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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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02 星羅のこだわり


 「おはよー」

 我が家で一番の早起きは星羅だ。

 今日はシックな藍色のナイトウェアを着ていた。腰紐が床の上に垂れている。


 俺はエプロンを外してフックに掛けながら応えた。

 「おはよう」

 「光司は早起きねぇ」

 「歳とるとこんなもんだ」

 「いやいや、そんな歳じゃないでしょ」

 まぁそうなんだけど、日に日に朝起きる時間が早まっているんだ。

 きっとメタルスライムくらいのHPしかないからだろう。


 それはそうと、星羅が早起きしているのにはもう一つ理由がある。

 「じゃあ、今日もコーヒーわたしが淹れてもいい?」

 「いいぞ」

 「やたっ! 光司の味に近づきたいからね」

 「別に普通に淹れてるだけなんだが」

 「その普通が出来ないのよ」

 星羅は片方の頬を膨らませながらそんなことを言う。


 その日の気温とか湿度とか関係してるのかもしれないけど、俺は別にそんなの考慮してないしな。

 星羅はコーヒー豆の入った瓶の並んでいる棚の前でしゃがみこんで、どれを淹れるか選んでいた。


 「んー。何がいいー?」

 「なんでもいいぞ」

 俺も気分で淹れるから、なんとも。

 強いて言うなら、少し酸味のあるやつだろうか。


 そうなると、アフリカの豆になるが、今うちにあるのはタンザニアとウガンダの豆くらいか。

 まぁ、星羅の気分で淹れてくれた方が意外性があっていいかもしれないので、言わないでおく。


 「じゃあ、俺は水やりに行ってくるから」

 「わかったわ。戻ったら飲めるようにしておくわね」

 「ああ」

 朝ごはんの用意も出来ているので、あとはみんなが起きてくるのを待つだけだな。


 庭に出て、ホースを伸ばす。

 ジョウロでは、いったい何往復すればいいのか分からないくらい広い。

 きっと聞いたら教えてくれるだろうが、そんな労力を朝から使いたくない。


 ホースを引っ張ってきたところで、小走りで寧々がやってきた。

 「お、おはようございます」

 「おはよう」

 寧々はシャツとチノパンの格好だ。

 「あ、あたしも手伝います」

 そうは言うが、急いで来たのか、サンダルが互い違いだ。

 それにボタンも掛け違っている。


 「ああ、いいよ。水撒くだけだし」

 「そうですか?」

 「ああ。野菜もまだ成ってないしな」

 「ですね」

 だが、俺の横から離れない寧々。


 「どうした?」

 「いえ、しばらくこのままでいいかなって」

 「そうか」

 「ええ」

 見ていても面白いもんでもないと思うんだけどな。まぁ、本人がいいならいいか。


 「なんか苗増えてないか?」

 「静さんがプチトマトの苗植えてました」

 「そうなんだ」

 「なんでも、フルーツトマトは甘いからって。いろんな種類植えてました」

 「そっか」

 確かに品種によっては果物かって思うくらい甘いけど、それはちゃんと育ててこそだと思うんだ。

 どうせ、俺か寧々が世話するんだろう。

 そこで、もう一箇所。庭の隅に植えられた木が目に入った。


 「そういえば、静が植えた盆栽、やたらと成長早くないか?」

 「確かにもう腰の高さまで伸びましたね」

 「これなんの木なんだ?」

 「あたしのデータベースにはありません」

 寧々でも分からないんならお手上げだな。

 たっぷり水をやると嬉しそうに葉っぱが揺れた気がした。


 反対側の花壇にも水をやって室内へ戻る。

 戻ると、ちょうどコーヒーを淹れ終わったタイミングだったようだ。


 既にユイが起きていて、星羅の淹れたコーヒーを飲んでいた。

 どうやら星羅はユイに意見を聞いていたらしい。

 確かにユイは俺の淹れたコーヒーをよく飲んでいるけど……。


 「どう?」

 「うん。いいんじゃないかな。でもこの豆だともう少し甘みとコクが出せるよ」

 「そっか」

 「もう少し挽き方変えてみたら?」

 結構ちゃんと評価するんだなと驚いた。


 「そうするわ。……あ、光司コーヒー淹れたわよ」

 「あ、おはよー。星羅すっごく上手になったよ」

 「ああ。いただくよ」

 一口飲む。うん、うまい。


 「これは……、東ティモールの豆か?」

 「あら、正解よ。よく分かったわね」

 まぁ、今現在うちに置いてあるコーヒー豆は、タンザニア、ウガンダ、イエメン、東ティモール、ペルー、エルサルバドルの豆だからな。

 まぁ、どっちか迷ったが正解して良かった。

 星羅も当てられて嬉しそうだ。


 「わたしの淹れ方が良かったのね」

 「ふふっ。まぁ、そうだな」

 「むー」「むぅ」

 朝からユイと寧々は不機嫌な顔をする。

 いいじゃないか、たまには褒めても。


 しかし、こう毎朝コーヒーを淹れるとなると、パン食の方がいいのだろうか?

 「もし、希望があったらパンとかも用意するけど」

 「あー、たまにはいいわね。焼きたてのクロワッサンとか」

 「この前のお茶会で出したスコーンもいいですね」

 「あーし、ホットドッグがいい。からしたっぷりで」

 「わたくしは、サンドイッチを所望します。ハムレタス、たまご、ツナ、コロッケにメンチ……」

 しれっと起きてきた静が指折り数えている。


 「あ、あーしポテトサラダも欲しい」

 「なら、わたしはローストビーフがいいわね」

 「じゃ、じゃあ…あたしはフルーツサンドを……」

 しれっと自分の要求を入れてくる三人。

 サンドイッチの方がめんどくさいんだが。


 「おはようございます光司。いかがでしょう」

 「休みの日なら……」

 嬉しそうに頷いて、椅子に座る静。

 「それならお茶会にした方がいいわね」

 「ドレスは着ないぞ」

 「なんでだし」「どうしてです?」「なんでよ」「ダメです」

 俺は執事でいいよ。


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