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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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04 雷に撃たれた日


 唯は走りながら、思い出していた。


 それは、入学して早々に起こった。

 各部活動が新入生の勧誘活動を行なっていた放課後。

 唯は特に入る予定はないものの、どんなものがあるのか気になって歩いていた。


 そんな中で、名門校であるはずなのに、世紀末覇者のような筋骨隆々な者達に囲まれている女子生徒を見かけた。

 女子生徒は同じクラスの生徒で、長めの髪の毛を無造作に首元で縛っている子だった。


 「いや……興味ないので……ごめんなさい……」

 俯いてはいないが、困った様子をしていた。


 「そんなこと言わずに、うちの部活は最高だよお」

 「そうそう。こっちはみんなで仲良く活動してるんだ。おいでよ」

 「おい。先に話しかけたのはこっちだぞ」

 「うるせぇ。俺らの方が強いんだぞ」

 「知るかボケェ!」


 その女子生徒を巡って複数の部員が争っていた。

 しかも囲まれているため、逃げ出すことができないようだ。

 そんな場所へ臆することなく唯が声をかけた。


 「ちょっと、やめるし!」

 「ああ! なんだぁ! ……って首席のギャルじゃん」

 「本当だ。もしかして入ってくれるのか?」

 「キミなら大歓迎だ。さ、さ」

 「いや、入らないし」


 唯は困っている女子生徒の手を掴み、自分の方へ引き寄せた。

 だが、一人だけ反対側の手首を掴んだまま離さない。

 「……いたっ……」

 唯はすぐに手を離してしまう。

 「あ、ごめん」


 だが、部員は勝ったと思ってニタニタしていた。

 「じゃあ、うちの入ろうな」

 「じゃあ、首席はうちでもらうな」

 「おい、勝手に決めんな」

 ここで虎の尾を踏んでしまったようだ。


 唯の肩に触れた瞬間、部員の一人が宙に浮いた。

 そして、誰かが気がつく前に、地面に落ちた。

 そこにいた全員が何が起こったのか理解ができなかった。


 誰かが瞬きをした頃には、一人が宙を舞っていた。

 次に視線を向けた時には、また一人。

 気づけば、地面に倒れている人数だけが増えていた。


 「え、何?」「何が起こって……」「おい、大丈夫か!」

 「うぉおっ!」

 そして女子生徒の手首を掴んでいた男も地面とキスをしていた。


 男達が狼狽えている間に女子生徒の手を掴んだ唯。

 「ほら、行くっしょ」

 「う、うん!」


 だが、男達も呆気にとられていたわけではない。

 すぐさま協力して、周りを取り囲んだ。

 地面に倒れていた何人かも、痛むところを抑えながら立ち上がっていた。


 「しつこいと嫌われるよー?」

 「俺たちはただお願いしてるだけだぞ?」

 「そうそう。部活に入って仲良くしたいだけなんだよ」

 「あわよくば付き合いたいなんて微塵も思ってないぞ。……ほ、本当だぞ!」

 軽い下心を見せる男達。


 そして、互いに顔を見て、ハッとした後に、本来の目的を思い出したのか、ジリジリとにじり寄る。


 女子生徒が諦めたように一歩前に出したところで、唯が静止した。

 「いってもダメなら仕方ないっしょ」

 「え?」

 女子生徒が疑問の声をあげたと同時に唯は動き出した。


 そして目で追うことすら叶わなかった。

 気づけば視界の端で影だけが走り、次の瞬間には男達が次々と地面に沈んでいた。

 気がつけば、地面に呻きながら倒れている。

 三十人近くいた男達は全員地面に倒れ伏していた。


 「……すごい……」

 「ほら、いくっしょ、愛ちゃん!」

 この時、唯と同じクラスメイトの松本愛は胸を雷に貫かれたような気がした。


 窮地を助けてくれたからだろうか。

 それとも、入学して日が浅いのに、名前を覚えていてくれたからだろうか?

 そして、下の名前で呼んでくれたからだろうか。

 答えは分からなかったが、自然と唯の手を強く握り返していた。


 「ん」

 その微笑みはとても慈愛に満ちていて、ギャルとは全くの正反対の微笑みだった。

 そして、誰よりも強い唯にとても興味を惹かれたのだった。


 だが、それが原因で今日に至るまで、唯は男子生徒達に追われることになったのだ。

 もちろん、部活に入って戦力になってもらいたい。

 マネージャーになってもらいたいなど、理由は様々だが、彼らの真の目的はそこではなかった。


 彼らの内に眠る性癖を呼び覚ましてしまったのだろう。

 もう一度、叩いてもらいたい。投げ飛ばしてもらいたい。なんなら踏んで罵ってもらいたいと、変なスイッチを押してしまったのだ。


 もちろん唯もそんなことをするつもりはなく、最初のうちは言葉で拒否を示していた。

 だが、言葉で言っても、熱い眼差しで迫ってくるのだ。

 やがて唯も、彼ら彼女らを見かけると、一目散に逃げるようになった。


 もちろん、彼らにもルールがあるらしい。

 教室の中までは入ってこないようで、それは朝にのみ行われた。

 ある意味で朝練として活用しているのかもしれないが、それは唯にも、彼らにも分からなかった。

 

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