第102話 第二次アフラ会戦1
タブリ駐留ロマ帝国軍駐留地会議室
「以上のとおり、捕虜の尋問結果とあわせて考察するに、敵の攻撃は石魔術ではなく新兵器、おそらくは何らかの方法で石礫のようなものを撃ち出す兵器であると断定します。
さて、この新兵器ですが、おそらくは射程距離200m以上、発射回数は弓よりも若干少なめの、1分間6発程度と考えられます」
いやあ、部下D君。本当に君は優秀だね。俺、君のレポートを読んでいるだけだよ。
「さて、この前提にたちますと、謎であった敵勢力のイスファへの転進理由が判明します。
おそらくは、この新兵器の石礫のようなもの---今後これを弾丸と言いますが、この弾丸が不足したため、補給に戻ったのではないかと推測いたします。これは、パトキン将軍の部隊、特に左翼において奮戦したリバルス将軍の部隊の功績であるとも考えられます」
リバルスの野郎を褒めたくはないんだがな。D君が是非ともこの一文を加えろと言うのだから、仕方なしだ。
「これらを踏まえて、我が軍が侵攻した際のイスタン・イスファ側の対応は以下のとおりと考えます。
・ケース 1 敵の弾丸補給が間に合わない場合
敵は通常装備でタブリ伯爵領側アフラ平原入り口狭隘地に展開。我が軍に遅延攻撃を仕掛け、弾丸補給までの時間を稼ぐ。
・ケース 2 敵の弾丸補給が十分な時間を持って行われた場合
敵はケース1と同様にタブリ伯爵領側アフラ平原入り口狭隘地に展開。我が軍のアフラ平原侵攻を阻止するとともに、状況に応じて我が軍に対する逆襲を仕掛ける。
・ケース 3 敵の弾丸補給が行われるが十分な時間がなかった場合
敵は先のアフラ会戦と同様にアフラ平原に展開、我が軍との会戦を行う。
以上をもちまして、小官からのプレゼンを終了致します」
「すばらしい。ハドリアン・イタン中将。すばらしいプレゼンだ。
『猛将』の称号を得たと聞いているが、卿は知将とも称すべきではないのか」
「お褒めにあずかり恐縮です。カリー総司令官殿」
「して、我が軍はどう動くべきと考える?」
「敵の新兵器に対しては、身を屈める、あるいは身を伏した上で前進。ある程度の距離まで近づいたところで、一斉に突撃するのが有効かと存じます。
新兵器は石魔術と同様に真っ直ぐにしか飛ばないと考えられますので。
戦略面につきましては、申し訳ありません。小官は万単位で兵を率いた経験がありませんので、ここは経験豊かな総司令官ならびに諸卿にご判断を賜りたく」
これもD君のシナリオどおりのセリフ。『猛将』の称号を与えられたことで反発する輩が必ずいる。ここでは反発を抑える上でも謙虚にいくべきだという判断だ。
D君は、「大軍に兵略なし。その衆をもって寡を撃つのみ」って、言ってたけどな。
「わかった。先ず敵の新兵器対応についてはイタン中将の策を取り入れる。
各部隊長は隊員にこれを徹底すること。
次に侵攻作戦について。ルシアン・タナック少将、説明せよ」
出たなタナック。こいつは俺と同期入隊。ちなみにリバルスの野郎も同期で、
「カミソリのタナック、鉈のリバルス」と称されていた。
俺?俺にはそんな二つ名はなかったぞ。だって、劣等生だったもん。
「はい、総司令官殿。先ず、我々カリー将軍配下の幕僚もイスタン・イスファ軍について、イタン中将の考えと同様の行動を取るものと想定しておりました。それを踏まえて、小官が立案した作戦計画について説明させていただきます」
翻訳
①お前の考えていることぐらいはこっちでも考えたぞ。
②その上で、お前が考えつかなかった作戦計画を俺は考えたんだぜ。
いやあ、タナック君。君の気持ちはよくわかるよ。悔しいか。悔しいだろう。
劣等生の俺に肩を越されて悔しいのだろう。その悔しさが言葉の隅々に現れているぞ。
そんな君に、僕からこの言葉を贈ってあげよう。「ざまあ見ろ」
「先ず軍の構成ですが、カリー将軍配下の10,000を中核とし、これとは別にイタン中将に兵5,000を率いてもらいます。さらに、タブリ伯爵軍5,000を出していただきます。
アフラ平原には、タブリ伯爵軍を先頭にカリー軍、イタン軍の順に侵入。
アフラ平原での会戦が行われる際には、タブリ伯爵軍が左翼・カリー軍が中央・イタン軍が右翼を務めることとします。
最終的な目標はイスファ占領によるイスタンの経済封鎖。これはパトキン将軍がたてた戦略目標と同様です」
D君の見通しどおり---か。
「タナック少将、ひとつ疑問がある。我がロマ軍はカリー将軍の10,000と私が預かっている5,000、計15,000。
対してイスタン・イスファ軍は仮に辺境伯軍の応援1,000があったとしても最大5,000。
これだけの戦力差があるのであれば、タブリ伯爵軍は不要ではないか。
むしろタブリ伯爵軍は不安定要素でしかないと思うが、如何か」
「我々は常に最悪の事態を想定しています。
本作戦における最悪な事態とは、補給を済ませた敵軍がタブリ伯爵領側アフラ平原入り口狭隘地に展開をしているということ、そう、中将殿の想定するケース2です。
このため、我が軍はタブリ伯爵軍を前面に出し、敵の消耗を図る」
5,000の兵を持って敵弾丸の消耗を図る、ということか。
ひどい作戦だ。だが、有効ではある。
「アフラ平原侵入の際にタブリ伯爵軍を前面に出す以上、会戦にもタブリ伯爵軍を参加させる必要があります。仮に予備軍として後方に配置した場合、それこそ不測の事態が発生する可能性がある」
後方に配置し、万一寝返られたら目も当てられないからな。そこは認める。
「イタン中将」とカリー総司令官が口を開く。
「戦いは数だよ、中将。タブリ伯爵軍には参加してもらう。
だが、中将の懸念も十分に理解できる。そのため、タブリ伯爵軍には督戦隊をつける」
カリー将軍、そこまでやるのか!?
9月10日 はじめて評価とリアクションをいただきました。
大感激です。




