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作ったぜ  作者: 水前寺鯉太郎


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14/20

「深夜の審判、あるいはセロリの静寂」

投稿者:みつる 2026年5月10日

 作ったぜ。

 ……いや、もはや何も作れん。今夜おれが作ったのは、リビングに流れる「氷点下の空気」だけだ。

 銀座での地獄のエンカウントから数時間。家路につくまでの間、琴音は一言も発しなかった。その沈黙は、どんな怒声よりもおれの広背筋を冷やした。

 帰宅した瞬間、リビングのソファに深く腰掛けた琴音が、おれに冷たい指先を向けた。

「座れば? その、生まれたての小鹿みたいな脚で立ってるのも疲れるでしょうし」

 審判の時間が始まった。

 おれは必死に脳内の「言い訳カタログ」をめくるが、どのページも元カレの小麦色の肌に上書きされて白紙だ。バイだということ。昔、男と付き合っていたこと。それを隠して彼女の「ヒモ」という安全な港に停泊していたこと。

「ニャー」

 その時、セロリがおれの足元にすり寄ってきた。

 あいつだけは、おれの過去がどうだろうと、脚が細かろうと関係ないらしい。おれは震える手でセロリを抱き上げた。毛玉の温もりだけがおれの最後の防波堤だ。

「……あの、琴音。あれは本当に、ただの……」

「みつる。私が怒ってるのは、あなたの過去じゃないわ。私を『騙せる』と思った、その浅はかな上半身プライドに腹が立ってるの」

 セロリが喉を鳴らす。

 おれは、抱き上げた猫の重みで、ようやく自分が「現実」という地面に立たされていることを知った。今夜、おれの嘘はすべて、セロリの毛の中に吸い込まれて消えていった。


【コメント欄】

匿名サーファーA: 猫を盾にするとは、ヒモの風上にも置けないな。だが、その猫がいなきゃ、お前は今頃ベランダ放流だ。

琴音(?): 全部話しなさい。一文字隠すごとに、明日のスクワットは十回ずつ増えるから。セロリ、あなたはこっちに来なさい。汚い嘘つきに触っちゃダメ。

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