第111話 第三次アフラ会戦2
王歴34年(帝国歴1195年)5月11日18:30 日没直後
タブリ北方20km。
そこではロマ帝国シバス遠征軍幕僚団が夜営を行っていた。
夕食は既に終え、翌日払暁前の出発に備えて眠りにつこうかという時に、それは起きた。
閃光。
空を見上げるとそこには火球。
そして雷のような音。
「タブリに---星が落ちたのか?」
幕僚の誰かのつぶやき声。いや、つぶやきにしてはいささか大きい声だったか。
「伝令!第三軍団に命令を伝えよ。大至急タブリに偵察隊を送り、状況を報告させろ。さらに各軍団にも伝令を走らせろ。命令があるまでその場に待機。流言飛語を一切許すな。とにかく兵の動揺を抑えよ!」
元帥の命令に幕僚たちは慌ただしく動き始めた。
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同日 21:00
シバス遠征軍幕僚団野営地
「元帥、伝令です!第四軍団からです!」
「至急通せ!」
しばらくした後、伝令兵が入幕した。疲労の色は隠せないものの至って冷静な様子だ。
「報告せよ!」
「はっ、第四軍団長テオドール・ハラン少将ならびにタブリ守備隊長ヒュジス・タカード大佐からの報告になります。
・タブリの西方数キロの場所に隕石らしきものが落下した模様
・一部建物に損壊が生じたものの主要建物は無事
・軍人員ならびに物資は無事もしくは極めて軽微な損害に止まる
・タブリ住民が暴徒化する可能性あり
この対応を行うため物資補給計画に遅延が生じる可能性あり
なお、第四軍団ならびにタブリ守備隊は、シバス遠征軍への補給を最優先で取り組む所存である。
以上です」
「ご苦労。伝令兵はハラン少将ならびにタカード大佐に以下を伝えよ。
・迅速な報告、感謝する。
・シバス遠征軍は予定どおりシバスへの侵攻を行う。
・第四軍団ならびにタブリ守備隊はシバス遠征軍への補給を最優先で取り組むこと。
いいか、伝令兵。少将と大佐に必ず伝えよ。タブリ住民がどうなっても構わん。シバス遠征軍への補給だけは絶やすなとな」
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5月12日0:00
第四軍団宿舎
「以上が元帥からの伝言となります」
「ご苦労様。確かに伝言は受け取りました。下がって休んでください。
また明朝に伝令をお願いすることになると思いますのでよろしくお願いします」
「はっ、失礼します」
伝令兵が離れたことを確認すると、第四軍団長ハラン少将はタブリ守備隊長タカード大佐に愚痴をこぼした。
「あの元帥、少しはロジのことがわかっていると思ったが、そうでもないな。
そもそも住民が暴徒化したらば補給どころの騒ぎではなくなることぐらい 想像できるだろうに」
「ハランちゃん、そう言うなって。ロジ部隊の経験をしていない奴らはそんなもんだって」
ハラン少将とタカード大佐は同期入隊。入隊当初、2人は同じロジ部隊に配属された。
頭脳明晰であるが対人関係が苦手なハランと、頭脳は人並みだが対人関係、特に宴会を通じたコミュニケーション能力が抜群なタカードは妙に馬が合い、しばしばペアとなり業務を遂行していた。
『昼のハラン、夜のタカード』と言われ、当時の上司からは「おまえら二人を足して2で割ると、ちょうどいい士官ができあがるのだがなあ」とよく言われたものだった。
その後、ハランは引き続きロジ部隊に配置され、タカードは異動により各地の守備隊を転々としていた。
なお、ハランが少将に昇進した後、タカードが「ハラン少将殿」と言ったところ「気持ちが悪くなるから、いままでどおりの呼び方をしてくれ」と懇願されたため、入隊当初からの呼び方をしている。ちなみにハランはタカードを『タカードくん』と呼んでいる。
「で、どうする?」
「計画に変更はない。
最優先課題は住民が暴徒化するのを防ぐことだ。
西地区の避難所は引続き運営、夜食炊き出しに続き朝食の炊き出しを行う。
軍の駐留地ならびに行政機関は灯りを灯し厳重警戒のまま。軍が健全であることを住民に知らしめる。
遠征軍への補給部隊派遣は明日午前中は中止。軍が街から出ると住民は軍が逃げ出したと勘違いする可能性があるからな。住民が落ち着くのを待って派遣を再開する。」
「いいのか?元帥は遠征軍への補給を最優先にしろとの命令だが」
「この方法こそ、結果的には遠征軍への補給を最優先にすることになる。タカード君、僕の兵を使って街の秩序を維持してくれ」
「すまない」
「こちらこそ軍の指揮を任せてしまってすまない。ただ、僕が考えて君が実行する。それが一番効率的なやり方だ。昔からな」
「わかった。指揮は任せろ」
「あと、敵が何かを仕掛けてくるとしたならば払暁だ。特に払暁時は警戒を強めてくれ」
「了解だ」
5月12日4:00
タブリに、二つ目の星が落ちた。
大変申し訳ありません。
・諸般の事情(う~む、便利な言葉だ)により、6:50投稿は行わずに14:50に5話分の投稿を
させていただきます。
・126話の投稿を予定していましたが、諸般の事情(短い話をマージしたのです)により124話が最終話になります。
最期までおつきあいいただければ幸いに存じます。




