第112話 第三次アフラ会戦3-タブリの死-
「今回の隕石落下による街の被害はなし。前回よりも街から遠い地点に落下した模様」
「住民がかなり動揺しています。各門に街から脱出しようとしている住民が押しかけています」
ハラン少将とタカード大佐の元に、被害状況が集まってくる。
「了解だ。どうする、ハランちゃん」
「北門を除く各門は全て開放する。暴徒化する恐れがある住民を抱え込むよりは逃がしたほうが楽だ。北門は通すな。補給業務に支障が出る」
「わかった。副官!直ちに各部隊に命令を伝達しろ。北門を除く全ての門を開放。各門はノーチェックでの通行を可とする。門で人を滞留させるな。パニックになるぞ」
「お、わかっているね。タカード君。西門の避難所はそのまま。予定通り朝食の炊き出しを行う。軍駐留地ならびに行政機関の警戒態勢もそのまま。ただなあ、ちょっと解せないことがあるんだ」
「どういうことだ?」
「二度の隕石落下がタブリにあった。これは偶然である可能性は低い。
従って、何らかの方法による敵の攻撃であると考えるべきであろう。
ただ、敵の攻撃であったとしたら、何故、タブリに直撃させないのか、
そこがわからない」
「ということは、やはり単なる隕石落下ということなのか」
「そんなことはないと思うんだよなあ。なあ、タカード君。もし敵の攻撃であったとして、敵攻撃がタブリを直撃しない理由が何か思いつくか?」
「そりゃまあ、普通に考えれば住民に被害を出さないためにわざと外しているんだろう」
「---やはりそれか」
「おいおい、ハランちゃん、しっかりしてくれよ」
「いや、僕なりにトール将軍のことを調べていたのだが、あの人の性格はえげつないぞ。必要であれば大量虐殺をためらわないはずだ」
「そんなもんかねえ」
「よし。ここはタカード君の意見を取り入れて、敵は住民の被害を極力回避するためにタブリへの直撃弾を避けたものと仮定しよう。となると、敵の狙いは何だ?
住民をパニックに陥れ街を混乱させ、遠征軍への補給に支障を出すことだ」
「まあ、妥当な判断だろうな」
「幸いなことに住民の暴徒化は防いでいる。本日午後から遠征軍への輸送業務を再開しよう」
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「次は当てます」
アフラ平原入り口の狭隘地に展開しているシバス軍陣営で、幕僚に対してトールが言った。
『収納』できる最大限の重量は10t。トールは10tの岩を『収納』し、タブリの街の上空へ。
ティナの風魔法『エアシールド』を使い、自らの身を空気の膜で覆う。
そこから『重力反転』を最大限に使い上空100kmの宇宙空間へ。
そこから岩を落下させることにより、隕石が落下した時と同様の被害をもたらす。
「二度目の攻撃後、しばらく上空からタブリを偵察していたのですが、住民は 秩序を保ったまま。期待していた暴徒化は起きていません。このままでは侵攻軍への補給が再開されてしまいます。住民に被害が出るのは残念ですが、次は当てます。まあ、一部住民がシバスからの離脱を始めていますので、それでよしとしましょう」
「さすがのトールも住民---非戦闘員に被害がでるのは避けたかったのか」
「当然です。住民が死亡すれば、その分だけ食糧の消費がなくなるじゃないですか」
「---」
「ロマ軍に対しても同様です。なるべく殺さない。殺さないで食糧を消費させる。今回の戦いは、如何にして早く敵の補給を断つかということですから」
「---トールが人道上の配慮をしたと思った俺がバカだった」
「それはそれとして、タブリのロマ駐留軍には相当優秀な指揮官がいるみたいですね。星が落ちるという噂を蒔いておいたところに隕石が二発も落下したのだから、住民はパニックに陥って暴徒化すると思ったのですが。
タブリ守備隊長はヒュジス・タカード大佐ですか。
顧問殿、この人物のことをご存じですか」
「いいえ、さすがに佐官級までは把握できていません。
ですが、今、タブリに駐留しているロマ軍の最高位者は、兵站を担っているテオドール・ハラン少将だと思います。
兵站部隊で、しかも30歳台半ばでありながら将官となったのは極めて異例、というかロマ軍始まって以来かもしれません。相当優秀なはずです。ハラン少将が守備隊を把握している可能性があります」
「---守備部隊と攻撃部隊は不仲であるのが一般的だ。守備部隊長と攻撃部隊長が不仲のせいで、要塞が陥落したという例があったと記憶している。確か、イゼルロ---いや、何でも無い。
相当優秀なロジの専門家で、不仲なはずの守備部隊を掌握できるほどの人望がある、となると極めつきに厄介な相手だな」
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5月12日 日没後
三個目の星がタブリを直撃した。
直撃を受けた地点の建物は消滅。跡には直径50mほどのクレータがあった。
城内全域において木造建物はほぼ全壊。石造建物も全壊、もしくは半壊。
さらに火災が複数箇所で発生。
都市としてのタブリは、事実上「死亡」した。




