番外編26 ポニーテールには見惚れるもの
寧々がもらってきたメロンの入ったダンボール箱をキッチンの隅に持っていく。
その様子を見ていた静を見て違和感に気づいた。
「なぁ静……」
「なんでしょう」
「太ったろ?」
「はい?」
ゴールデンウィークの間、食っちゃ寝していたし、出かける度に買い食いするし、家でもお菓子をずっと食べている。
これで太らないわけがない。
「だよねー。静っち確かにぷよぷよしてきたかも」
「ははは。ユイも確実に太ったぞ?」
「なっ! そ、そんなわけないし!」
いや、確実に太ってる。なんなら二割増しくらいで太ましい。
「そんないうなら、ほらお腹つねっていいよ」
『むにっ!』
「これはなんだ」
「こ、これは……」
顔を赤くしていたが、羞恥というより妙に満足そうだった。なぜか少し口元も緩んでいる。
「唯さんは確かに太りましたね」
「いや、静は明らかに見てわかるレベルで太いぞ」
だからなのか、緩い漢服着てたり、なんなら今日はジャージだ。ここ数日スカートとかジーパンみたいのを履いているのを見た記憶がない。
「確かに動いてないわよね」
星羅がにんまりしながら、服を捲ってお腹を見せていた。
はしたないが、確かに引き締まっている。
なんならもう少しで六つに分かれそうなくらいだ。
「確かに唯さんも静さんもずっとソファから動きませんでしたね」
「寧々さんまで裏切るんですか?」
「裏切ってません」
苦笑いする寧々。寧々は力は弱いが、引き締まっているからな。
やはりフライパンとか鍋とか重いものを持っているからだろうか。
「明日から学校だろ? 制服どうすんだ?」
「ワンピースタイプだから大丈夫です」
「あーし改造しちゃってるから……」
多分ぱっつぱつで着れないんじゃないか?
静とユイは互いに顔……いや、お腹を見て頷いた。
「痩せよう!」
「それしかありませんね」
何かスポーツでもするんだろうか?
「では、寧々さん星羅さん。今日一日光司をお借りしても?」
「まぁ、仕方ないわね。いいわよ」
待て。俺は貸し出し物じゃないんだが……。
結局なし崩し的にジャージに着替えさせられた俺は、タオルとか諸々入ったバッグを持たされて一緒に出かけたのだが……。
てっきりその辺を走るもんだと思っていたが、着いたのは区でやってるスポーツセンターだった。
「コージも太ったよね?」
「少しな。少し」
実際二人に比べれば微々たるもんだ。お腹が少しきついくらいだ。
「で、何をするんだ?」
「これだよー」「これです」
そこはテニスコート半分くらいの広さの部屋だった。
「なんでスカッシュ?」
「だって激しいからすぐ痩せるじゃん」
「ええ。それに楽しいですよ?」
謎なチョイスだな。しかし二人は腕を組んで準備運動している。
そして、ショートパンツと半袖というラフな格好にポニーテールとやる気満々だ。
しかし、そんな動いてすぐ痩せるなんてどこかの元殺し屋かな?
でもそれだと、すぐリバウンドしちゃうぞ?
早速、ユイと静が始めるが、中々どうしていい動きをしているのか。
テニスより激しいんじゃないか?
壁に打ちつけたボールを互いに返していく。
確かにあれは、痩せそうだ。
二人のポニーテールが右に左に揺れるから、そっちを追ってしまう。
「ふぅー。疲れたー」
「いい汗かきましたね」
気のせいか少しスリムになった気がする。
「コージもやろ?」
「わたくしは少し休みますので」
静はベンチに座ると、凄い勢いでストローを啜っていく。台無し。
「そうだな。俺も興味出てきたし」
「っし! じゃー、やろー」
「おー!」
その後は言うまでもないが、年甲斐もなく全力で楽しんでしまった。
最初は、当てるだけで精一杯で、思った方向へ飛ばなかったが、コツを掴むと楽しい。
楽しすぎて、ユイとずっとラリーしてた。
続けて、静とも対戦し、あと少しで勝てるところまでやったが、流石に勝てなかった。
ユイと静が休んでる間、一人で楽しんじゃうくらいにはハマっていた。
それがよくなかった。
「コージ大丈夫?」
「光司大丈夫ですか?」
二人が心配して声をかけるが、片手を軽く上げるので精一杯だ。
「全く無理してー」
「すまん」
明日から会社なのに、これ筋肉痛確定じゃないか。
既に肩とか太ももとか痛いし。
「まぁ、結構やったし、コージも限界だから帰ろっか」
「そうですね。甘いもの買って帰りましょう」
その追加がよくないのだが、俺も少し補給したくなった。
帰り道、テイクアウトしたコーヒーを飲みながら帰る。
二人はいつものクリームてんこ盛りのではなく、カフェオレを頼んでいた。
まぁ、少し思うところがあったんだろう。
「来週の休みにも来ましょうか」
「そーだね。かなりいい運動になるし」
「俺はいいかな」
「なんで?」「どうしてです?」
二人が立ち止まって聞き返す。
「次の休みはゆっくりしたい……」
足をプルプルさせながら、その言葉を言うのがやっとだった。
案の定、翌週もまた無理矢理連れ出された。
今度は五人で行くことになったのだが、折角だからとテニスになった。
もちろん経験の無い俺はサーブでまずつまづいたのだった。




