人斬りの自分を2
「あぁ、こいつ犯してやる!」
そう言って男は凛子の下半身に自分の下半身をこすりつけるように押し当てて、気持ちの悪い笑みを浮かべた。
「な!?……ふざけるな!」
凛子は必死に振りほどこうとするが、腕力では敵わない。
「おい!さっさと脱がせろこいつ!」
男がもう一人に促す。
「お前、変態かぁ?ガキ相手に勃つのかよ?」
言いながら、もう一人が凛子の小袖の襟に手をかけた。
「ひっ!や、やめ……」
「何怯えてんだよ!散々仲間殺しやがったくせに!」
「く!うあぁ!!」
凛子は上半身をバタつかせて、襟にかかった手を振りほどこうとした。
「おい!動くな!」
バッ!と襟が開かれた。
さらしを巻いた胸を見て、男がニヤニヤしながら
「おお?一丁前にさらし巻いてんのか?へへへ」
「うぅ!わぁあぁぁ!!」
「おい!このさらし取れ!」
「へいへい」
もう一人がさらしにも手をかけた。
「くっそ!離せぇ!!」
「うるせぇ!!」
男が大声を上げた。
「頭にくる女だぜ。女の分際で剣なんか持ちやがって!」
………!!
「女の……分際?」
「あぁそうだ!女は剣なんか振るうんじゃねえ!女の分際で男の世界にくるんじゃねぇ!」
「分際……だと?」
凛子の頭にみるみる血が昇ってゆく。
「女の分際……だと?…………ぶさけんな!!」
凛子は全身の力を使って男を振り払おうともがいた。
「くっそが!動くなつってんだろ!!」
男が凛子を殴ろうと、右腕を振りかぶった。
だが、男が凛子の左腕を離した瞬間、凛子は左手の指を男の右目に押し込んだ。
「うあぉぉぉ!?」
男が右目を抑えて凛子から離れた。
その隙を逃さず、凛子は立ち上がると、男の側頭部に横蹴りを1発。
そのまま脚を下ろさず、踵を男の脳天に落とした。
「ぐおおおおお!!」
男の頭から血飛沫が上がった。
「女だから!?」
凛子は頭を抑え、もんどり打っている男の背中や後頭部にさらに蹴りを入れた。
「女だからなんだってんだぁ!?」
男が仰向けになったのを見て、男の股間を下駄で踏みつぶした。
「ぎあぅぅぅ……」
男は股間を抑え、声にならないうめき声を出した。
もう一人はこの光景を見て動けずにいた。
凛子はもう一人を一瞬見て、落ちていた男の刀を手に取った。
「女が剣を持って何が悪いってんだぁ!?」
叫びながら男の首を斬った。
ゴロン……と、男の首が落ちた。
首を切断された個所から噴き出した血が凛子の全身を濡らした。
「うわぁ!ひ!ひいぃぃいいぃ!!」
もう一人は転がってきた首と返り血にまみれた凛子を見て、尻もちをついて悲鳴を上げた。
凛子はゆっくりと近づいた。
「ま、待ってくれ!!俺は、そいつらとは違う!俺は……」
最後まで聞かずに凛子は男の喉を真横に斬った。
斬られた喉から鮮血が噴き出す。
それがまだ凛子の全身を赤く染め上げた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
呼吸が乱れる。心臓の鼓動が早く大きい。まるで耳元で鳴ってるかのようにドクンドクンと大きな音が聞こえる。
「女だからって……」
言いかけたところでハッと逃げた1人のことを思い出した。
「しまった!」
凛子は男が逃げた方向に目を向けた。
当然男の姿はもうない。
「大丈夫ですか!?」
検分役の2人が出てきた。
今頃……!!と思ったが、彼らはあくまでも検分役にすぎない。
「1人逃げました!追います!!」
凛子は襟を直し、仕込み杖を拾って男が逃げた方へと走りだした。
どこまで行った?どれくらい時間が経った?
路地に入られていたらわかるはずもない。
それにさっきの騒ぎで奉行所の役人が来るかもしれない。
焦れば焦るほど、どこに向かって走ればいいかわからなくなる。
立ち止まり、周囲を伺う。
人の気配はない。
顔をはっきりと見られた相手を逃がしてしまった。
「クソ………」
一旦戻るか。それともやみくもでもこのまま探すか。いや、そもそももう家に帰り着いているかもしれない。
「クソ!クソ!」
頭に血が昇って冷静さをなくしたことを悔やんだ。
「あれぇ?」
不意に背後から聞き覚えのある声がした。




