第113話 第三次アフラ会戦4-兵站の壊滅-
「おう、ハランちゃん、生きていたか」
「ああ、タカード君も無事でなによりだ」
タブリ中心部は壊滅的な被害を受けていたが、軍そのものはまだ動けた。
次の隕石はタブリ中心部を直撃すると予想したハランは、兵を可能な限り分散、自らも街外れにある石造りの建物に移動し、そこを第四軍団の臨時本部とした。
また、タカードは中心部から逆方向の街外れに移動、守備隊臨時本部を設置。
その結果、軍の被害は街全体の被害に比べて小さく、指揮命令系統も保たれていた。
「タカード君、君の部隊には住民対応を行ってもらいたい。住民の救出、避難所の開設、住民の街からの脱出援助だ。
すまないが守備隊の糧食の一部を住民に供出してほしい。その分は後でこちらが補填する。
いいか、兵に過重な負担をかけるなよ。あくまでも『軍はみなさんを見捨てていませんよ』というメッセージが、住民に伝わればそれで十分だ」
「わかった。ハランちゃんのほうは?」
「食糧の確保だ。まあ、発掘といってもいいかもしれないが、それを行う。
食料庫群は全て被害を受けているようだが、中にある食糧が全部ダメになったとは限らない。少しでも食糧を確保しておきたい」
「ハランちゃん、遠征軍への補給はどの程度できたんだい?」
「ああ、昨夜の隕石落下前に補給隊を出発させることができたのが大きい。
僕の計算だと10日分の食糧を送り出すことができたはずだ。それ以前に遠征軍が保有していた食糧が5日分。合計15日分になる」
「タブリからイスファまで馬車で5日。遠征軍が大軍なだけに脚が遅いとはいえ10日もあればイスファまで到達できるだろう。補給は十分だな」
「いや、敵は死に物狂いで補給線を断ちに来るだろう。街から出しただけでは補給とは言えない。実際にモノを届けるまでがロジの仕事だ。僕の部下たちが上手くやってくれればいいのだが」
「君の部下ならば大丈夫だろう」
「そうだといいんだがな」
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「第四軍団ユニア・コイアムです。補給物資の輸送任務中です」
「ご苦労、大尉。第三軍団アキロ・ウキニウスだ。物資はここで受け取る」
コイアム大尉はウキニウスと名乗る男の階級章を見る。階級は大佐。
「大佐殿、小官は第一軍団までの輸送を命じられております」
「ああ、第一軍団は間もなく戦闘態勢に入る。君のようなお嬢ちゃんをそんなところまで行かせるわけにはいかない」
お嬢ちゃん、と言われた瞬間、コイアム大尉のこめかみがわずかに動いた。それでも彼女は表情を崩さず、笑顔で応じた。
「ご配慮ありがとうございます。ですが、任務ですので」
「大尉、君は階級章が読めないのかね」
「大佐殿、直属の上官からの命令ですので」
斜め上からの命令など受諾するわけがないだろうが、とばかりに大佐を睨む。
ただし、その笑顔は崩さない。
「ああ、元帥からの命令だ。第三軍団はここで物資を受け取り各部隊に輸送、
第四軍団の部隊はタブリに戻り復旧作業を行えとな。何なら命令書を見せようか」
「お願いします」
舌打ちをひとつ残し、大佐は書面を大尉に渡した。
大尉は書面を確認した。命令書は正式なもので内容も大佐が言っていることに間違いがない。
「前に荷物を届けにきたやつも書面を確認しやがった。まったく、輜重部隊は融通がきかないな」
「大変失礼を致しました、大佐殿。それでは、この受取書にサインをお願いします。
あ、申し訳ありませんが所属と階級もお願いします」
大佐は再び舌打ちした後にサイン、大尉に受取書を手渡す。
「それではこれで失礼します---が、物資をここに集結させるおつもりですか」
「何だ?お前も物資を分散しろとか言うのか」
「はい、物資を集結させすぎると敵に狙われます、適度に分散させないと」
「分散すれば、その分警備が薄くなる上に輸送をする際に非効率ではないか。
輜重部隊はそのくらいのこともわからんのか」
「平時であればそれが正しいのですが、今は---」
「大尉、俺は君と議論するつもりはない。物資はこちらで受け取った。お引き取り願おう。
そもそも、たかが輜重部隊が我々に意見するなどありえん話だ」
「---失礼します」
軍上層部は、いや上層部に限らず軍の大半は、ロジのことを全くわかっていない。わかっていないうえに、気にかけようともしない。上官のハラン少将がいつも漏らしていた愚痴を、大尉はその日、骨身にしみて理解した。
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5月13日 日没後
また、星が落ちた。
落下地点は、アフラ平原入口近辺の帝国遠征軍物資集結所。
そこで保管されていた物資は、ほぼ全損した。




