表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
I'll  作者: ままはる
第二章
22/114

22.洞窟

⭐︎


 ウィルたちがオーガを倒した場所からもうしばらく獣道を進んでいくと、山肌にポッカリと空いた洞窟を発見した。


「真っ暗ですね」


 中を覗いたウィルの声が反響する。まだまだ奥へ広がっていそうだ。


「お宝とか眠ってそうじゃね?」

「宝ならいいけど、魔物がうじゃうじゃいるかもね」


 背負っていたナップサックから、ランタンを取り出すリズ。明かりを点けて中を照らしてみる。横幅は大人が五人横に並んで歩けるほど広いが、天井は二メートル程度と、それほど高くない。


「私とラリィで見てくるから、ウィルはここで待機しておいて」

「了解でーす」


 万が一魔物がいた場合、ウィルの守護剣では戦えない。ラリィを連れて洞窟の中へと入っていくリズを見送ると、ウィルは手近にあった岩に腰掛けた。


 木々の隙間から覗く空は青く、気候も穏やかで気持ちがいい。ほとんど寝ていないウィルに、一気に睡魔が襲ってきた。


(ちょっと目を閉じるだけ……)


 落ちてくる瞼の重さに耐えきれず、ウィルは少しだけ目を閉じた。


 ――それが十秒だったのか、十分だったのか、ウィルにはわからない。


「見つけた」

「っ!?」


 すぐ耳の横で聞こえた声に、ウィルは咄嗟に目を開いた。


「誰……あっ!」


 ウィルの目の前に立っていたのは、知らない男だった。

 黒い服に黒い髪、異様に印象に残る金色の双眸――その男の手に、見慣れたネックレスが握られている。ウィルは慌てて自分の首元を探ったが、指先には何も触れない。


「それ、俺のだろ! 返せよ!」


 ウィルがいつも身につけている、銀の指輪を鎖に通したネックレスだ。男は口元に薄く笑みを浮かべた。


「違うよ、僕のだ」

「はぁ? 意味わかんねぇ! 俺のだよ!」


 ウィルは男の手からネックレスを奪い返す。男は笑みを浮かべたまま、微動だにしない。


「なんなんだよ、気色悪ぃ奴だな。この辺り、今は立ち入り禁止だ。魔物が出るぞ」

「魔物……?」


 男は洞窟に視線を向けた。


「魔物じゃないよ。ただの失敗作だ」

「あ?」


 男の言葉の意味がわからず問いただそうとした時、洞窟の奥の方でラリィの声が聞こえた気がした。


「おい、お前! この洞窟が何なのか知って――」

「目が母親によく似ているね」

「!?」


 反射的にウィルは男と距離を取り、手の中に守護剣を出現させた。男はチラリと守護剣を見る。


「それ、君が持ってるんだ?」

「母さんを知ってるのか……?」

「どうしようか。面白くなってきちゃった」

「答えろよ! 俺の親を知ってるのか!?」


 ウィルの中で、何かが叫んでいる。全身が、本能が――この男は危険だと報せるように、嫌な汗が噴き出した。

 守護剣を、男に向けて構える。


「ははっ。そうやってると、父親にそっくりだ」


 男は嗤った。


「――すぐに死んだけどね」

「てめぇっ!!」


 一瞬も躊躇することなく、ウィルは剣を振り下ろした。だが、何の手応えもない。


「ほら、早くあっちの援護をしてあげないと。仲間も死んじゃうよ?」

「っ!」


 ウィルの背後から男の声がした。いつの間に後ろに回ったのか、まったく見えなかった。洞窟の中のラリィの悲鳴が、こちらに近づいてくる。


「その指輪、大切にしてね。もう少し君に預けてあげる」

「お前……お前が殺したのか!? 俺の親……っ! お前が!」

「ウィル!! 避けて!」


 リズの声と同時に、洞窟の奥からリズとラリィが転がるように出てきた。続いて燃え盛る炎が二人を追って現れる。


「っ!?」

「熱っ! あっっつー!!」

「魔物! すぐに出てくるから斬って!」

「え、あ、でも……」


 ウィルは男の姿を探した。だが。


(いない……逃げやがった!)


「くそっ! なんなんだよ!」


 ウィルは剣を構え、洞窟の方へ意識を移す。まるで火炎放射器を最大火力で噴射しているような、凄まじい炎。その炎の出所は――鬼火。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ