20話 報告書6
1.報告日
バルト王歴8年8月15日
2.報告要旨
開拓村の飢饉回避について
・冷害による小麦収穫量の減少あり。
・しかしながら、じゃがいもの普及により飢饉は回避されたと判断する。
・トーマス家の食料事情も問題なし。
3.詳細
①小麦収穫量の減少について
トーマス氏ならびにナオ氏の見立てでは、収穫量は例年の6~7割程度である模様。原因は、冷夏によるものであることは間違いない。
②じゃがいもの普及について
・アゼル伯家から種芋が供与された模様。
・村長自らが率先してじゃがいもの作付けを実施、村人もこれに追随した結果として、小麦不作分を補うだけのじゃがいも収穫が可能となった。
・現状において、小麦とじゃがいもの作付け面積比はおおよそ5:5になっている模様。少々じゃがいも比率が高すぎないか、要注意。
・なお、じゃがいもは遠国の学者がアゼル伯家にもたらしたものとのこと。学者の性別は確かではないが、トーマス氏によれば女性である可能性はほぼないとのこと(従って、勇者様ご一行である可能性は著しく低い)。
③トーマス家の食料事情
・はなから冷害による不作を見込み、小麦ならびに肉類の備蓄を十分に行っていた(備蓄には「収納」が極めて有効である)。
・それに加えて、じゃがいもの供給があることから、食料事情は全く問題がない。
4.特記事項
先にも述べたとおり、じゃがいもに依存しすぎることについて、要注意。
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「ということは、じゃがいもが不作になるということか」
トーマスさんの質問にトールが応える。
「はい、連作障害です。同じ畑でじゃがいもを続けて作ると不作になります」
「まあ、小麦でも同じことは起こるからな。そうなっても不思議ではない。
で、このことを村の人には伝えないのか」
「私が言っても信用されないでしょう。まあ、義父上が言っても信用されないかと」
「それでどうする」
「母上、村の作付面積は—-小麦とじゃがいもは、どちらを多く作っていますか」
村を見て回ることができないトールがナオさんに問う。
「そうだね、見た感じでは小麦とじゃがいもは半々といったところだね」
「50%がじゃがいもか---ちょっとこれはまずいですね。他の村も同じような状態だと---大飢饉になります」
「ふむ」
「とりあえずの対策としては、私たち3人が飢えないだけの食料を確保することですね。まあ、連作障害によりじゃがいもが不作になるのは2~3年後だと思うので急ぐ話ではないのですが。あと、他の村がどのくらいじゃがいもの作付けをしているかにもよるのでしょうが」
「じゃあ、見に行くかい」とナオさん。
「トール、お前は他の村に行ったことがないだろう。まして街に行ったこともない。
この際だから、他の村の作付面積とやらを見て、大飢饉になりそうならば街で小麦を買うというのはどうだい。街がどんなもんかを知る機会にもなるし。あたしが連れてってやるよ。」
「それはダメだ」とトーマスさん。
「なぜだい、じいさん」
「私はおまえの祖父ではない、あえて言えば義父だ。」
またその話題かよ。
「おまえが街に行っている間、私の世話をすることができないではないか」
「たった10日かそこいらだろう、その間世話をしなくても---」
「契約だ」
「は?」
「おまえは私の世話をすることが契約になっている」
「何を言ってるんだい、家族じゃないか」
家族ではありません。
「家族であっても契約は契約だ」
あれ?トーマスさんは家族だと思っているのかな。
トールはにこにこと笑いながら、うん、うんとうなずいている。
家族だと思っているのがうれしいのか、契約履行必須と考える「理屈の鬼」トーマスさんの対応が予想どおりだったのがうれしいのか、あるいはその両方か。
「義父上、ご提案があります」
「私には君の話を聞く理由がない」
「じいさん、そんなことを言わずに話だけでも---」
「義父上に利があると思われる話をお持ちした次第です」
またこのやりとりかよ。
「ほう、利がある話か。利があるかどうかを決めるのは私だが---まあいい。話を聞こう」
「ありがとうございます」
「なぜ、礼を言う」
「話をきいていただけるということについての謝意を述べました」
「なるほど」
またこのやりとりだった。
「それでは本論に入ります。私が義父上に対価を払い、母上をお借りする」
「ふむ」
「民民契約なので、義父上と母上双方の合意があれば契約変更は可能です」
「なんかよくわかんないけど、あたしは合意するよ」とナオさん。
「ふむ、して対価とは?」
「これが対価だ!」
ハイヒール発動!!
「これは---問題がある」
「対価に不足があると?」
「逆だ、私の取り分が多すぎる。バランスが悪い」
またもや、このやりとりであった。




