番外編10 いちご狩りに行こう⑧
守谷SAを超えたあたりで静と星羅が起きた。
「はっ!」
「やば、寝てた……」
「まだ寝てていいんだぞー」
後は帰るだけだからな。
「あ……ここは……」
「利根川渡った辺りかな」
「ということは、守谷サービスエリアを超えてしまったと」
「あー、そうだな」
なんか嫌な予感がする。
「なんで寄らなかったのです?」
「そうよ。道の駅とサービスエリアとかあったら止まるのは常識じゃない」
「そんな常識はない」
「というか、なんで唯は言わなかったのよ」
「いや、早く帰らないとなーって」
「磯揚げ……焼き鳥……守犬焼……」
静が寝言のようなうわ言をつぶやいている。
「しょうがないだろ? というか今日いっぱい買ったじゃないか」
「でも、でも……」
「分かった分かった。次は必ず寄るから」
「絶対よ」「絶対ですよ」
「分かったって」
そうだな。寄るとしたら、次回ひたちなかでネモフィラでも見た帰りとかだろうか。
そんな感じで次の予定を漠然と考える。
「そういえば、そこの前に道の駅常総もありましたよね」
「ああ、寝てたから」
「起こしなさいよ」
「いや、ぐっすり寝てたから」
「それでもよ。というかメロンのソフトクリーム食べたかったわ」
「もう終わってたよ」
「え、待って。なんで唯は知ってるのよ」
「や、あーしとコージの二人で見てまわ……あ……」
ユイが気まずそうに俺をチラッと見る。
「唯さん。ちょっとお話しが」
「そうね。唯、抜け駆けしたのね」
「でもでも、メロンパンとシュークリームとプリン買ったし」
「ならいいわ」
「ええ。今回だけですよ」
まったく何を話しているんだか。
そして、いつの間にか寧々が起きていたようだ。バックミラー越しに見るとジト目でユイをジーっと見ていた。
寝起きで頭がボーっとしているんだろうか?
ユイは視線を彷徨わせながら背筋を伸ばした。
「えっと……コージ」
「なんだ?」
「ナビ続けるね」
「あ、うん」
車内は静まり返ったままだった。
それと比例するように渋滞が酷くなってきた。
だが、ユイの案内通りに走ると、遅いながらも確実に進んでいった。
苦手な板橋ジャンクションも過ぎて、あとは降りるだけだ。
あそこは交差しなくても背筋が冷えるからな。
一旦家に戻り、大量の荷物を下ろす。
「じゃあガソリン入れてからレンタカー返してくるな」
「あたしも行きます」
「いや、すぐだし」
「そうですかー」
なぜか寧々が付いていくと言ったことに対し、三人ともそっぽを向いたままだった。
「まぁ、すぐ戻るよ」
「そ、そうね。うん」
何かあったのだろうか。
寧々の目が据わっていたこと以外は……。
そして、その日はそれぞれが買ったものを出して食べた。
テーブルの上には、各地で買った惣菜やお菓子が並んでいた。
しかし、美味いな。参考になるわ。
その日の夜。
先にお風呂から出てきたユイと寧々が俺の横に座る。
「じゃあ、明日はどこ行く?」
「待て。明日も出かける予定なのか?」
「え、ダメなん?」「ダメなんですか?」
「いやぁ……結構寄ったし、こんなに買ったし」
一日では食べきれない量のお菓子やパンがこんなに残っている。
「まぁ、そうなんですけどね」
ユイと寧々がスマホを見ながら、明日の計画を話し合っている。
「明日は近場でいいんじゃない?」
お風呂上がりの星羅が後ろから声をかけてきたので、振り返る。
「近場ってどこだよ」
「んー。静はなんかいい案ある?」
ノープランなのかよ。
「上野動物園はどうでしょう。光司に何回も妨害されてしまいましたし」
「だってさ」
「妨害してないんだが……」
「いいんじゃないですか?」
「でももっと近くに板橋こども動物園もあるわね」
「ちょっと離れてるけど、井の頭にもあるわね」
「じゃあ、お菓子食べながら決めよっか」
「いいわね」「唯さん。その案、採用です」
「じゃあ、あたしはお茶淹れてきますね」
パタパタと小走りで台所へ向かう寧々。
「この三日間はコージといろんなとこに行く予定だからね」
ユイは俺の腕にしがみついて言う。
「覚悟しなさい光司。目一杯楽しませてあげるわ」
星羅はソファに両腕を預けて言う。
「社会人だってことを忘れるくらいにね。ふふふ」
静は俺の対面で足を組んで言う。
「お茶が入りましたよー。はい光司さん」
寧々がお盆に急須と湯飲みを乗せて戻ってきた。
トポトポと淹れて、俺に手渡してくれる。
「ありがとう」
はぁ……。お茶が疲れた身体に染み渡る。
でも明日も明後日もいろんなところに行くんだろうな。
そう考えたら、不思議と疲れは吹き飛んでいた。
「おっし。じゃあ、どこ行くか決めるか」
「わたくしとしては、触れ合えるところがいいです」
「わたしもモフモフフワフワに触れるところがいいわ」
「あーしもかわいいの多いとこがいいな」
「では、お弁当作って持って行きましょうか」
お菓子やパンを頬張りながら明日のことを計画していった。
それにしても、よく食べるよホント。
それでも、こうしてみんなで食べる時間は悪くない。




