番外編17 家庭菜園⑤
目が覚めたら、星羅の顔が覗き込んでいた。
「あら、おはよう」
「あ、ああ? これはどういう?」
いつの間にか腰の痛みも引いていたらしい。
起き上がろうとしたら、やんわりと止められた。
「ちょっと、無理しなくていいわよ。安静にしてなさい」
「あ、ああ」
首だけ動かすと、静が正座していた。
「静は反省中よ」
「海より深く反省しております」
本当に反省しているのか怪しいな。
「ユイと寧々は?」
「夕飯の準備してるわよ」
「そうか。で、この状況は?」
「んー。成り行きで?」
なんで疑問形なんだ?
「ところで庭は?」
「終わったわよ。スコップもシャベルも片付けてあるわ」
「そうか」
窓の方を見ると、茜色の空が見えた。
もうそんな時間なのか。
「なぁ」
「なあに?」
「そろそろ起きたいんだが?」
無理しなければ大丈夫だと思うんだ。
「そう? まぁ……いっか(一番占有できたしね)」
「何か言ったか?」
「なんでもないわ」
星羅の手を借りて起き上がる。
うん。特に問題はなさそうだ。
「ねぇ、庭見てみない?」
「見たい。どんな感じになってるのか気になるし」
その時の星羅はすごく優しく嬉しそうな顔をしていた。
「あの……、わたくしもそろそろよろしいでしょうか?」
「そうね。いいんじゃない?」
だが、生まれたての子鹿のようになっている静。
「こ、これは……」
足が痺れたんだな。
キッチンの方からユイと寧々が戻ってきた。
「あ。光司さん大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だ。多分」
「なんで言い切らないし」
「だって、まだ立っただけだしな」
「そうですか……」
「そうだ。あーしと星羅で作った花壇凄いよー」
「わたしと唯の最高傑作よ」
ふふん。といつものドヤ顔で言い切る星羅。
「じゃあ見にいこうか」
「あの、もう少し待ってもらっても」
「しょうがないわね」
両腰に手を当てて嘆息する星羅だった。
静が回復するのを待って、庭に出る。
「ほら、早く早く」
「ほらほらー」
ユイが俺の手を引き、星羅が俺の背中を押す。
「そんなに焦らなくても逃げないって」
「でももう暗くなるしー。あ、でも暗くても綺麗かも」
「そうね。夜でも楽しめるようにしたわ」
それはそれで楽しみだ。
ここからでも少し見えるが、グラデーションが凄い。
角を曲がると、息を飲むくらい美しかった。
今まで土しかなかった西側の庭が、どこかの有名なフラワーガーデンかってくらい綺麗に彩られている。
あの苦労して運んだレンガや砂利で小道ができており、壁側も段々になっている。
そして、あの苦労して掘り起こした綺麗な石も使われている。
大きなやつは、元からそうなるために存在していたかのようだ。
上手いことレイアウトしてある。
石と花が上手いこと調和している。
流石はうちのセンス組だなと思った。
俺だったら、あの量の花でこんなに綺麗な庭は作れなかっただろう。
「どう?」「どうよ?」
「凄い。よくこんな素敵なものを作れたよ。流石だな」
「えへへ」
「もっと褒めなさい」
「すまんな語彙力が足りなくてな。でも、確かに美しい」
「ふふん」「ふふっ」
二人とも満更でもないくらい嬉しそうだ。まぁ、実際プロがやったと言われても信じるだろう。
だが、そこで一箇所空いた空間があるのに気が付いた。
「なぁ、なんであそこ空いてるんだ?」
「後であそこに椅子とテーブルとパラソル置こうと思って」
「そうそう。お茶会出来るよー」
「なるほど。確かにそれはいいかもしれないな」
「でしょう?」
「他にも色々計画してるからね」
「それは楽しみだ」
その時、丁度薄暗くなってきたようだ。
それに合わせて、ガーデンライトが光り出す。
「ほう」
これはまた別の趣があるな。確かに夜でも楽しめるな。
「綺麗……」
「ええ」
寧々と静も息を飲むくらい感動しているようだ。
俺も物を運んだ甲斐があるというものだ。
「これ、上から見ても綺麗なのよ」
「そうなのか?」
「うん。ベランダから見ると、また違って見えるわ」
それも見た方がいいなと思ったところで、誰かの腹の音がなった。
「続きは食べてからにしようか」
「そうね」
「うちは花より団子みたいだね」
「みたいだな」
改めて見返す。本当にお金取れるレベルで凄く綺麗な庭だと思った。
「そういえば、静はグリーンカーテンにするとか言ってたけど、ちゃんと植えたのか?」
「はい。植えましたよ」
静もちゃんとやったみたいだな。
寧々も野菜の苗を植えるので大変だったろうしな。
そういえば、あの盆栽どうしたんだろうか。
「あの盆栽とかどうしたんだ?」
「植えましたよ」
「え、盆栽だろアレ」
「いや、なんか植えてほしそうだったので」
意味がわからないが、多分意味があるのだろう。
そして、その盆栽はいつか大きな木になるのだが、それはまた別のお話。




