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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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06 女王様は今日も配下を増やしていく


 続いて教室に入ってきたのは星羅だ。

 額には汗を浮かべていた。

 優雅を装おうとしているが、髪留めはずれており、髪の毛は少し乱れていた。

 そして何より、呼吸が荒かった。


 「おはよう……」

 「おはよー」「おはよう」「おはよー星羅ー」「女王様のご登城ね」

 星羅が挨拶をすると、クラスメイトから挨拶が返ってきた。

 誰もあえて突っ込まないのは、きっと優しさからだろう。


 「唯は逃げ切れたのね」

 「まぁねー。たはは……」

 唯と拳を軽く打ち合わせてはにかむ。

 唯の友人達とも二、三言葉を交わしてから、自分の席へ行く。

 「おはよう」

 「おはよう。星羅も大変ね」

 「そうでもないわよー」

 「さっすが1組の王女様は違うわねー」

 「ふふん。そうでしょー」

 満更でもない表情で優雅に席へ歩いていく。


 席に座った星羅は、バッグからお茶の入ったペットボトルを取り出し、豪快な勢いで喉へ流し込んだ。

 そんな様子を教室の入り口でうっとりした表情で見つめる女子生徒達。

 唯と違って、逃げ道はなさそうだ。


 そんな女子生徒達を見て、リップサービスとばかりにウインクする星羅。

 悲鳴と鼻血を上げて気絶する女子生徒達。

 近くの生徒が抱えて自分のクラスへと戻っていった。

 毎朝のことではあるのだが、頬杖をついて思い出していた。


 それは、入学した翌日。

 どんな学校であれ、闇はある。

 その一つとして、校内の木々や施設を見て回っていた星羅は、人気のない校舎裏で行われていたいじめを目撃してしまった。

 普通なら見て見ぬ振りや、教師を呼んでくるであろうところ、星羅は一直線にその場へ向かった。

 だが、星羅が声をかけるまで誰も気が付かなかった。


 「無様ね」

 「あら、分かる?」

 「クスクス。あなた見ず知らずの人にまで言われるなんてよっぽどね」

 「かわいそー」

 女子生徒三人が、仲間を得たとばかりに厭な笑い方をする。

 いつからいたのか疑問には思っていたが、同意を得た快感の方が優っていた。


 「うっ……ううっ……」

 いじめられていた側の生徒はうずくまったまま、嗚咽を漏らしていた。

 そんな様子を表情を変えずに眺めている星羅。


 「何を勘違いしているの? 無様なのはあなた達の方よ」

 「はぁ?」「何ですって?」「ああ?」

 「分からなかった? こんなことしてるようじゃ底が知れるわよ?」


 だが、ただ煽るだけの星羅ではない。

 正論をただ流すだけでは、何の解決にならないことを知っていた。

 だから、星羅は別の角度から、自分の正論を、天気の話でもするように話した。


 「そんなかわいい顔してるのに、そんなつまらないことしてる様では、自分の価値まで下げてしまうわよ子猫ちゃん?」

 真ん中の一人の顎をクイッと持ち上げて顔を近づけた。

 そして、両サイドに立つ二人の目をしっかりと見据える。


 「こんなつまらないことはやめなさいな。もっと面白いことをわたしが教えてあげるわ」

 三人とも、うっとりとした顔をしていた。

 まるで、魔法でも掛けられたかのように。

 「「「……はい……」」」

 「そこのあなたもよ。もっと志を高く持ちなさい。出来ないのなら、わたしが教えてあげるわ。どう? 興味ないかしら?」

 しゃがんで、その生徒の両頬を掴んで、真正面から見据えた。


 「おねえ……さま……」

 「ええ。好きに呼ぶといいわ。……ふふ。綺麗な瞳をしてるじゃない。もっと誇りなさいな。折角のいい顔が台無しよ」

 「は、はい……」


 それ以来、歯の浮くような台詞を並べながら、校内ではびこるいじめやら不登校などの問題に次々に足を突っ込んでいった。

 星羅としては、自分の知らないところで行われる悪事や問題を黙って見過ごすことができなかったのだ。

 咎めるでもなく、責めたてるでもない。ただ、心に刺さったトゲを抜いていったのだ。


 ただ、そのやり方が少しばかりキザだったのだ。

 いつしか、星羅を『お姉様』と呼び慕い、追いかけるようになったのだった。

 それはまるで宗教のようで。

 いつしか、それは星羅でも予想できないほどの人数に増えていた。

 人が人を呼び、ファンクラブまで結成された。


 ただ、星羅は逃げるだけではなかった。

 ちゃんと、場所を選んで、一人一人声を掛け、丁寧にケアしていたのだ。

 もっとも、ついてくるのを止めるのは憚られたのだが……。

 そして、毎朝そんなことをするものだから、星羅のキャパシティを超えているのが現状だ。


 いつまでもこうしているわけにはいかない。

そう思いながらも、今はお茶を飲んで現実逃避するしかなかった。


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