人斬りの自分を6
「覚えてますか?あの時あなたったら……」
処置の間、女は上郡に言われた通り、男に話しかけ続けていた。
出会った時のこと、2人で行った場所、食べた物など……。
凛子は上郡の手伝いをしながら、話の内容を聞いていた。
「凛子、汗を……」
汗を拭う。
「明かり……」
消えかけた蝋燭を交換した。
高価な蝋燭をよくこんなに大量に持ってるものだな。
治療中だというのにこんなことが頭によぎってしまった。
凛子にとってはこの男が助かろうが助かるまいが、さほど気にならなかった。
ここまで連れて来たのも、かつて兄と呼んだ義理のようなものだった。
そもそもこいつらが不甲斐ないせいで私は。
「凛子!」
上郡の声でハッとした。
「どうした?これを……」
上郡は手に持った小さな器具を交換しろと促していた。
「そうだ、前に妹さんの話をしてくれましたよね?」
女の声に凛子の動きが止まった。
「凛子、どうした?大丈夫か?」
「は、はい。すいません」
「家から追い出してしまったという妹さんに謝りたいと……おっしゃってましたよね。だったら、妹さんと会うためにも生きなきゃ……」
言葉を詰まらせた女に凛子は『おい、今は泣くなよ』と心の中で思った。
半刻ほどで治療は終わった。
「もう大丈夫だ。このあとは義手を作ってつなげるだけだ」
「よかった……ホントによかった……」
女は泣き崩れた。
ホントによく泣く女だな。
凛子は頭と鼻、口の布を取りながら、泣き崩れた女に冷ややかな目を向けた。
「凛子、着替えてこい。そいつは手術着だ。隣の部屋に着替えを用意してある。お前が着てきた着物は捨てろ」
「………ありがとうございます」
用意された小袖を着て、部屋に戻ると女はまだ泣いていた。
ホントにこんなによく泣く女は初めて見た。
凛子が普段見ている遊女たちは涙を見せるのは武器としてだけだ。
「あなたも着替えたらどうですか?先生があなたも血を浴びているから着てきた着物は捨てた方がいいと」
「……ありがとうございます……」
「じゃあ、私はこれで」
部屋を出ようとした時
「待ってください!」
女が立ち上がって呼び止めた。
「あの!……助けていただいて、本当にありがとうございます!それと……最初、怯えてしまって申し訳ありませんでした」
「いえ……目の前で人が切り殺されるのを見て怯えるなというのは無理でしょう。気にしてません」
冷たく言い放ち部屋を出ようとした。
が、部屋の入口で脚を止めた。
「1つ、聞いてもいいですか?」
「え?はい」
「さっき、妹さんがどうとか話されてましたよね?」




