表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/141

07 女王様にも秘密はある


 「ごきげんよう、王女様ー」

 軽口で挨拶して、星羅の横の椅子に座ったのは、星羅と同じようなレースの装飾のついた黒いサイハイソックスを履いた金髪の少女、海道・メリー・エレナが座っていた。漢字表記は江麗奈と書くらしい。

 フランス人形かと言われるくらい整った顔をしており、クラス内では二大王女様……いや女王様と呼ばれていた。


 「今日も威厳に満ちているわね」

 「エレナだって、今日も素敵よ。誰かを呪い殺せそう」

 「ふふっ。褒め言葉として受け取っておくわ」

 エレナは星羅の人となりに寄せられたのか、服装も少し扇情的になっていた。

 髪の毛は金髪だが、星羅と同じようにハーフアップにしていた。

 猫がじゃれ合うように小言に毒を仕込んで他愛のない会話をしていた。


 「なーにバカなやりとりしてんのよ」

 「そうだよ。ただでさえ目立つんだからー」

 「いいじゃない。わたしは目立つのが仕事みたいな?」

 「なんで疑問形なのよ……はぁ」


 そう言って近づいてきたのは、クラスの学級委員長である小此木冴と、エレナと同じ塾に通っていた宇慶操だ。

 冴はため息を吐きながらやってきて、操は苦笑いを浮かべていた。

 冴の細いフレームのメガネがキラリと光り、黒いボブカットがかすかに揺れた。

 操はエレナを軽く小突くと、青混じりの黒く長い髪とアホ毛が、みょんと揺れた。


 星羅がどんだけ貴族令嬢のようなオーラを放っても、虫を払うかのように接するのが冴だ。

 事務的に接するが、星羅のまっすぐな性格に親しみを覚えている。

 そして、星羅のファンクラブに入っていることは本人には内緒だ。

 尚、会員番号はギリギリ一桁の『09』であり、副会長をしている。


 対する操は、エレナとの接点だけで話し始めたのだが、その知識の豊富さや、見た目と違って素が出るところに惹かれていた。

 それはエレナと同じで完璧を装っているのに、すぐにボロがでるところがたまらなく愛おしいのだ。


 「ため息ついてると幸せが逃げるわよ」

 「誰のせいだと思って……」

 「ほらほら、そこまでにするっしょ」

 「おはよう、蓮」

 「おはよう女王様」

 「もう蓮までー」

 冴を止めたのは茶髪でショートカットの千石蓮だった。

 唯と同じくギャル気質で冴とは真逆の人物であるが、なぜか星羅といると波長が合うらしい。

 それはきっと、唯の扱いに慣れているからだろう。

 そして野生的なところに星羅が惹かれているのもあるのだろう。


 「でも、毎朝あんなのやってたら疲れない?」

 「まぁ……」

 痛いところを疲れたという顔をする星羅。

 実際、毎朝これをやるのは、かなりしんどい。

 自分で蒔いた種とはいえ、気がつけば当初の十倍にまで膨れていた。

 そして、どうにかしないといけないと考えてはいるが、現時点では答えに辿り着いてはいない。

 ピースが足りないのだ。


 「ねぇ、どうせならさー、演劇部とか入ったらいいんじゃないの?」

 「わたし、悪役令嬢しかやりたくないんだけど」

 「なんなのよそのこだわりは……」

 冴がこめかみを押さえながら言う。

 「あっ、分かるー」

 「でしょー」

 エレナと指差しながら盛り上がる。


 「何でそんな悪役令嬢に執着するの?」

 操が疑問を口にする。

 「だって、ねぇ」

 「うん。当然のことだし」

 「「「?」」」

 冴、操、蓮が一斉に首を傾げた。


 「悪役令嬢は素敵なドレス着れるし」

 「なによそれ!」

 「でも、星羅っぽいわね」

 「もしかしてエレナも?」

 「もちろん」

 確かに星羅もエレナもドレスが似合うなと思う三人。


 「でも、ヒロインとかでもいいんじゃないの?」

 「悪役令嬢が着る豪奢なドレスが好きなの」

 「分かってないわねー」

 「ねー」

 星羅とエレナが互いに見やって体を斜めにした。

 

 「でも、そうね……演劇部。悪くはないわね」

 「そうねー」

 少し前向きになったことに意外に思う三人。

 「じゃあ、それで解決?」

 「……え?」

 蓮の問いに一瞬だけ星羅の肩が揺れた。


 「いや、その……演劇部は悪くないと思うわ。でも……そういう話じゃなくて……」

 「?」

 「いや……放課後はもう、結構楽しいっていうか……気にしないで。なんでもないわ。うん」

 「今までの話は何だったのよ……」

 冴がなぜかがっくりとしていた。

 「珍しく星羅が何か考えてるわね」

 「いつもはすぐに答えだすのにねー」

 「きっと、どでかいイベントでも考えてるんじゃない?」

 「美味しいのがいいなー」

 操と蓮は、星羅のことだから、何かすごいことをしてくれるんじゃないかと勝手に期待していた。

 そしてエレナは、そんなことはつゆ知らず、話の続きを再開した。


 「でも、一回やってみたいわね」

 「そうねー。でもやるならアレよね」

 「ええ、アレね」

 「アレって何?」

 操が反射的に尋ねる。


 「「シンデレラよ」」

 星羅とエレナの声がハモった。

 「「「シンデレラ?」」」

 「そう。もちろんわたしは継母ね」

 「じゃあ、ワタシは一番上の姉ね」

 「普通嫌がる役じゃないのよ……」

 冴が憮然と言い放つ。


 「委員長はー……シンデレラだよね」

 「ええ。確定ね」

 「わ、わわわ私がシンデレラ?」

 途端に主役を振られて慌てふためく。


 「ぴったりよね」

 「うん」

 「そ、そう……」

 嬉しそうにはにかむ冴。


 「で、操が二番目の姉で、蓮が王子様よね」

 「ボクが王子。いいね!」

 蓮が嬉しそうに微笑んだ。


 「消去法で余ったのがシンデレラだもんね」

 「ちょっと待ちなさい。え、何? 余ったのがシンデレラなの?」

 満更でもない表情が凍りついた。


 「ちょっとー、エレナ、そういうのは黙っておきなさいってー」

 「ごめーん」

 前かがみになって、エレナの膝を叩く星羅。

 二人は可笑しそうに笑う。


 そんな中で操だけが複雑な表情をしていた。

 「ええ……、アタシが二番目の姉かぁ……」

 「でも最近の作品だと、二番目の姉がヒロインなのあるわよね」

 「へぇー」

 それを聞いて、操は少し考える仕草をした。


 「あるある。シンデレラがクソだったりしてねー」

 「待ちなさい。どっちにしろダメじゃないのよ!」

 「まぁまぁ委員長、例えばの話だから」

 「だとしても許せないわ」

 顔を真っ赤にした委員長を星羅がなだめるのに、担任が来るまで時間を要したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ