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I'll  作者: ままはる
第二章
21/114

21.キリー

 昼過ぎ、1度リズと合流したウィルたちは、オーガのことを彼女に報告した。


「普通の剣では斬れないオーガねぇ……」


 見通しの良い川辺で昼食のサンドイッチを齧るリズとラリィ。ウィルの2日酔いは大分マシにはなったものの、まだ食欲はない為水だけで済ませた。


「昔親父が倒したオーガは、斬れないほど硬いってことは無かったと思うんですけど」


「そうね。そんな話は私も聞いたことがないわ」


 リズは地図を見る。

 昨日調査したのは南北に流れるこの川沿い。生息するはずのない弱った魔物が多くみられた。


 先ほどリズが調査に行ったのは、川の東側の登山道付近。川から離れるほど魔物は衰弱している様子がみられ、既に死んでいるものもいた。

 そしてウィルたちがオーガに遭遇したのは、川の西側。


「……そっちの方が当たりかもね」


「じゃあコレ食ったら、もうちょっと調べてみるか」


 ラリィに言われて、リズは折れたウィルの剣を手に取った。これでは使い物にならない。


「街に戻れば予備があるけれど、どうする?」


「まぁ……こっちでなんとかやってみます」


 ウィルは左手の紋章を指差した。守護剣は大き過ぎて使いにくいが、使えないことはない。


「あ。ちなみになんですけど、ソレみたいに守護剣が折れたり傷付いたりした場合、キリーに何か影響とかってあるんですか?」


「守護剣は傷付かないし、刃こぼれもしないはずよ。だから影響はないと思う」


「キリー? キリーって?」


 2人の会話を聞いていたラリィが首を傾げた。

 そう言えば精霊の話は他言無用だったーーと、ウィルは内心で焦る。それを察して、リズは小さく笑った。


「大丈夫。私の村雨も、ゼンのシュイ=メイのことも知っているから」


「それなら……」


ウィルは手の紋章からキリーを解放する。


「あら? ラリィくん! 久しぶりー!」


「おぉ! キリーじゃん! キリーって、このキリーの話? え? 精霊? どゆこと?」


「顔見知りなのか?」


 親しげな様子のキリーとラリィ。


「ラリィくんとは友達なの。予定通りリズちゃんたちと同じ班に配属されたのね、ウィル。うふふ♡」


 何やらニコニコと嬉しそうにキリーは笑う。


「ウィルは可愛いいしー、リズちゃんは綺麗だし、ラリィくんもゼンくんもセイルくんもイケメン♡ ……過去最高の完璧な班じゃない!?」


「キリーはとにかく、顔がいいのが好きなのよ。城や訓練場に顔を出しては、お気に入りを見つけて声を掛けていたからね」


「はぁ……?」


「ラリィくんとセイルくんも、私のご主人様になってもらおうかなって悩んだのよ。でもラリィくんは剣の使い方がちょっとアレだったし、セイルくんは怖かったから……ウィルまで待って正解だったわー♡」


「そっか。キリー、守護剣の精霊だったのか。匂いがしねーなって思ってたんだよなぁ。あ、ホントだ。幽霊みたい」


 キリーの腕に触れようとして空振りする自分の手を、楽しそうに見るラリィ。


「ねぇ、ここはどこ? グリーンヒルじゃないわね?」


「ロックウェル・バレーだよ」


 見渡す限りの大自然。キリーの顔が生き生きとする。


「23年間お城の周りから離れられなかったから、すっごく新鮮!」


 主を持たない守護剣は、城の武器庫の中に保管されていた。その間キリーはある程度自由に外を行き来していたが、守護剣から遠く離れることは出来なかったのだ。


「綺麗な川ね」


 ニコニコと川の水を覗き込むキリー。その顔と、水面には映らない彼女の姿をウィルは交互に見遣る。


「本当にフツーの女だな」


「ん?」


「……なんでもねぇ。じゃあキリーは、俺がいる場所から離れられないってこと? 俺が呼び出さない間はどこにいんの?」


「ウィルから離れられるのは半径2キロくらいまでかな。その紋章の中にいる時は、何もない真っ暗なところで大抵寝てるわ。だから、時々こうやって封印を解いて呼び出してね」


「ふぅん」


 何もない真っ暗なところで寝ているーー何でもないように言ったキリーだが、それはとてもつまらないのではないだろうかと、ウィルは思う。


「それから、私と剣は同時には出せないから気を付けて」


 キリーは視界の端にゴブリンを見つけて、自ら紋章の中に姿を消した。

 ウィルは守護剣を手中に収めると、その大剣で魔物を斬る。

 リーチが長くて距離感が掴みにくい。だが、面白いほど斬れる。


「大剣だとは聞いていたけど、本当に大きいわね……」


「ウィルの方が剣に振り回されてるように見えるもんなぁ」


 驚嘆するリズと、楽しそうに笑うラリィ。


「それじゃあ、あっちの方の探索に行きましょうか」

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