女の人斬り
夜も更けた江戸の街はずれ。
あたりは静まり返り、かすかな月明かりと提灯の明かりだけが道を照らしていた。
「すっかり遅くなってしまったな」
「ええ、先生は飲みすぎると話が長くなりますからねぇ」
2人の武士が家路を急いでいた。
「まぁ先生も弟子をここ1か月ほどで5人も斬られているからな」
「あぁ、例の……辻斬りですか?」
「あぁ、正体どころか手がかり1つ掴めんらしい。わかっているのは恐ろしく手練れだということだ」
「先日斬られたのは……」
「月ケ瀬一刀流の師範だ。傷を見るに、わずか一太刀で仕留められていたらしい」
ゴクリ。
武士の一人が唾を飲み込んだ。
月ケ瀬一刀流といえば、江戸の街でも相当な手練れ揃いと知られている。そこの師範ともなれば、それはもう恐ろしく強いはず。その師範が一太刀で仕留められるなど……。
「どんな屈強な者なのでしょうか」
「…………。」
「浅田殿?」
前を歩いていた浅田が手で制した。
「何奴?」
見ると正面から誰かが近づいてきている。
「いつのまに!?」
相手は答えずゆっくり近づいてくる。
「止まれ!そして名乗れ!!」
浅田が刀に手をかけた。
「あなた方を……」
女性の声だった。
「女?」
浅田が言った。
「斬りにきました」
女が言うと同時に走りだした。
「!!」
カランカランと下駄の音がする。
「速い!!下駄で!?」
浅田が刀を抜きにかかった瞬間!
女は一瞬で間合いを詰めたかと思うと、次の瞬間には抜刀と同時に浅田の喉を斬った。
「浅田殿!!」
斬られた浅田を見て声を上げたと同時に女の剣が向かってきた。
もう一人は刀に手をかけたと同時に首に熱い痛みを感じた。
「………!!?」
痛みの箇所を抑えるも、血が一気に噴き出した。
「そ……そん……」
膝から崩れ落ちる武士が見た者は……。
かすかな月明かりと落ちた提灯の明かりに照らされた、刀を持った美しい女性だった。
「………き…れ……………」
そこで事切れた。




