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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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03 登校しよう


 朝食を終え、ガスの元栓や戸締りを確認して、家を出る。

 既に四人は外に出ていた。

 「じゃあー今日も頑張りますかー」

 「「「おー」」」

 四人がそれぞれ拳を上げてはしゃいでいた。元気だね。


 「ほらー。コージもやろ?」

 「あ、ああ……」

 「じゃあ、もう一回行くわよ。今日も頑張るぞー! おー」

 「「「おー!」」」「お、おー」

 「ノリ悪いわねー」

 「筋肉痛で上がらないんだ」

 「もう仕方ないわね」「仕方ないなー」

 ユイと星羅が俺の腕を引く。

 途中までは一緒なのでそのまま歩く。


 「そういえば、通勤時間って増えました?」

 寧々が伺うように聞く。

 「まぁ、そうだな。でもいい運動になっていいよ」

 最寄駅が変わるくらいには離れたが、今の環境の方が圧倒的にいいから文句はない。

 「じゃあ、頑張れよ」

 「うん」「はい」「もちろんよ」「当然です」

 「はは……」

 すごい自信だな。学校で変なことやってないだろうな?


           *      


 英愛学園。四人が通う学園で、都内有数の名門校である。

 これまでに数多の優秀な人物を輩出してきており、倍率は相当高い。

 そして何より、制服の人気があり、制服目当てで受験する者が多いことでも有名である。

 それ故、女子の比率が少し高めになっている。

 もっとも四人は家から近いというだけの理由で選んだのだが……。


 四人が校門をくぐると、風が変わった。

 誰もが一度は目を向ける。今や四人は、知らぬ者のいない有名人だった。


 前を唯と星羅が談笑しながら歩き、その後ろを静と寧々が優雅に話しながら歩いていた。


 もっとも、彼女達を女神のような扱いとしては見ていないのだが……。


 そして、優雅な登校タイムはいつもここで終わりを告げる。

 昇降口まであと数メートルという距離だが、四人全員で入ったのは最初のうちだけだった。


 「やっと来たぞ!」「今日こそは入部してもらうんだ」「何言ってんだ。うちが先だ」「ふざけんなうちに決まってんだろ」「あ、おい! 抜け駆けすんな」「うるせぇ、先に入れたやつの勝ちだろうが!」

 唯を見つけるなり、部活のユニフォームや道着に身を包んだ屈強な男達が唯めがけて一直線に駆け寄ってきた。

 「にゃああっ! もう、しつこいっ!」

 男達を見るなり、唯は一目散に逃げ出した。

 誰も唯には追いつけない。


 「相変わらず唯はモテるわねぇ……」

 他人事のように星羅は呟くが、星羅も他人事ではない。

 「お姉様ぁ……」

 星羅の笑顔が凍る。

 声のする方へ振り向くと、何人もの女子生徒が女神に祈るようなポーズで、艶っぽい目で星羅を見ていた。

 「「「「「「「「お姉様……」」」」」」」」

 「ご……ごきげんよっ!」

 言い終わる前に唯の駆け出した方と逆の方向へ走り出していった。

 女子生徒達はさっきまでと違い、ターミネーターのようなフォームで星羅を追いかけていった。


 「朝から賑やかですね……」

 「毎日これでは大変ですねぇ」

 寧々は笑みを湛えたまま、顔を引きつらせていた。

 そして、静は頬に手を当て嘆息していた。


 「静様……」

 静の背後にスッと現れたのは、スーツを着た男性だった。

 その人物は経営に関わる学校の関係者だった。

 その手には、タブレットを抱えていた。

 どこから出したのか、メガネをかける静。

 「今日はどういった事案で?」

 「実は……」

 微動だにしない静の前にササっと動き、タブレットを見えるように差し出す。

 「五分でいいかしら?」

 「もちろんです」

 そう言って静は男性とともに、管理棟の方へと歩いていった。

 その後ろからスーツを着た人物が、どこからともなく何人も現れ、参勤交代のようにぞろぞろと列をなして歩いていった。


 そんな様子を呆然と眺める寧々。

 そして、その場に一人残された寧々は視線に気づくが遅かった。

 「はっ……! はっ……!」

 気がつけば周りを囲まれていた。

 ジリジリとにじり寄る生徒達。

 「寧々さんっ! 今日こそうちに入ってくださいっ!」「お願いしますっ!」「貴女しかいないんですっ!」

 その中の一人が頭を下げると、他の生徒も一斉に頭を下げた。

 「うう……」

 頼まれると弱い寧々でさえ躊躇うのは、未だやったことのないものへの恐怖感と光司との時間が減ることへの恐れだった。

 生徒達はそのままのポーズのまま、寧々の退路を断つように近づいてくるが、既に寧々はいなかった。

 垂直に飛び、木々の枝から枝へと飛び抜け校舎へと去っていったのだった。


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