番外編14 家庭菜園③
静とユイとアホなことを話していたが、ふと気になるものを見つけた。
「なんだこれ」
「分かりません」
「静が選んだんじゃないのか?」
「そうですね」
それは、卓上に置けるサイズの小さい盆栽だった。
だが、どこを見ても名前は書いてないし、何より見たことのない木だ。
「これ、実が成らないのに買ったんだな」
「ええ。なぜか買わなければいけない気がしまして」
「?」
まぁ、いいか。
ユイもその木を愛おしそうに見ているし、なんの木なんだろうか。
お金でも成るのかな? って、俺は俗っぽいことしか思いつかないな。
「あ、あとマンドラゴラも買ったよー」
ユイが嬉しそうに言うが、そんな危険なもの売ってないし。あれはファンタジーだろう?
ユイが袖を引っ張るので見てみると……。
「これはガジュマルじゃないか」
「え、違うの?」
「違うな。似てるけど」
「そっかー」
俺も最初見たときはそう思ったよ。
気持ちは分かる。かわいいよな。
「そういえば、寧々の姿が見えないが……」
「寧々っちなら、お店の人に栽培方法聞いてたけど。メモ帳持ってたし」
「真面目だなぁ」
「完璧にやりたいのでしょうね」
寧々ならそういうの詳しそうなのにな。間違った知識を入れたくないんだな。
「わたくしに聞けばよいものを」
「でも静、手伝う気ないだろ?」
「……………」
そっぽを向くな、そっぽを。
「お待たせしましたー」
寧々がニコニコしながら戻ってきた。
かなり知識を仕入れられたようだ。
「じゃあ、行ってくるわ」
二回目の荷物も積んだ。支柱がこんなにあると。『足場でも組むんですか?』とか言われそうだ。
「あ、あたしも乗ってってもいいですか?」
「いいぞ」
「じゃあ、あーしと静っちは待ってるから」
「すまんな」
もう、買い足したりはしないだろう。
再び車に乗り込んで発進する。
「なんかこうして軽トラに乗ってると、農家さんの仲良し夫婦みたいですね」
「ははは。確かに」
「ふぇ!?」
真っ赤な顔になる寧々。なんだ? ちゃんと思った通りに返しただけなのに。
それから家に着くまで、一言も会話がなかった。
寧々は俯いて両頬に手を当てたままだ。
何か、答えを間違っただろうか?
家に着くと、農家の姉さんみたいな格好した星羅が出迎えてくれた。
うーん、ミスマッチの妙かな?
さっそく車を止めると、俺が降りる前に荷物を降ろし始めた星羅。
「ど、どうしちゃったんでしょうか」
「さぁな」
ただ、一番乗り気なだけなのかもしれない。
「何、ぼさっとしてんのよ。早く早く!」
「お、おう」
「はわわ。早くしないと怒られちゃいますね」
「かもな」
「ほら、イチャイチャしない。早く!」
マジで農家のお嫁さんって感じがする。
荷物を降ろしていくんだが、意外と寧々はそこまで腕力があるわけじゃないんだな。
星羅が25リットルの土を軽々と抱えていく。
「すごい」
「な」
なかなかどうしてこんなにも似合うのだろうか。女王様より合ってる気がする。
そんな感じで二回目も降ろし終わった。
「じゃあ、戻してくるな」
「ん」
「あたしも先にやっておきますね」
と、言うことでお店に軽トラを返し、ユイと静の三人で歩いて帰るのだが……。
腰が痛い。
「コージ大丈夫?」
「ダメ」
「普通にダメと言うのは珍しいですね」
「いや、ホントに。冗談抜きで」
「しょうがないなー。じゃあ、帰ったらフミフミしてあげるね?」
「頼む」
「これは重症ですね」
「だね。ははは……」
「こういうときは甘いものですね」
「だね」
ユイと静が見つめ合いながら頷く。
もしかして、その為のダシに使われたってことはないよな?
と言うことで、途中にあったカフェでテイクアウトをすることになったのだが……。
「トールアイスキャラメルフラペチーノホワイトモカエクストラホイップウィズチョコレートソース」
なんて?
ユイが早口でよく分からない呪文を一息で詠唱していた。
「では、わたくしは……、グランデ抹茶クリームフラペチーノライトアイスエクストラパウダーエクストラホイップウィズチョコレートソース」
さっきより長い詠唱だ。ドラゴンでも召喚するのか?
「コージは?」「光司は?」
期待に満ち満ちた目で俺を見るな。正直最初のところから分からなかった。
「えーっと、ソイラテのアイスをテイクアウトで……」
「サイズはいかがなさいますか?」
「えっと……二番目ので」
「はいトールですね」
雷神でも呼び出すんか?
横のカウンターで受け取る。
ユイも静も甘そうだな。
お店を出たところで、二本のストローが俺の前に交差した。
「一口あげるっしょ」
「一口だけ許可しましょう」
「いや、いいよ」
「えー」
「わたくしの施しがいらないと」
「じゃあもらうよ」
「ん」
ユイのを先に飲む。甘い。
だが、疲れた体には丁度いいかな。でもこんなにはいいや。
「では」
鼻に刺さりそうな角度で差し出してきた。
とりあえず、黙って飲む。
うん。これも美味い。甘すぎてまだ働けそうな気がしてきた。
「コージ」
「どうした?」
「一口ちょーだい」
「ほら」
「ん」
なんで一口飲むだけでそんな顔を朱らめる必要があるんだよ。
ユイを見ながら飲む。
「こ、光司、わたくしも……」
「え、あ、ああ……そうだな。ほら」
「ありがとうございます」
ズズズズーとかなりの量を飲む静。流石期待を裏切らない。
「ちょ、おま!」
「もうー、静っちそういうののダメだってー」
そう言いながら、俺の口元にユイのフラペチーノを差し出すユイ。
困った顔の中に嬉しさが滲んでる気がする。
「あ、ああ。ありがと」
「どーいたしましてっ!」
嬉しそうにはにかむユイ。
でも正直、ソイラテもっと飲みたかったな。
ちなみに、静は俺のソイラテを飲んだ後は差し出したりはしなかった。




