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作ったぜ  作者: 水前寺鯉太郎


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10/20

「再会のバリ、沈黙のママチャリ」

投稿者:みつる 2026年5月3日

 作ったぜ。

 ……いや、今日は正直、何も作れていない。おれのプライドという名の砂の城が、一瞬で波にさらわれただけの一日だった。

 セロリをママチャリのカゴに乗せ、いつものように「神戸の海風」を気取ってペダルを漕いでいた時のことだ。信号待ちで隣に止まったのは、あのバリ帰りの元カレだった。

 相変わらず、太陽に愛されたような小麦色の肌が眩しい。彼は最新モデルのクロスバイクに跨り、引き締まったふくらはぎで軽快に地面を蹴っていた。

「あれ、みつる? ……何それ、猫?」

 彼の視線が、おれのカゴの中に鎮座するセロリに注がれる。

 おれは咄嗟に、パンパンに張った二頭筋でハンドルを強く握りしめた。上半身のバルクだけなら、おれの方が上だ。だが、彼が跨る高価な自転車と、おれが漕ぐ琴音のお下がり……その決定的な「格差」を隠すことはできなかった。

「あ、ああ。……こいつはセロリだ。新しい、その、トレーニングパートナーというか……」

「へぇ。猫をカゴに乗せてママチャリで散歩なんて、相変わらずユニークだね。じゃ、おれはこれからジムだから。またね」

 彼は風のように去っていった。

 その背中を見送りながら、おれは動けなくなった。セロリがカゴの中から「ニャー」と、どこか憐れむような声で鳴く。

 おれの逆三角形は、ママチャリのハンドルを握るためだけの飾りなのか?

 バリの波に乗る男と、カゴに猫を乗せて坂道で立ち往生する男。その差は、鍛え抜かれた「下半身」の有無にあるのだと、突きつけられた気がした。

【コメント欄】

匿名サーファーA: クロスバイク対ママチャリ。勝負は一瞬でついたな。お前の脚、震えてるぞ。

琴音(?): 知り合いに会ったくらいで凹まないで。それより、セロリの毛がカゴに落ちてたから掃除しといて。あと、明日のゴミ出し、忘れたら「下半身トレーニング」追加だから。

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