人斬りの自分を7
「妹さんがおられたんですか?」
「え?……はい」
女は少し戸惑ったような答え方だった。
「すいません。家を……追い出したと仰られたので、少し気になってしまって」
凛子が冷たい視線を女に向けると、女は一瞬ビクッとした。
「それは……そう聞いてます。3年くらい前のことのようですが……」
この人にどう話していたのかが気になった。
「家を出たじゃなく、家から追い出したって、気になりますよね?」
「……はい。私も最初に聞いた時、そこに引っかかりました。それで彼に聞いてみたんです。そしたら……」
そこからの話は、ほぼ全て嘘偽りはなかった。
凛子が兄2人よりも剣の才能に恵まれていたこと。兄2人が何度仕合っても凛子に勝てないこと。それを知った周囲の人間が、妹に勝てない者たちなど侍になる資格はないなどと罵ったこと。そして……
家と兄2人と武士としての対面を保つため、妹を家から追い出したこと……。
ただ1つ、凛子が知らなかったことは、凛子が家を追い出されたあと、凛子は死んだことにされていたことだった。
「ひどい話ですね。じゃあ死んだことにした妹さんに謝りたいと仰ってるんですか?」
少し白々しい感じて大げさに言った。
「……はい。お父上もお兄さんも彼も……本当に悪いことをしたと仰ってました。そして、できるならもう一度家に……」
そこで途切れた。
「ずいぶん……虫のいい話ですね」
女が顔を上げた。
「そもそも謝りたいとかもう一度家に……なんて……そんなことできると思ってるんでしょうか?」
「それは……」
「そもそも妹さん、死んだことにされた以前に、生きてるかも怪しいじゃないですか?」
「そんなこと!」
「ないと思いますか?……女1人が家を放り出されて生きていくことがどうゆうことか」
凛子は天井を見上げた。
「私は遊郭に住まわせてもらっています」
「遊郭……」
「ええ、女が身体を売る、あそこです」
「そ……」
「遊女たちはどうして遊女になったかわかりますか?」
女は首を横に振った。
「売られてきたんですよ。貧しい家から金で」
「えぇ!?」
「信じられませんよね?でも本当です。彼女らは貧しさゆえ、遊郭に売られたんです。でもそうゆう女たちはまだいい方です。大半の住む家をなくした女は生きる術もなく、野垂れ死にです。あるいはどこかで誰かに犯されて殺されたりもあるでしょうね」
「そんな……!!」
「そんなものですよ。それくらい女が1人で生きていくことは困難です。ましてや11歳の子供が突然家を放り出されて、どうやって生きていくといんですか?」
「……え?」
「もうとっくに死んでますよ、妹さん」
女は凛子をじっと見て、しかし何も言葉を発しなかった。
「どうして?……どうしてそんなことを!?」
女の声が大きくなって、ハッとした。
「すいません。しゃべりすぎました」
「ちょっといいか?」
上郡が2人の話に割って入った。
「義手の話は彼が目を覚ましてからでいいんだが、まずは着替えなさい。それと着ていたた血のついた着物はここに捨てていくといい。血がついた物は感染症を引き起こしやすい」
「かんせんしょう?」
「あー、病気になりやすいということだ。隣にいくつか着物があるから……こっちだ」
と、上郡は女を隣の部屋に案内した。




