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2度目の転生に関する報告書  作者: トール
第一章 開拓村編

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18/124

18話 トーマスさん独白3

ブルック商会応接室


「シバス次期辺境伯様、わざわざお越しいただき誠に恐縮でございます」

ブルック商会当主 ヨゼフが応接ソファに腰掛ける2人の客人に話しかける。

大番頭のヨシュアはヨゼフの後ろに立っている。


「お声をかけていただければ、こちらから出向きましたのに」

「貴殿がうちにこられると、いろいろとまずいことになる」

次期辺境伯殿が、こう応じた。

「現時点では、当家と貴商会とのつながりを隠しておきたいからな」

「左様ですか」

「時が惜しい。早速用件に入らせてもらう。当家が保有している小麦をタブリ伯爵家、あるいはイスファ子爵家に売却してもらいたい。

 貴商会の手数料は20%とし、売値は貴商会に任せる」

タブリ伯爵家は、辺境伯と対立している、もっとあからさまに言えば辺境伯に言いがかりをつけられている家だ。そして、イスファ子爵家はその寄子。小麦生産が盛んなところだ。


「20%とは---ずいぶんと当方に有利な条件ですな」

通常の手数料は10%かそれ以下だ。

「他に何か条件はございますでしょうか」

「そうだな---これは条件ではなくお願いになるが、貴商会が保有している小麦もできる限りタブリ伯爵家、あるいはイスファ子爵家に売却してほしい。あくまでもお願いだが」

「貴族様相手となると、少しむずかしいところが---」

「踏み倒されることを心配しているのであれば心配無用。その場合には、債権を当家で引き取らせてもらう」


「大変失礼ながら、発言をご許可いただきたく」

ヨシュア氏が話に参加する。次期辺境伯様はこれに鷹揚にうなずく。

「旦那様、この取引では当商会が一方的に利を得てしまいます。

 当商会の債権をお引き取りいただく際には、辺境伯家様がお持ちの債権をもって代金とさせていただくことがよろしいかと」

「ほう、債権のバーターということか。悪くない。で、どのような債権であればバーターをするというのだ?」

「もちろん、全ての債権で問題ありません。ただ、できましたらばアンタルヤ商会の債権であればうれしく存じます」


アンタルヤ商会はタブリ伯爵家の御用商人、寄子であるイスファ子爵家の商権も多く抱えている。

「なるほど、当家がタブリ伯爵家に影響力を持った暁には、御用商人の権利を貴商会が得るということか。食えない爺だな」

「大番頭を務めさせていただいておりますヨシュアと申します。タブリ伯爵家の御用商人など、当家の身ではもてあますばかり。イスファ子爵家の商売に少しでも関われれば幸いに思うところです」

次期辺境伯の表情がわずかに動いた。

「当家の狙いは察知しているということか」

辺境伯家の狙いはイスファ子爵家であるらしい。

「では、貴商会が行った今回の動きはヨシュア殿が考えたということか」

「いえいえ、私はただの番頭にすぎません。旦那様に助言するだけの役割でございます」

「そのように謙遜しつつ、暗に自らが主導したことを匂わせる。万一、当家から目をつけられた場合には、自らが矢面に立つための布石ということか。なかなかの忠臣だな」

「---」

「まあよい。いずれにしろ、債権バーターは当家にも利のある話。当主、異存はないか」

「もちろんでございます。早速契約書を作成させますので、しばしお待ちを」

ヨゼフに目で促され、ヨシュアはいったん退席して契約書の作成に向かった。


「それにしても」

しばらくの沈黙の後、次期辺境伯がこう切り出した。

「貴商会には良い耳をもっているものがいるようだな」

「---」

「それとも良い目を持っているのか」

次期辺境伯は、ブルック商会当主の表情が、わずかに、ほんのわずかに動くことを見逃さなかった。

「目か---」

「---何のことやら」

「そういえば、貴殿の跡取りは神童であるとの噂があったそうだな」

「---そのような大それたことはありません」

「で、これからもその目を使い続けていくのか」

「いえ、このような博打は、少なくとも私の代ではこれっきりです。

 今回は辺境伯様の利害と幸い一致しましたが、仮に利害が反した場合は---ぞっとします」

「まあ、博打を続けるのが危険なことは間違いない。だが、目があるとどうしても使ってしまうだろう」

「いえ、今後は使いません」

「つぶすのか、目を」

「いえ、当商会を離れて、どこかでのんびりと暮らさせようかと。それが、当人の幸福になるかと」


・・・・・・・・・・・・・・


とある晩、私は父の執務室に呼び出された。

そこにいたのは、父、大番頭のヨシュア氏、そして私の弟のアベルの3名。

「トーマス、お前には田舎でのんびりと暮らしてもらおうかと思っている」

承知した。

「いいのか?」

私にはわかっている。私は商会の跡を継ぐのにふさわしくない。

私の言うことを他の者が理解することが相当難しいようだ。私はあたりまえのことを言っているのに、それが他の者にはあたりまえではないようだ。

唯一の理解者はヨシュア氏であるが、ヨシュア氏は高齢だ。多分、私が継ぐころには引退をしているであろう。

であれば、弟のアベルが商会を継ぐのが当然。私は食えるだけの、そして、本が買えるだけの金を受け取り、田舎に引きこもるべきだ。というか、引きこもりたい。

「本か---結構な金が必要だな」

父が苦笑いをしながらこう言った。

「わかった。今回の商いはトーマス、お前の手柄だ。それなりの金銭を渡そう。そして、アベル、兄の恩義を忘れるでないぞ」


かくして私は開拓村で、少なからぬ金をもって暮らすこととなった。


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