第12話 開拓村5
サブローの父ジローは、村長宅の座敷で村長と向かい合って座っていた。
今日は庭先ではなく、座敷にあげられている。
「さて、ジローの息子ジローよ。呼び出したのは他でもない。冷害のことだ」
バルト王歴7年8月、開拓村は冷夏に見舞われていた。
「いや、まだ冷害になるとは---」
「常より夏が涼しく、麦の育ちが悪いのはジローもわかっているだろう。
確かにこれから天候が好転するかもしれないが、冷害になる可能性は高い」
「---」
「私は村長として、冷害に備える必要がある。」
「---」
「村の衆の目もある。一族だからと言って村の掟を反故にすることはできん。それはジローもわかってくれるな」
「---はい」
「それではどちらを選ぶ、ジローかサブローか」
村長は口減らしの対象を次男にするのか三男にするのかを迫った。
「---サブローには、家から出て行ってもらいます」
「わかった。で、いつ出て行ってもらう」
「早いうちがいいかと---明日の朝にでも」
「それでは明日朝に私がジローの家を訪ねよう。サブローを村はずれまで見送ろう」
その日の夕刻、サブローの家。
サブローの父、ジローは家族全員に話を切り出した。
「サブロー、お前に話さねばならんことがある」
きたな、とサブローは思った。サブローは今日、父が村長に呼び出されたことを知っていた。
「サブロー、お前は村の掟のことを知っているか」
「はい、口減らしのことですね。今日、村長から呼び出されたのは---」
「---サブロー、すまんがお前を食わせることができなくなった。」
「はい」
「明日、朝飯を食った後に村から出て行ってもらう」
「はい」
「3日分の食い物を渡す。お前ならばそれでカバラの町までたどり着くことができるはずだ」
開拓村からカバラの町まで、大人の足で3日かかる。7才のサブローには
厳しいが、これが提供できる食料の限界なのだろうか。
「親父、そんなに食い物をわたすことはないだろう」
今まで無関心でいたようなそぶりであった長兄のコタローが突然のように父親にくってかかってきた。
「無駄になるに決まっている。どうせ助かりはしない---」
「黙れ!」「お黙りなさい!」
「ちっ、わかったよ」
常になく語気の荒い父母の言葉に一瞬おびえたような表情を浮かべたコタロー。
その後にふてくされたように言い放ち、そっぽを向いた。
「サブロー、わかったな」
「わかりました」サブローが答える。
「あと、父さん---食い物を用意してくれてありがとう」
「いや---本当にすまん」
まさか礼を言われると思わなかった父親のジローはそういうと目線をそらした。
いたたまれない雰囲気に、皆、無言となった。




