05 気づけば隣にいた人達
「お、おはよー……」
本来なら別々のクラスになるところ、謎の力により、四人とも同じクラスになっていた。
最初に教室へ入ったのは唯だった。
今日はいつも以上に時間がかかった。
唯のいく先々に待ち構えており、その都度ジャンプしたり、壁を蹴ったりしながら逃げたのだ。
ついた頃には、流石の唯も肩で息をしていた。
入り口のドアに肩肘をついて、もう片方の腕をなんとか持ち上げて挨拶をした。
「おはよー」「おはよう」と、クラスメイト達も挨拶を返した。
続く言葉は「おつかれー」「今日も大変だねー」「ハードモードすぎひん?」など労うものばかりだった。
「ふぅー」
唯が席に着き、逃げてる途中に自販機で購入した紙パックのスポーツドリンクに勢いよくストローを挿して、箱が潰れる勢いで啜った。
「もうー、いい加減どっかの部活に入ったらー?」
そう言って唯の机の前に立ったのは友人の一人である栗栖ティノだった。尚、漢字表記では帝乃と書くらしい。
唯程ではないが、改造した制服を着ていた。
栗色の長めの髪の毛をツインテールにしている。胸元までの長さがあり、結び目にはピンクのリボンをつけていた。
「だって、興味ないし……」
「でもそれだとずっと追われるでしょー?」
「だってー……」
そこで言いよどんでしまった。
なぜなら、早く帰りたいからであるのだが、光司の帰宅時間までは結構あるので、確かにそれまでに帰れる部活なら入ってもいいと思い始めていた。
だが、それを素直に言うには少し遅すぎた。
なぜならば……。
「おはよー、唯」
友人の一人、松本愛が唯の横の席に座る。
愛は唯と逆側のサイドポニーの髪型で、水色に染めていた。
静曰く、『素晴らしい髪色に染めましたね』と絶賛していたが、唯と対になる色を選んだのだった。
そう。少し地味だった愛はあの日以降、高校デビューを遂げてしまったのだ。唯をきっかけに。
そして、実際愛は運動神経抜群で、いろんな運動部から勧誘を受けていたのだ。
実家は武道の家であり、本当は一人でも抜け出せたのだ。
だが、颯爽と現れた王子様?(♀)にトキメキ、運動部には入らず、現状帰宅部となっている。
自分の行動で人の人生を変えてしまったことにより、躊躇しているのである。
もちろん、それが一人だけならば、の話なのだが……。
「そ、そういえば他のみんなは?」
「まだ来ていないわね」
そんな話をしていたら、三人揃って入ってきた。
「おはよー」「おはよう…です」「おはようございますわぁ」
明るい金髪のショートボブの藤原陽菜。
黒髪ロングストレートのおっとり癒し系白峰美羽。
紫がかったロングウェーブのお嬢様、九条麗華。
なんとなくだが、唯達四人に似ている気がした。
そう。愛だけではなかった。
気づけば、自分の周りには少しずつ変わっていった人達がいた。
そして唯は、薄々気づき始めていた。
自分の行動が、誰かの人生を大きく変えてしまっていたことに。
陽菜は、たまたま区のスポーツセンターでスカッシュをしていた唯を見かけて声をかけたのが始まりだ。
この学園にはスカッシュ部はないのだが、テニス部はあった。
そこで、唯のかっこよさに惚れてそのままの勢いで、未経験にも関わらずテニス部に入ってしまった。
今はたまに唯から教わり、先日の練習試合では一人だけ負けなしだった。
元々野暮ったい髪型をしていたが、入部にあたり、髪の毛を切り、金髪に染めてしまったのだ。
唯に倣って明るい金髪に染めた。角度によっては淡く桃色にも見える、ピンクプラチナだった。
校則が緩いため、問題は無いのだが、それまでの彼女を知ってるものは皆が驚いていた。
そんな彼女は、テニス部に唯を誘っていたりする。
「唯ー、テニス部に入れば解決するよー」
「いやぁ、いいかなー」
「じゃあ、走ろう」
「いや、走ってきたばっかだし……」
「そっかー」
「困ってる唯ちゃんもかわいいね」
「あっ、美羽っちおはよー」
「うん! おはよう」
陽菜の横で口元に手を当てて、クスクスと笑うのは白峰美羽だ。
黒髪ロングストレートで唯とは真逆の人物だ。
だが、柔らかい雰囲気であり、みんなのマスコット的存在であるが、それは唯こそ当てはまると考えている。
なぜならスマホの待受は唯であるからだ。そんな彼女も唯に助けられていたりするのだが……。
それ故に、黒髪の前髪には淡くピンクのメッシュが入っていた。
「そんなに困らせてはいけませんよ」
「麗華ちゃんは今日もお嬢様だねー」
「ふふ。唯様に比べたらワタクシなんて、とてもとても……」
最後の一人、九条麗華は、完全にお嬢様である。
美羽の横に立ち、扇子で口元を隠している。
隠している理由は、口元をモニョモニョとさせる癖を隠すためだが、みんな知っている。
そんな麗華は、縦ロールのいかにもなお嬢様であるが、少し紫が入った黒髪をしている。
当初は唯を、「下品なギャル」だなと思っていた彼女だが、まさか自分の家の筆頭株主だと知ったのは、入学してからだった。
今では家業は立て直され、その独自技術によって世界でもトップクラスの企業へと成長していた。
現在では、そんなことをひけらかすことなく、誰にでも分け隔てなく明るい唯に惹かれて、いつもそばにいるツンデレさんだ。
気づけば、唯の周りにはそんな人達が集まっていた。
見た目も行動も派手。けれど、どこか似た者同士の五人だった。




