柳凛子
凛子はたった今自分が斬った2人の侍を見下ろしていた。
仕込み杖の刃についた血を紙で拭いながら、足元の血溜まりから立ち込める血の臭いに眉をひそめた。
何度も嗅いだとはいえ、慣れるものではない。
「いつもながら見事な」
民家の影から侍が2人。
「お疲れさまです」
凛子は2人の顔を見もせずに言った。
2人は倒れいる侍2人が確かに死んでいるかを確認し、白い紙を死体に乗せた。
「お怪我はありませんか?」
「?……ありませんよ?」
見ていたんじゃないのか?と思った。
「今日の2人、大男の方はかなりの手練れだと聞いていましたので」
「いえ……まったく」
これで手練れ?
「手練れと言えば。先日の背の高い御仁の方がよほど手練れでしたよ」
「あぁ、確か月ケ瀬一刀流の師範を務めていた男……」
師範?どおりで……。
名前と特徴は知らされるが、素性は聞かされないので、剣術師範だとは初めて聞いた。
「そうゆう大事なことは先に知りたい……」
ポツリとつぶやいた。
「え?何かおっしゃいました?」
「いえ、何も」
「もういいですよ。今宵もお疲れさまでした」
「……では失礼します」
一礼をして凛子は帰路についた。
2人の男は凛子の後ろ姿を見ながら
「人を2人も斬ったってのに、あんなに冷静でいられるんだな」
「あぁ、根っからの人斬りってやつか……」
「まだ若いのにな……」
「聞こえてるよ……」
歩きながら凛子が呟いた。




