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2度目の転生に関する報告書  作者: トール
第四章 ロマ帝国との戦い

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第100話 論文集(タブリ領境会戦)

かくしてタブリ領境における戦闘は、終了した。

双方の被害状況概略は以下のとおりである。


・帝国軍

 総兵力  8,500(歩兵 8,000、騎兵500)

 死傷者  2,500(歩兵 2,000、騎兵500)

・王国軍

 総兵力  16,000(歩兵 16,000 うち魔術兵100

 死傷者  5,000(うち魔術兵 10)


王国軍は終盤における辺境伯軍の奮戦により決定的な崩壊を免れた。しかし、倍近い兵力を擁しながら戦略目的を達成できないばかりではなく、逆に甚大な損害を被った王国軍の惨敗と言える戦いであった。


この会戦は、その後の軍事行動に以下の二つの大きな変化をもたらすこととなった。


一つは帝国軍における騎兵運用方法の変更である。


本会戦以前の帝国軍は、戦闘初期段階における重騎兵正面突破を戦法として用いていたが、本会戦ならびに第一次アフラ防衛戦(帝国側呼称:第一次アフラ会戦)において、騎兵隊に対する魔術攻撃(ならびに銃撃攻撃)により、騎兵隊が混乱し、被害が拡大するという状況が発生した。

これを受け、帝国軍は騎兵の主たる任務を索敵および敵後方の攪乱へと転換した。

また、戦闘終盤における騎兵突入はその後も散見されたものの、戦闘初期段階に重騎兵を正面から投入する戦法は次第に用いられなくなり、結果として重騎兵は戦場から姿を消すこととなった。


二つ目は王国軍における傭兵隊比率の縮小(または傭兵利用の廃止)である。


タブリ領境会戦において王国軍側の最初の綻びは、左翼の王国諸侯軍であった。

王国諸侯軍における傭兵の比率は、諸侯ごとに異なるが平均すれば30~40%を占めていた。

この傭兵隊は、戦況が有利である間は兵力として十分に機能したが、ひとたび戦況が不利に傾くと戦力として期待できず、むしろ戦場の混乱を拡大させる存在となった。

タブリ領境会戦は、「傭兵は摩擦(疲労・損害・恐怖等)に耐えられない軍であり戦力として成立しない(卡尔·冯·克劳塞维茨)」ことを明らかにしたものであった。


そしてこの会戦は、王国軍のみならず、王国そのものが抱える構造的欠陥を明らかにする契機となった。これについては、次章以降で述べていきたい。


文学部歴史学科論文集より


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あと一歩のところで取り逃がしたか、国王を」

「はい、皇帝陛下。寡兵であった我が軍には敵を追撃するだけの余力はなく

 やむなく戦闘を終了させたとのこと」


ロマ帝国皇帝会議室において、皇帝の問いかけに軍務卿が答えた。

「王国軍の残存兵力は?」

「国王直轄軍4,000、諸侯軍4,000、辺境伯軍3,000 計11,000です。

 なお国王直轄軍の魔術部隊100は、ほぼ健在である模様です」

「対して派遣軍の残存兵力は5,500か。良く勝てたものだな」

「はい。勇猛な兵、優秀な指揮、それに神のご加護により、倍の敵を撃退することができました」


「さて、これからどうする、軍務卿」

「先ず前提として、敵からの再侵攻は考えられません。

 敵諸侯軍は2割の被害。そもそも今回国王軍が崩れた原因は敵諸侯軍の

 士気低下が原因とのこと。再侵攻の意思はないと考えられます。

 国王直轄軍は3割超の被害です。これもまた再侵攻の余力はないと考えます」

「つまり、侵攻されることはないが、こちらから侵攻することも簡単にはいかないだけの兵力を残しているということか、王都方面は」

「そのとおりです」


「辺境伯方面も厳しいか。辺境伯軍残存部隊3,000に今回会戦に参加しなかったイスタン・イスファ軍4,000、計7,000がいる」

「辺境伯軍残存のうち3,000のうち2,000が辺境伯配下の諸侯軍。

 この諸侯軍も会戦では使いものにならなかったどころか、辺境伯軍直轄部隊の足手まといになったとのこと。つまり、使える辺境伯軍は1,000程度かと考えられます」

「イスタン・イスファ軍ですが」と外務卿が発言する。

「ご承知のとおりイスファまで撤退済みで今回の会戦には参加せず。この動きはあまりにも不自然です。

 想定以上にアフラ会戦での被害が大きかったか、あるいはイスタン子爵自身に、何らかの支障が生じたかと考えられます。なお、バルト王国王都ではイスタン子爵に不慮があったのでは、という話が噂レベルであるとのことです」


「大変僭越ですが」と商務卿。

「以前にもお伝えしましたがイスタン領の経済活動は脅威です。たたけるのであれば叩いておきたい」


しばらくの沈黙の後、皇帝が口を開いた。

「軍務卿、追加で10,000程出せ」

「御意ではございますが、今、10,000を出すのは---」

「軍務卿、我は出せるか否かは聞いておらぬ。出せと言っている」

「---カタゴ戦線から主力部隊を抜きます。当面の間、カタゴ戦線は侵攻が遅れますが---」

「かまわん。先ずはバルト王国を、いや、イスタン・イスファを叩く。

 軍務卿、頼むぞ」

「御意」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


タブリ駐留ロマ帝国軍駐留地会議室


「ハドリアン・イタン少将、今回の戦勲を称え汝に帝国第二級勲章を授与した上で中将に昇進する」

「はっ、ありがたき幸せ」

皇帝からの伝奏官の言葉にイタン将軍は応える。

「さらに皇帝からの称号授与がある。『猛将』の称号を二つ名として与える

 とのことだ」

「ははっ!」

「おめでとう、中将。君は英雄となったのだ」


俺が猛将?英雄?

リバルスの野郎が聞いたら、腹を抱えて笑うことだろうな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ぶっははは! イ、イタンの野郎が『猛将』だと? クワハハハ! は、腹が痛え! ヒィー!」

アフラ会戦時、帝国軍左翼軍司令官であったカウ・リバルス少将は、腹を抱えて笑った。


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― 新着の感想 ―
タブリ領境会戦は、「傭兵は摩擦(疲労・損害・恐怖等)に耐えられない軍であり戦力として成立しない(卡尔·冯·克劳塞维茨)」ことを明らかにしたものであった。 「卡尔·冯·克劳塞维茨」は読めない
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