第121話 ユニア・コイアムの証言
第四軍団大尉 ユニア・コイアムの証言
書簡を送ってから二日後、シバス軍はタブリに到着しました。そして、今後のことを協議するために、トール将軍がタブリに入城したのです。
トール将軍が引き連れていたのは、二個小隊でした。信じられますか、わずか二個小隊ですよ。
私たちロマ軍15,000の中に、たったの50人ほどで入城したのですよ。
会議には、私も出席させていただきました。本来ならば、私のような下級将校が同席できるはずはありません。
しかし、シバス側には女性である『炎の聖女』クレア様と『風の聖女』ティナ様がいらっしゃいました。当方からも女性士官を同席させるべきだと、私からハラン将軍にお願いし、無理を言って出席させていただいたのです。
会議出席者は、シバス側がトール将軍、クレア様、ティナ様の三名。
当方はハラン将軍、タカード大佐、私の三名でした。
まず、トール将軍から、当方が申し入れていた事項について回答がありました。
タブリの無防備都市宣言、ロマ帝国第四軍団ならびにタブリ守備隊の降伏、
タブリに対する食糧援助について受け入れるとのこと。
その上で、トール将軍からシバスが援助すべき食糧の量ならびにタイミングについての問い合わせがありました。
これに対してハラン将軍から、現在のタブリの人員数について
・第四軍団 10,000
・タブリ守備隊 5,000
・負傷兵ならびに非戦闘員負傷者 5,000
であること、さらにはイズミールから戻ってきた兵ならびに非戦闘員が20,000おり、このイズミールからの帰還者が増加中である旨を伝えました。
そう、イズミールは統率が取れていないロマ軍帰還兵の大量流入のため無法状態に陥っており、これを嫌った兵ならびに住民がタブリに引き返す者が大量に発生した、いや、発生している状況にあったのです。
ハラン将軍は、そのような状況を踏まえ、タブリの備蓄食糧はほぼ尽きかけており、一刻も早く大量の食糧援助が必要であると回答しました。
トール将軍は可及的速やかに食糧援助を行うことを表明した上で、ハラン将軍にこう言いました。
「このような状況の中、軍の指揮命令系統を維持しているあなた方のことを、私は尊敬する」と。
それを聞いた時、私は泣き出してしまいました。
この時の感情は一言では言い表せません。
食糧が尽きる不安、イズミールからの帰還兵が暴動を起こすかもしれない不安、ロマ軍内におけるロジ部隊への不当な評価。胸の内に押し殺していたそうしたものが、トール将軍の一言で一気に爆発してしまったのだと思います。
泣き出した私を見たトール将軍は、ニコッと笑いこのように言いました。
「ハラン将軍、あなたは良い部下をお持ちのようだ」
もう、ダメでした。私は号泣してしまいました。
しばらくした後に、トール将軍はハラン将軍にお願いしたいことがあると言いました。
イズミールまでの糧食輸送をお願いしたい。ロジ部隊の本領を発揮してほしい、と。
信じられますか?タブリに対する援助だけでなく、敵国の領土であるイズミールの援助まで申し入れてくれたのです。
私にその任務をやらせてください、と思わず叫んでしまいました。
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「コイアムちゃん、完全にトール将軍に調略されてしまったな」とタカード大佐。
「ああ、コイアム君はまだ若いから仕方ないか。トール将軍がどのような意図であのような提案をしたのか、考えようともしなかったようだな」とハラン将軍。
「コイアムちゃんだけじゃないだろうな。ロマ軍の中に親シバス派が爆誕するだろう」
「ああ、トール将軍だけじゃない。『炎の聖女』クレア殿と『氷の聖女』ユメ殿の影響もある。
親シバス派が成立するのは避けようがないか。ただなあ、コイアム君に関しては別の不安要素がある」
「それはなんだい?」
「前にも言っただろう、僕はトール将軍のことを調べていたんだ。あの人は---女癖が悪いぞ」
「本当か、あんなにきれいな嫁さんが三人もいるのに」
「ああ、間違いない。コイアム君が毒牙にかからないか心配だ」
「---ハランちゃん、もしやコイアムちゃんのことを」
「なっ、馬鹿なことを!僕はだな、あくまでも部下であるコイアム君のことを心配してだな」
「あっ、そうなの。そりゃよかった。俺はコイアムちゃんのことが好きだがな。女性として」
「---」
「ちょっと年齢差はあるが俺は独身だ。何の問題もないはずだ。ここは一つハランちゃんに仲を取り持っていただこうかな」
「---前言撤回だ。僕も独身だ」




