光る画面、あるいは誠実の証明
投稿者:みつる 2026年5月15日
作ったぜ。
……いや、今回は「勇気」を振り絞って作った。
セロリが残した「洗礼」の跡を洗い流し、ようやく平穏な朝食が始まった時のことだ。テーブルの上に置いていたおれのスマホが、震えるように光った。
『みつる、昨日はごめん。また二人でバリの波、追いかけないか? 連絡待ってる』
画面に浮かび上がった、あの元カレからのメッセージ。
一瞬、おれの心に甘い潮風が吹き抜けた。ここを飛び出せば、またあの輝くような太陽の下に戻れるかもしれない。今の惨めな「小鹿の脚」を隠して、ただのサーファーとして笑えるかもしれない。
向かい側では、琴音が無言でゴーヤチャンプルーを口に運んでいる。
おれの二頭筋が、スマホを隠そうと無意識に動いた。だが、おれは止まった。ここで隠せば、おれは一生、あの「アンバランスな化身」のままだ。
「……琴音。これ、見てくれ」
おれは震える指で、スマホを彼女の方へ差し出した。
画面を覗き込む琴音の瞳。その静かな海のような瞳が、おれの全存在を見透かすように動く。
「……へぇ。バリの波ね。今のあなたのその脚で、ハワイならぬ『這い』上がれると思って誘ってるのかしらね、彼は」
彼女は鼻で笑い、おれにスマホを突き返した。
「返事は自分でしなさい。ただし、もし行くなら、セロリのエサ代一年分を前払いで置いていくこと。いいわね?」
おれは、何も言わずにメッセージを削除した。
バリの太陽よりも、今目の前にある、少し焦げたゴーヤの苦味の方が、おれにはよっぽどリアルだったんだ。
【コメント欄】
匿名サーファーA: 「過去」という波をスルーしたか。お前、少しは「板(心)」の乗り方が分かってきたようだな。
琴音(?): 削除したあとの顔、ちょっと未練たらたらだったわよ。……明日は腹筋五十回追加。過去を振り返る暇がないくらい、自分を追い込みなさい。




