婆さん、世話になったね。小麦もこんなに早く手配してくれてありがとうね」
「ああ、これ以上ローリーに色目を使われたらかなわないからな」
見送りに来たのはローズ婆さんとローリー。
「ローズお婆様、ありがとうございました。それと、ローリーお姉ちゃん---」
トールはローリーをまっすぐな目で見つめて言う。
「絶対に迎えにくるからね、待っててね」
「お前はまだそういうことを言うのか!」
「いいから行くよ!」
ナオさんがトールの首っ玉をむんずと捕まえ、トールを引きずるようにして街を出る。
「愛しているよ、ローリーお姉ちゃん!」
トールはローリーの姿が見えなくなるまで、何度も振り向き、手を振りながら言い続けた。
「愛してるよ~!」
「さて、それじゃ帰りますか」
町の北門が遠ざかり、ローリーの姿が見えなくなるや否や、トールは何事もなかったかのようにスタスタと歩き出した。
「トール、お前ってやつは---」
ナオさんがあきれていう。
「お前さん、前の時に女の子に刺されただろう」
「いやだなあ、母上。女の子に刺されるなんて---」
急にトールは真顔になって言う。
「女の子に刺されたことはありません」
「ほう、じゃあ女の人に刺されたことがあるのかい」
「刺されたことはありません」
「刺されたことはないんだね。刺されかけたことはあるだろう」
「---はい」
「一度や二度ではないね」
「三回しかありません」
「三回もあるんかい」
いやあ、オリジナルで全くもてなかったから、つい、その反動で---と、訳の分からないことをつぶやきながら歩き続ける。
3時間ほど歩いたころ、道の両側に森がせまっている箇所にさしかかった。
突然、森の両側から数人ずつの人が現れる。
「ちっ---」
思わずナオさんが舌打ちをする。
「(気配を感じなかった---。完全に油断していたね。元B級スカウトの名が泣くよ)」
自嘲するナオさん。
「(どうする?後ろに逃げるか?それとも強行突破するか?)」
足は完治したとはいえ、筋力が完全にはもどっていない。逃げたとしても追いつかれる。
「(であれば、強行突破か?所詮相手は山賊。先手さえとればこのくらいの人数であれば---)」
賊は2人を囲むようにゆっくりと近づいてくる。
「(ツーマンルール!傭兵崩れか!?)」
賊は2人一組となり、さらに近づいてくる。
「(何とかしてこの子だけでも逃がさないと---いや、この子も戦力になるか?でも---)」
「トール、お前さん、バージンかい」
「はい、ピュアッピュアの童貞です!まだ精通も---」
「バカなこと言ってんじゃない!前の時に人を殺ったことがあるか聞いているんだよ」
「え~と、まあ、あります」
「何人!?」
「え?」
「何人やったんだ!」
「う~ん、一万人くらい?」
「は?」
戦だから仕方なかったんですよ。やりたくやったわけじゃないんです、とグダグダと言うのを遮る。
「まあ、いい。あいつらは賊だ。やるときにはためらうな!!」
「はい、わかりました」なぜかニコニコしながら応えるトール。一万人殺ったことを追求されなかったのがうれしいのか?
賊は8名。一個分隊の人員数。
「おい、女の方は生かしておけよ。後から用事があるからな」
賊はニヤニヤと笑いながら近づいてくる。
「ガキのほうは---おっ、結構美形じゃないか。こいつも生かしておけよ。高く売れるからな」
賊は一斉に剣を抜く。
「抵抗するなよ、痛い目にあいたくなければ---」
「前方勢力を敵対勢力と認定!」トールが賊の言葉を遮るように叫ぶ。
「さらに交戦基準クリア!これより敵対勢力を排除する!状況開始!!」
「(パン、パン)」
トールは指鉄砲を2時方向の賊2名に向ける。さらに1時方向の賊2名へ。
「(パン、パン)」
イメージは38口径の拳銃。魔術は無詠唱のストーンバレット。
「(パン、パン)」「(パン、パン)」
さらに11時方向、10時方向の賊へ。
ストーンバレットは、賊の眉間に穴を穿つ。賊は全て倒れ伏した。
「敵勢力排除を確認!状況終了!!」
この間、おおよそ5秒。
「これより残務処理に移る」
トールは8体の遺体を次々と「収納」する。
「母上、ちょっとそのへんに埋めてきます」
「ちょっと待ちな!」
あわててトールを呼び止めるナオさん。
「えっ、直ぐに終わりますよ。僕は穴を掘ることだけは得意だから---」
「そうじゃない!そうじゃなくて---」
完全に混乱しているナオさん。
「状況開始、状況終了---状況って一体なんなんだい」
混乱のあまり、本当にどーでもいいことを問いただすナオさん。
「軍隊じゃないから作戦って使えない、のかな?」
何故か、自信なさげに答えるトール。
「ああ、軍隊じゃないよ。あたしたちもあいつらも。何で軍隊じゃないと作戦って使えないんだい」
さらにどーでもいいことを問いただすナオさん。
「えーっと、憲法上の制約?」
「ケンポーって一体---もういい。わかったよ。いや、全然わからないけどあんたが規格外だということがわかったよ。早く捨ててきな」
トールはにっこりと笑い、こう叫んだ。
「トール、行きまあす!!」
土属性の中級魔術「重力軽減」をつかったトールはあっという間にナオさんの視界から消えていったのであった。
状況=訓練状況のことだそうです。




