秘密のクローゼットと、偽りの休日
投稿者:みつる 2026年5月7日
作ったぜ。
今日は、琴音との久しぶりのデートだ。
先日の「足トレ」の後遺症で、歩くたびに大腿四頭筋が悲鳴を上げているが、そんな泣き言をおれの上半身が許さない。おれはあくまで颯爽と、彼女の隣を歩く「理想のパートナー」を演じきってみせる。
ふとした瞬間、先日再会した「彼」の、あの小麦色の肌が脳裏をよぎる。
……琴音はおれがバイだということを知らない。
いや、知らなくていいんだ。この世には、わざわざ光の下に晒さなくても良いことだってある。おれの過去も、おれの揺らぐ心も、すべてはこの厚い大胸筋の奥底にパッキングして、鍵をかけておけばいい。
「ねえ、何ぼーっとしてるの? 行くわよ」
琴音の鋭い声に、おれは我に返った。
「ああ、悪い。次の波のことでも考えてたんだ」
嘘だ。おれが考えているのは、この平穏な寄生生活をいかに長引かせるか、ただそれだけだ。
まぁいい。今は、この「完璧なカップル」という体裁を楽しむとしよう。琴音の差し出す腕に、おれはパンプアップさせた二頭筋を添え、震える脚で一歩を踏み出した。
「セロリ、留守番頼んだぜ。おれは今、人生で一番高い波に乗ってる最中やからな」
【コメント欄】
匿名サーファーA: 「秘密」を抱えて波に乗ると、バランス崩して一気に沈むぞ。お前のその「板(嘘)」、もうヒビが入ってんじゃないか?
琴音(?): 今日のあなた、妙に口数が少ないわね。……隠し事がある時の顔、鏡で見てみたら? あと、その震える脚でエスコートするなら、途中で膝カックンしてあげようか。




