第117話 第三次アフラ会戦8ー城壁再びー
城壁にロマ軍旗を掲げたのは第二軍団であった。
15日夜、16日夜とも魔狼による攻撃を受けなかった第二軍団は夜を徹して山中を行進、17日未明にアフラ平原に進出。
城壁のシバス軍を背後から攻撃すべく侵攻したが---
「もぬけの殻だった、ということか」
「はい、元帥殿。城壁近辺に人影はありません。近隣にも敵影なしです」
「了解した。敵はイスファ方面に移動したと思われる。 第二軍団での追撃は---難しいか」
「残念ながら---我が軍団は3日間不眠不休です。夜営はおろか大休止もろくにとっていません。せめて本日いっぱいは休ませなければ、兵がもちません」
「わかった。第二軍団は本日は休息、明朝にシバス方面に向け進軍せよ。
第三軍団もおっつけこちらに到着するだろう。第二軍団と同様とする。
第一軍団を先行させる。第一軍団は至急シバスに向けて出発せよ」
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ロマ帝国軍第一軍団第一師団第一連隊第一大隊第一中隊、通称マダリウス中隊。
この部隊が遠征軍の先頭を進んでいた。
「前方に村落を発見、ナリチク村です」
アフラ平原に点在する村落の一つ、ナリチク村を、マダリウス中隊は見つけた。
おおよそ200人規模の農村、魔獣対応なのか村は柵で囲われている。
「シバス軍がいるとは思えんが念のためだ。第二・第三・第四小隊は村を包囲、包囲完了後、第一小隊は村に突入せよ」
「中隊長殿、村にシバス軍なし。村人もいません」
「了解。糧食は?」
「今、精査させていますが、糧食もない模様です。それどころか家畜までいません。ご覧のとおり畑にも食い物になるようなものはありません。全て引き抜かれています」
「徹底しているな、シバス軍は。我々に糧食を与えないつもりか。
まあ、いい。飲料水を補給できるだけでも良しとしよう」
「それが---全ての井戸の前に看板があり、『毒入り危険、飲んだら死ぬで』と書かれています」
「---本当に毒が入っているのか」
「捕虜や村人がいれば確かめるところなのですが---さすがに兵に飲めと命じることはできず---見た目や匂いは全く問題ないのですが」
「---潰せ」
「は?」
「全ての井戸を潰せ。敵は異端者だ、井戸に毒を入れかねない。
毒が入っている可能性がある以上、兵に井戸水を飲ませるべきではない」
「ですが、何も潰すまでのことは---」
「馬鹿者!井戸をこのまま放置したならば、命令に反して井戸水を飲む兵が出てくるではないか!命令だ、第一小隊は全ての井戸を潰せ!」
「---了解しました」
「本当にひどいことをしやがる」
古参の兵がつぶやくように言った。
「井戸に毒を入れた、ってやつか」同僚の兵が応じる。
「いや、井戸に毒は入っていねえよ。本当に毒を入れたのならば、わざわざ『毒入り危険』なんて看板を掲げない。俺たちに毒入り水を飲ませればいいだけだからな」
「それは---」
「俺は農村の出身だ。井戸のありがたさは身にしみてわかっている。井戸が使えなくなった時の大変さもな。それを、全ての井戸を潰すなんて---」
「だが、奴らは異端者だっていうじゃないか」
「だからと言って、食糧を家捜ししたり井戸を潰したりしていいのか。
それに、神はタブリに向けて星を落としたのだろう。なら、異端なのは俺たちのほうじゃ---」
「お、おい!めったなことを言うな!小隊長や分隊長に聞かれたらばどうなるか、わかっているのか!」
「あ、ああ、すまない。今の話は聞かなかったことにしてくれ。だがなあ---」
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5月19日 10:00
ロマ帝国第一軍団はアフラ平原イスファ側狭隘地に到着。
そこでロマ軍が見たのは---
「また---城壁か」
5月19日早朝時点での帝国軍残食糧 約5日分




