01 光司の朝は早い
この家の家主、須永光司の朝は早い。
まだ、鳥が囀っている時間に起きる。
スマホの設定した時間よりも一、二分早い。
その間に着替え、スマホが鳴ると同時に解除する。
リビングへ向かい、テーブルにスマホを置き、顔を洗う。
そして、掛けてあったエプロンをつけて、手を洗い予約で炊いたご飯をお櫃にあける。
ご飯が冷めるのを待って、新たに炊く。
なぜならば、この家に住む四人の少女は、朝からかなり食べるのだ。
なので、冷ましているご飯はお弁当用である。
その間に、おかずを作っていく。
まず、厚焼き玉子。
この家に住む少女の一人、御坂唯が必ず入れて欲しいとお願いするのが、これだ。
白だしと砂糖で味付けをし、隠し味として味醂を少し入れているので、味はほんのり甘く出汁が効いている。ふんわりと仕上げるのに炭酸水を使っている。焼くのに難易度が上がるが、妥協はしない。
それを二つ作る。冷ますために、バットの上には綺麗な焼き色の玉子焼きを乗せる。まだ湯気が上っている。
次に作るのは、喜築寧々と喜築星羅の好みである。肉巻きだ。
もちろんただの肉巻きではない。
見た目と味、栄養バランスを考慮して作られている。
今日のは、アスパラとパプリカ三色を巻いている。
味は甘辛くした醤油味で、ほんの少しとろみがついている。
肉と野菜が巻いてあればいいので、大葉と豚バラだったり、アスパラとベーコンだったりと様々だ。
出来た肉巻きを食べやすいサイズに切り分ける。
うん。断面が美しい。
特に二人は見た目や配置の美しさに拘るからな。及第点は超えただろう。
最後は、人見静の好物であるきんぴらごぼうだ。
まぁ、これはみんな好きなんだけど、静だけやたらこだわりを入れてきた。
お陰で、これだけはそのまま売れるレベルのものに仕上がっている。ごぼう、にんじんの細さによる歯応えと蓮根の薄さ。味の濃さや照り、ゴマの量まで細かく調整させられたからな。
そのせいか、常備できるはずが、当日には無くなってしまうくらいだ。
そして、それぞれがおねだりしてきた内容で作っていく。
最近は、それぞれ違ってもつい、希望通りに作ってあげたくなってしまう。
今日のユイのお弁当はこんな感じだ。
まず、二口くらいで食べ切れるおにぎりを三個。
桜えびと三つ葉の混ぜご飯、高菜と明太子の混ぜご飯、そしてユイの大好きな種を取った梅干しのおにぎり。
おかずは、厚焼き玉子、タコさんウインナー、小さめのちくわの磯辺揚げ、きんぴらごぼう、そして、意外と渋い鳥の照り焼きだ。
横にはプチトマトとブロッコリーとアスパラを添えてある。
次に寧々のお弁当はこんな感じだ。
寧々も小さめのおにぎりを三個。
枝豆と塩昆布の混ぜご飯、大葉入りの鮭の混ぜご飯、プロセスチーズとおかかの混ぜご飯。
おかずは、厚焼き玉子、肉巻き、タコさんウインナー、小さめのちくわの磯辺揚げ、きんぴらごぼう。
もちろんサラダは同じく、プチトマト、ブロッコリー、アスパラだ。
次は星羅のお弁当だが、本当めんどくさいおねだりをしてきた。
『白いご飯じゃ退屈よ。黄金色に輝くお米がいいわ』などと昨晩言い放ったので、サフランライスにしてある。
まぁ、抽出した汁と混ぜれば黄金色になるしな。
そして、おかずも彩り鮮やかにとのことで、厚焼き玉子、肉巻き、エビチリ、ミートボール、きんぴらごぼうとサラダだ。
最後は静のお弁当。
何のこだわりがあるのか、ほぼ毎回のり弁を所望する。なんでも『海苔弁は完全食です』だとか。
ご飯と海苔の間には、おかか、昆布、じゃこ山椒で海苔は二層にしてある。
おかずは、厚焼き玉子、磯辺揚げ一本、きんぴらごぼう、焼き鮭、漬物と地味だが、この漬物寧々お手製である。
静だけがえらく気に入り、許可を得てお弁当に入れている。
最近は作った後に、スマホで写真を残している。
ユイはかわいくカラフルに。
寧々は彩りと栄養を。
星羅はその時の気分で。
静は謎のポリシーがある。
残ったおかずやらをお皿に持って、昨日の残りや漬物なんかを用意して、テーブルに乗せていく。
後はご飯が炊けるのを待つだけだ。
まぁ、残りといってもそんなに残ってないんだがな。
納豆やふりかけを置いてあるんだが、減るスピードが速い。
今まで食べられなかった分を取り戻すかのようにも思える。
別にいくらでも作ってやるのにな。




