第104話 論文集(第二次アフラ会戦)
かくして第二次アフラ防衛戦(帝国側名称:第二次アフラ会戦)は終了した。
双方の被害状況の概略は、以下のとおりである。
・帝国軍(除くタブリ伯爵軍)
総兵力 15,000
死傷者/行方不明者 6,000
*総司令官ウイリアム・カリー大将ならびに副司令官ルシアン・タナック少将戦死
・帝国軍(タブリ伯爵軍)
総兵力 5,000
死傷者/行方不明者 2,000
*総司令官タヒテ・タブリン伯爵戦死
・イスタン・イスファ軍
総兵力 4,000
死者 50
*負傷者は衛生隊の回復魔術により完全治療済みであるため、損害数には含めない。
帝国軍は、タブリ伯爵軍を含めてイスタン・イスファ軍の五倍の兵力をそろえながら、総司令官を含む多数の死傷者を出して撤退した。結果として、本会戦は帝国軍の惨敗に終わった。
この帝国軍惨敗について、既存研究等では以下について論じられている。
①イスタン・イスファ軍の銃器使用
②イスタン・イスファ軍の上空偵察による敵状況把握
③イスタン・イスファ軍の魔力式トランシーバー利用による指揮命令の正確化・迅速化
④イスタン・イスファ軍ヘリボーン攻撃による帝国軍指揮命令系統の断絶
⑤タブリ伯爵軍という帝国軍における不安定要素の存在
⑥帝国軍左翼軍の撤退行動
これら項目については既存研究等により十分に論議がされていることから、本論文については、
⑦会戦前におけるイスタン・イスファ軍による会戦前における敵情報把握、特に指揮官の性格分析が作戦判断に与えた影響
について論じたい。
まず本会戦で着目したいのは、イスタン・イスファ軍による帝国督戦隊へのヘリボーン攻撃である。この督戦隊への攻撃は、会戦以前からイスタン・イスファ軍の作戦計画に組み込まれていたものであったことが、複数の証言等から明らかになっている。
同盟軍に督戦隊を付けるという極めて異例な事態を予想できたのは、帝国総司令官ウイリアム・カリー大将が「慎重であり、時に残虐である」と称される人物であることを、イスタン・イスファ軍が事前に把握していたためであると考えられる。
次に着目したいのは、帝国右翼軍が後退した際のイスタン・イスファ軍の行動である。
帝国右翼軍の突然の退却に際し、イスタン・イスファ軍左翼は、帝国中央軍への攻撃で応じた。
この行動は、当該局面における最適行動であり、結果として帝国軍の損害を大幅に拡大させた。この最適行動を行うことができた背景には、イスタン・イスファ軍は帝国右翼軍が退却することを想定していた可能性がある。
ハドリアン・イタン中将の『勇将』という称号に惑わされず、帝国右翼軍の退却を想定できたことは、イスタン・イスファ軍が捕虜の尋問や商人からの情報収集等を通じ、敵指揮官の性格をかなり深い水準で分析していた可能性を示している。
文学部史学科論文集より




