寿久屋の1日
遊郭の朝は早い。
早朝から泊まりだった客を見送り、泊まり客の相手をしていた遊女たちは一眠りに入る。
しかし巳の刻(午前10時)には全員起床し、朝風呂を済ませ、食事を済ませ、身支度を整えなければならない。
なせなら正午には昼見世(昼の営業)が始まるからだ。
この間、世話人たちも遊女たちの食事や身支度を手伝うのに大忙しになる。
そしてこの時間、凛子の仕事は昨日の売上を全て帳面に記載し、売上の管理をする。
凛子が親方から大事にされているのは実はこれもあった。
ここに来てすぐに帳面の書き方を教わったが、凛子の書いた帳面を見て親方が
「お前は仕事が丁寧だな。読みやすくて助かるぜ」
と、よく褒めてくれた。
帳面が終われば、次は買い出しになる。
遊郭に入ってくる商人たちから必要な物を買っていく。
本来は男衆の仕事だが、凛子も男衆に混ざって買い出しを行っていた。
正午、昼見世が始まると男衆は店先に立ち客引きを始める。
凛子はこの時間に少し仮眠を取ることにしていた。
人斬りの仕事は夜から深夜が多いためだ。
そして昼見世が終わり、夜見世までの約2時間。遊女屋はまさに戦場となる。
昼見世から夜見世へと部屋を掃除をし、部屋の雰囲気を変え、大量の提灯と行燈を準備する。
遊女たちもまた夜見世への準備に余念がない。
凛子もこの時間は店の準備を手伝っている。
そして夜見世、遊郭が最も賑わい、最も多くの客が訪れ、最も多くの金が動く。
不夜城と呼ばれる、華やいだ街がそこにある。
人気の遊女たちにはすぐに指名が入り、息つく暇もなくなる。
そしてこの時間に
「凛、指名だ」
親方が凛子を呼びに来ることがある。
指名が入ると凛子は個室に入る。本来、部屋持ちの遊女に与えられる個室を、凛子のために一部屋開けてある。
凛子が個室に座っていると、襖が開き若い男が入ってきた。




