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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第二章

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番外編14 家庭菜園②


 翌日も休みでよかった。

 昨晩はマジで踏み踏みされた。

 讃岐うどんかってくらい踏まれた。

 お陰で筋肉痛なのかもみ返しなのか分からないくらいだ。

 ただ踏む時に「ざぁこざぁこ」言うのはやめてほしい。何かに目覚めそうになるから……。


 さて、今日は苗とか土とかを買ってくるのだが……。

 「興味なかったんじゃないのか?」

 「いいじゃない。暇だし」

 「そうそう。結構気になるし」

 「食べられる系の木も必要ですよね?」

 「野菜の苗を買うんですよ?」


 ということで、花や野菜の苗を売っているお店へやってきた。

 近くにあるからそんなにないと思っていたが、意外と広く多くの種類を扱っていた。

 ユイと星羅は何か話しながら花のコーナーへ行った。

 「では、選んでいきましょうか」

 「そうだな」

 そうして野菜の苗のところに行く。


 「ふむ。これは茎が太くしっかりしてますね」

 「これは葉っぱが大きいですね」

 「おや、これは根っこが育っていますね」

 「それはちょっと芽が枯れかけてます。こちらの方がいいでしょう」

 「これは花が咲いてますね。早めの収穫が期待できますが……」


 寧々が苗を選ぶたびに静が一言ずつ評価していく。

 流石の寧々も何か思うところがあったのか、途中で静のほっぺたをぐいっと押して黙らせた。

 まぁ、気持ちは分からんでもないが、全部的確で当たってるんだよな。

 そんな静は、一瞬俺の目を見て何も言わずに奥の方へと歩いていった。


 「いいのか?」

 「いいんです。あたしは光司さんと選びたいので」

 「まぁでも静のは当たってはいるんだが」

 「それでもです」

 まぁ、基本的に手入れするのは寧々だろうし、静は植えておしまいってなりそうな気はしないでもない。

 であれば、寧々が選ぶのが筋かもしれない。


 大玉トマト、中玉トマト、ナス、長ナス、イタリアンナス、ピーマン、パプリカ、ししとうと選んでいく。

 「プチトマトはいいのか?」

 「中玉トマトの脇芽を育てれば自然とプチトマトになりますから」

 「まぁそうだな」


 そして、レタス、ブロッコリー、枝豆とカゴに入れていく。

 「虫とかつきやすいけどいいのか?」

 「そしたら取ってくださいね」

 「え、俺が取るの?」

 「ダメですか?」

 そんなアイドルみたいなおねだりのされ方されたら、頷かざるを得ないな。

 でも俺も羽虫ならともかく、芋虫はなぁ……。


 「前向きに検討するよ」

 「では、後ろ向きにお願いしますね」

 これは逃げられないな。


 「あと、ズッキーニとオクラですね」

 オクラは硬くなりやすいし、ズッキーニは雄花と雌花の咲くタイミングが違うから学校とか会社行ってると受粉のタイミングが難しくてなぁ。

 まぁ、とりあえず、最初だし、いろいろやってみてもいいかもな。

 庭もかなりの広さを耕かしたしな。あれを使わないのは勿体ない。

 でも、大量の虫が発生するんだよなぁ。


 ある程度選んだところで、静が黙ってカゴを持ってきた。

 「それは何が入ってるんだ?」

 「スイカとメロンとイチゴです」

 「イチゴはともかく、スイカとメロンは難しいぞ?」

 「わたくしに不可能はありません」

 胸を張ってそんなことを言うが、多分失敗するぞ。難しいし。

 実がなっても、大きくなる前に枯れるんだ。ウリハムシもつきやすいし。

 「静が育てるんならまぁ……」

 「え?」

 「え?」

 待て、本当に植えておしまいってことはないよな?

 キョトンとした顔してる。まさかな……。


 カートを二台押しながら、ユイと星羅が戻ってきた。

 「すごい量だな」

 「もっと欲しかったんだけど、変わった花が無くてね」

 「そうそう。でも可愛いのいっぱい選んだよ」

 これを沢山植えたら、かなり華やかにはなるだろうな。

 「まぁいいんじゃないか」

 「あと、レンガと砂利…ああ、それとウッドチップも買いたいんだけど」

 「分かった」


 軽く返事したことを後悔した。

 お店で軽トラを借りて載せたんだが、大量のレンガと土を載せたんだが、マジで手伝ってくれないのな。

 しかも重いからか、少し車高が低くなった気がする。

 腰いてぇ……。


 「じゃ、じゃあ家に置いてくから」

 「ねぇ、わたしも乗ってっていい?」

 「あ、ああ」

 もしかして歩いて帰るのが嫌だったんだろうか?

 「では、あたしたちはもう少し見て回りますね」

 「分かった」

 多分戻ったら、追加されてそうだな。

 実際、一回では運びきれないので、もう一回くる必要がある。


 「これマニュアルなのね」

 「俺としてはありがたい」

 「変わってるわね」

 「逆に全部コントロールされるのって嫌じゃないか?」

 「そうね。その通りだわ」

 珍しく、すんなりと肯定してくれたな。


 「でもこうして二人きりで車に乗るのも悪くないわね」

 「そうだな」

 でもなぜか、田舎で農業やってるギャルとおじさんに見えてしまうな。

 多分、今日の星羅の格好のせいだろうな。

 「ねぇ、本当に田舎に引っ越して農家やってみたくない?」

 「うーん。無理だろ」

 どんだけ大変か分かってるしな。天候や災害で成果ナシなんてこともあるし、何より腰が痛い。

 「そっかぁ」

 今日は妙に聞き分けがいい。何か企んでるのだろうか。


 家に着いた。

 「うへぇ……」

 今からこれ降ろすのか……。

 「手伝うわよ」

 「えっ!?」

 俺が苦労して積んだレンガを両手に掴んで持っていった。

 「俺より力あるじゃないか」

 「そりゃあ、ねぇ」

 いつもは大人ぶった笑い方するのに、今日は年相応の笑顔を見せてくれた。


 「ありがとな」

 「いいのよ」

 そっぽを向いたが、耳が朱くなっていた。

 予定よりも早く降ろし終わった。

 「じゃあ、戻っていいわよ。まだあるでしょ」

 「助かるよ。じゃ、頼むな」

 「ん」

 今日の星羅はどうしたんだろうな。


 再びお店に戻る。

 「おい。なんで増えてるんだよ」

 「まぁまぁいいではないですか」

 「静お前か」

 静がいいもの選びましたって顔をして、腕組みしていた。

 「いや、なんかさー、静っちが美味しい実がなるなら買うべきっしょって」

 ユイが困った顔をして言ってるが、ユイも追加しただろう?

 だって、静と同じ顔してるからな。


 「で、何を……」

 増えていたのはパッションフルーツの苗が八個。

 「パッションフルーツって知ってるのか?」

 「知ってますよ。黄色いシロップになる……」

 「あれは加工した後のだろ」

 「知ってますよ」

 静の場合はどこまで本当か分からない。


 「いやさー、グリーンカーテンになるし、実もなるからいいかなーって」

 「そして成ったら、部屋からもぎって食べられるではないですか」

 あ、知らないなこれ。


 「ちゃんと受粉しないと、実が成らないし、めっちゃ酸っぱいぞ。あと、こっちの品種は別の花粉持ってこないと実が成らないからな」

 「え?」「へ?」

 なんだ。二人とも知らなかったのか?


 「えー、じゃあどうする?」

 「でも、買ってしまいましたし」

 「でもソースにして、パンナコッタの上にかけるとうまいんだよな」

 「追加で買いましょう」

 「そうだね」

 「おい!」

 お菓子に合うと言った瞬間にこれだよ。

 

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